剱岳 早月尾根からのチンネ左稜線


- GPS
- 49:01
- 距離
- 17.4km
- 登り
- 2,860m
- 下り
- 2,863m
コースタイム
- 山行
- 17:00
- 休憩
- 0:54
- 合計
- 17:54
- 山行
- 11:29
- 休憩
- 2:16
- 合計
- 13:45
- 山行
- 2:37
- 休憩
- 0:04
- 合計
- 2:41
過去天気図(気象庁) | 2025年07月の天気図 |
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アクセス |
写真
集めた雪を鍋で溶かし、水の状態になったら、浄水器に通してプラティパスに保存。を3人で繰り返していきました。これが楽しかった。浄水器を通した水は、雑味がなく美味しい。私は、その水にコーヒーを溶かして飲んだのですが美味しくてゴクゴクいってしまいそう。
感想
Ⅰ 鈍足の私が行くチンネプラン
私は、チンネに行きたいを言い続けてどのくらいたったのだろう。
念願の剱岳チンネ左稜線。私は、いつからチンネに行きたいと言い続けているのか。
① 「脱!山がーる」のwebサイト。山を始めたころ、女性でアルパインをやっている人が周囲にいなかったので、この方のブログは私の憧れ。何とかこの方の後を追いかけたいと思っていた。
② 2019.08.19この時は、天候不良によるプラン変更の嵐。直前まで中央アルプスにいくとかなんとか言っていたが、Oさんの行きたいチンネを目指すこととなり、熊の岩まで行き、結局大雨を避けて八ツ峰Ⅵ峰Cフェース剣稜会ルートをヘッデン登攀した。
③ 2020.07.30八ツ峰縦走下半~上半、源次郎尾根…八ツ峰から憧れのチンネの写真を何度も撮った。
④ 2020.9.14リーダーは、宮之浦川から予定変更し、TAKAピロ先生と一緒にチンネに行ってしまった。この時は、今回と同じく早月尾根から本峰越えのルート。
リーダーは、基本、同じルートに二回も行かない。私は、冷蔵庫の横に写真を貼り、行きたかったのに置いていかれたことを、事あるごとに、念仏のように唱えるしかなかった。
時は過ぎて2025年。リーダーは鈍足の私を連れて行く決心をした。「別山尾根から本峰越え」プランもあったが、メンバー再編により「早月尾根から、本峰越え」プランとなった。
馬場島から早月小屋を経て、山頂まで、約13.8km、累積標高2077m。体力勝負となる。どんなに歩いても体力的にリーダーに追いつかない私は、軽量化がネックとなる。
Ⅱ 軽量化
・ ザックは、35リットルザックに入り切らないか何度も試した。詰め込むことはできたのですが、夏の午後は、天気が崩れやすいことが予想され、素早くパッキングできないと致命的なので、結局55リットルザックにした。ザックの背板を抜き、ベルトを外し、今回は食器なしにした。
・ 雪渓トラバースのために、アプローチシューズに軽量アルミアイゼンを装着。今回のためにペツルのガリーを購入。軽量で使いやすかった。それとストックを一本持参した。
飲料は、1リットル持参。早月小屋で水2リットル購入。その他ポカリを2本購入して一本は、その場で飲み干した。
・水作り。これは楽しかった。ビバーク地の近くの雪渓から水作りをすることになったのでバーナー、ガス缶300mlと浄水器を持参。山行を終えてガス缶は、半分ぐらい残っていた。
本番1週間前に早月小屋のFacebookを見て、かなり雪があることを知り、慌ててAmazonで浄水器を購入した。出発1日前に届いた浄水器はなかなか良かった。浄水器を通した水は、雑味がなく美味しかった。
1人用のツェルトを持参。夏場とはいえ、3000m稜線ビバークは、風もあり、寒さが予想される。
・ テントマットは、エアータイプのものを持参。
・ シュラフは持参せずに、レインウェアの上下とダウン上着を着込み、アルミのプロビィビィシートカバーに潜り込むことにした。
・夕食は、アルファ米と砕いた高野豆腐。食物繊維のパウダーを添加しておいた。アルファ米を食べた後に、スープの素をお湯で溶いて飲むと満腹感を得られた。高野豆腐の味は求められないが満腹感には良い。水分を吸って膨らむのでかなり小さく砕いた方が良い。
・朝食は、カロリーメイト。水コーヒー。体を目覚めさせるためには必須だけれど、朝というか夜中にそんなに食べられなかった。ナルゲンボトルの水にコーヒー粉末を溶かし、朝お湯を沸かさなくてもいいようにしておいた。
