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更けゆく秋の夜 旅の空の
侘びしき思いに 一人なやむ
恋いしや古里 なつかし父母
私は宿命的に放浪者である。私は古里を持たない。
(放浪記より)
林芙美子の『放浪記』は小学校の終わりか中学のはじめ位に読んだと記憶している。
人生経験に乏しい当時の自分にとって、さして面白くもない印象に残らない本だった。
数年前に成瀬巳喜男監督の『放浪記』を観て、こんな話だったかなと思ったくらい…
何気なく再読してみたらその文章の魅力にぐいぐいと引き込まれてしまった。
詩と日記が混じった様な作風は生命力に溢れ、それぞれの言葉が自由に飛び交う。
困窮する生活にありながら、うら若き乙女特有のユーモラスな感覚が瑞々しい。
時代背景が違っても、人間の行動にはそれほどの差異はないことに気づかされる。
また林芙美子が東京で住んだ新宿十二社界隈には、自分も学生時代に住んでいたため
その生活や行動する範囲が想像でき、主人公の行動に同調するような感覚を味わえた。
二年前に尾道を旅した経験も、やはり同じように作用したと思う。
映画版『放浪記』は限られた枠で筋を追うがため、言葉遊び的表現は随分省かれていた。
とはいえ、こちらもやはり日本映画史に残る名作であることに変わりはない。
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