京ケ倉(990m)はそこそこスリルを味わえる山である。
山友と三人で長野県生坂村にある京ケ倉へ行った。
犀川を眼下に見下ろし、北アルプスの常念岳から大天井岳そして燕岳まで見えるはずであるが、この日は雲の中。
オッサン三人、登りながら頻りに振り返り「見えないか」と目を凝らすが、空は無情で厚い雲は消えることが無い。山へ登っていると時々雲が飛び、雲間から山が顔を出すことがある。そんな期待をしながらの登山であるが、日頃行いが良くないオッサン達には、そんな幸運は無縁であった。
梯子ありロープあり、足を滑らすと落ちそうな箇所がある。木の根にしがみつきながら上がって行く。若者ならば何のこともない山が、足が上がらぬオッサン達にはレベルが一段階も二段階も上がる。
この山の核心部分である馬の背へ来た。
僅かの距離であるが、両側が切れ落ちている。もっとも馬の背で蟻の戸渡りと違うので、そこそこ広さはあるが、それでもバランスの良くない私にとっては緊張の場所である。
下を見ずに、慎重に渡る。その格好は漫画的で思わず笑ってしまう。緊張は笑いを誘う。冷や汗たらたらで進むと、ロープがある岩が待ち構えている。格好は無様でも、登山経験だけはあるので、何とか登りきる。
2時間ほどで頂上へ着いた。今日は生憎であるが、晴れていれば見晴らしがよい場所である。隣の大城(980m)まで往復で30分位、小さな馬の背や上り下りがあり、変化を好む人には面白い山だと思う。やわになった体を鍛えなおさなければと思いしらされた山行だった。
この山行には後日談がある。
見晴らしの良い場所で休んだ。さて行こうと前を見ると下りの踏み跡がある。先導者が何のためらいもなく進んだ。後ろに続く私は、何の疑問もなく後に続いた。急な下りである。足元を確認することで周囲を見回す余裕はなかった。
「オイオイ、この道違うんじゃない」最後尾のオッサンが言った。立ち止まり、周りを見回すと、どうも違うようだ。
先頭のオッサンは「いや、ここに踏み跡があるから、間違いない」と言う。
それでも「こんなに急じゃなかったような気がする」とキョロキョロすると、樹林の向こうに登山道が見える。
「あそこに道がある」漸く間違えたことに気づいた。5,60m下ったろうか、気が付いて助かった。全く違う方向へ下っていた。そこから急坂を上がった。疲れがドッとくるような上りであった。
元の場所に戻り、リュックを下ろし、へたり込んだ。ヤレヤレである。確認不足、思い込み等々オッサンの失敗はいつもある。教訓は活かさなければと思いつつ、いつも忘れてしまう。物忘れ、呆け始めのオッサン達の山行でした。
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