・行動食には、ショットと言われるジェルを4個、ゼリー飲料を1個。飴も持参したが食べなかった。飲料は、ナルゲンボトルで持ち歩き、アミノ酸パウダーを入れた。
その他に、小分けされたアミノ酸パウダー(プロテイン)を持参。
自宅でザックに装備全てと購入予定分の水2リットルを入れて計量したとき15.5kg。
Ⅲ 馬場島から早月尾根~ビバーク地
10年以上前の記憶は、ほとんど残っていなかった。ザックは、大きいし、急げば咳き込む。先週雷雨の鬼岳から帰宅後、調子が悪く、熱は出なかったけれど何かが体を蝕んでいたのは事実。
標高標識、巨大な立山杉、高山植物のお花たち、雪渓からの涼風、それらに癒されながら鈍足なりに進む。雪解けの池近くで一冬越したサングラスを見つけた。意外と見やすいのでサングラスを忘れたウメさんにあげた。
早月尾根には日本海から上高地まで行く方、トレランの方、外国の方色んな人とお会いした。
何度も何度も待ってもらいながら早月尾根を進み、とりあえず山頂まで行くと、山頂は、賑やかで、剱岳初登頂のウメさんが嬉しそうでした。
ビバーク地は、雪渓が近く、楽しく水作りをしました。水作りの最後早めに夕食。早目に就寝。結構遅い時間に山頂を通過する人がいることに驚いた。
Ⅳ 北方稜線~池ノ谷乗越~池ノ谷ガリー~三の窓~取付まで
ツェルトをたたみ、1:00スタート。ヘッデンで北方稜線を歩く。池ノ谷ガリーを降るころには少し明るくなってきた。
池ノ谷ガリーは、踏み跡を辿るように降っていく。ガレガレのところも踏まれているところは崩れにくいけれど、踏み外すと蟻地獄のように足も手もズルズルとなってしまう。三の窓への上り口には、小さなピンクテープがある。
三の窓のところには、ビバーク中のテントがあり、リーダーを待っていると、テントの中の方が出てこられた。
あとで考えると、富山県の山岳警備隊の方だったかなと思う。私たちにとって関門だったのかもしれない。以前八ツ峰の1.2峰ルンゼについて前日に剱沢小屋の前で情報収集に向かうと、山岳警備隊の方々に、前日の雪渓の様子をiPhoneの写真を見せていただいたり、「何時に出発するのか」ついには「ロープを、持っていますか?」とまで聞かれ、全力で行って欲しくない様子だったことを思い出した。
「どこに行くのか」と聞かれ、「チンネのどこを登るのか」と聞かれ、雪渓が薄いのでアンザイレンした方が良いと言われたものの、止めようがないし、気をつけて行くしかないよなあと思いながらアルミアイゼンを装着する。アイゼンの長い紐をサイドまで巻き付け、ズレることはなかった。途中バックステップで降りなければならないところがあり、ガリーが役にたつ。雪渓から取付の棚に飛びつくように渡った。
Ⅴ チンネ左稜線
地形図にして、A42枚くらいの長いアプローチに対して、チンネ左稜線のルートは、ほんの3センチくらいだろうか。チンネは、取り付いてしまえばこっちのものである。
1ピッチ目…リーダーがヘッデンでとりつく。クラックを上がり、テラスへ。ヘッデン登攀も私たちにとっては珍しくなくなり、続く。
2ピッチ目…ホールド豊富なフェイスを上がる。前半の核心ピッチと書かれているがそんなに難しくなかったと思う。太陽が登り始め、岩が赤く焼けていく。この瞬間がすごく素晴らしいと思う。三の窓の方を振り返ると小窓の王と雪渓が素晴らしい。
3ピッチ目…右からまわり込むように、ピナクルを目指すピッチ。
4ピッチ目…スラブを上がる。出だしがちょっとやりにくかった。
5ピッチ目…てけてけーと歩くところ。向こう側に岩壁がかっこいい。
余裕が出てきたのか6~10ピッチ目をリードで行かせてもらった。
6ピッチ目…ハイマツまじりのフェイス久しぶりのリードで楽しい。不安のないクライミング。どこまでも登りたくなる。終了点を過ぎてしまい、クライムダウンした。
7ピッチ目…フェイス。ここもどんどん登っていく
8ピッチ目…ピナクルが林立するピッチ。ロープが引っかかるのが嫌で、何回もピッチを切ってしまう。
9ピッチ目…核心の鼻と呼ばれるピッチ
リーダーが突然「これは核心の鼻じゃないから、オレが行く」と言い出す。困惑する私。チンネで核心の鼻をやりたいと言い続けてきたのに、「核心の鼻は、もっとぶったっている」と主張するリーダー。真ん中にお助けスリングが下がってるし、どう見ても何度もYouTubeで見た鼻なのに。ウメさんに助けを求めるが「オレは知らん」。リーダーはタカピロ先生と行ったときの写真を出してきた。どうやら初めて見た鼻の印象が強く、2回目だと寝てる…と思ったらしい。でも、やっぱり鼻だ!
私はそのままリードさせてもらう。
左手の八ツ峰を見るとkou2さんやるびのすけさんたちが見える。昨日は熊の岩に泊まったらしい。おーいと声を掛けたり、手を振ったりした。写真も撮っていただいた。
登攀は、どこまでも登って行きたいくらいとても楽しかった。出だしをレイバック気味に上がり、スタンス、ホールドがあるのでしっかりと身体を上げる。一段上がって、左にトラバースするようにして行くと、右手がよく掛かるガバに体重をかけながら、右あしを右の壁に張り、身体をぐいっと上げるとのっこせた。あれっあんましむずくない。振り返ると絶景!雪渓や山並み素晴らしい景色。このピッチは、特に残置ハーケンが多く、プロテクションを取りすぎると、弾切れになる…それを注意し過ぎて、ランナウト気味に登る。あとロープ5mと言われ、はたと気づく。登るのが楽しすぎて、まだまだあと半分ぐらいあるから節約しなくちゃと思っていたくらいなのだ。半分以上余ったスリング、ヌンチャクたち。ハーケンが連打された終了点でピッチを切る。リードを入れ替わるには狭過ぎたので、次のピッチまで行かせてもらう。
10ピッチ目…凹角をそのまま登る。ホールド、スタンスがあり、楽しすぎた。
大体、私は、モジモジ迷いクライマー。わかっていても、なかなか進まないのでいつもせっかちリーダーがイライラしてしまうほどなのだ。しかし、今日の私のクライミングは迷うことなく登っていくのがとても楽しく、ランナウトしてしまった。まだまだプロテクションがもったいない。取っておこうとついつい思ってしまったのだ。半分以上余ったスリングたち。結果ランナウト気味に登ってしまったのは反省点である。
これまで好き勝手なペースで登らせてもらい、後ろのパーティは、調整しながら近づいてくる。残りのピッチは、リーダーに行ってもらう。
11p目~12p目スラブを上がり、林立するリッジを過ぎるとチンネの頭に到着!チンネの頭で写真を撮ってもらわないと!と思い、恐る恐る立ち上がる。へっぴり腰である。
3人揃ったところで、グータッチした。
Ⅵデプローチ
ロープを畳み、少し歩いて降りて、懸垂し、再度少し歩いて二回目の懸垂をした。
池ノ谷ガリーを少し登り返し、北方稜線へ。北方稜線は、懸垂のところで渋滞するほど人が多かった。ビバークポイントに戻り、デポしていた荷物を回収する。1人1リットル以上残置しておいた水がありがたく感じる。
山頂は、たくさんの人で賑わっていた。
再度記念写真を撮り、早月小屋まで、降る。
せっせと歩くがなかなかつかない。途中の標高表示が目安になる。
早月小屋に到着してビールで乾杯しました。
まだ日が高く、日陰でないとかなり暑い。岐阜から来たというハイカーさんとのおしゃべりが楽しかった。
翌日3:00に起床して4:00過ぎに出発する。暗かった辺りも次第に明るくなっていく。
あとは降るだけ。歩き通すと、試練と憧れの石碑にたどり着く。ザックをおろし、記念写真を撮った。
Ⅶ下山後の温泉、帰り道
☆ 天然温泉 海王 | 温泉マニア・サウナマニアに人気のある温泉 日帰り温泉 富山県射水市(新湊)
なんかノボリがたくさんあって、いろんなコンテンツのある温泉だった。帰り際にソフトクリームのノボリを見つけて、ソフトクリームを3個購入しました。ソフ活です。
帰りに金沢に立ち寄り、市場でおいしそうなものだけを食べた。中でも、大きな生牡蠣を頬張ったのは初めてのことでとても美味しかった。
帰り道、昨日の三の窓でお会いした方は、富山県山岳警備隊の方々で関門のように感じた質問も私たちのことを心配してかけられた言葉だったんだなとわかったり、写真を振り返りながらニヤニヤしたりしながら鹿児島へのドライブでした。
体力勝負のチンネ山行だけれど、登攀はとっても楽しくて、スケール感のあるロケーションをバックに登って行くルートは素晴らしかった。まだまだ連れて行ってもらうレベルだったけど、念願の夢を叶えることができて本当に嬉しかった。
次は、どこにいこうかな。
装備 50mロープ2本、#2~#0.3を1セット、ヌンチャク10、アルパインヌンチャク60×3、120×2、180×2、240×1、アルミアイゼン、ペツルガリー、わたしだけストック1本。
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