それに付随して,百名山に関するガイドブックも市場に多く出回っています。
私自身も2016年10月,雨飾山で百名山を完登しました。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-972350.html
そして現在,これらの登山コースはどのような性質であったのか科学的に検証してみたくなりました。
そこで,ヤマレコで公表されている山行記録を無作為にピックアップして,距離,累積標高差,勾配,歩行時間,時間当たりの登高標高差及び歩行速度を計算し,各登山コースのスケール(規模)及び難易度を検討しました。
山行記録の実際のデータを基にした詳しいコース解析は,あまり試みがないと思われます。
従って,この解析の意義は,大きいものと自負しております。
今回は,北海道の日本百名山9座について検討しました。
解析結果により,各登山コースの特徴は次の通りになりました。
(1) 利尻岳(鴛泊ルート)
他コースと比べ,コースのスケール(距離,標高差及び勾配)は比較的大きく,難易度(歩行時間,登高速度及び歩行速度)は平均的で,スケールは大きいが,比較的登りやすい山であることが考えられました。
また,羅臼岳(岩尾別ルート)とは,スケールや歩行時間,登高速度及び歩行速度はほぼ同レベルのコースであることが明らかになりました。
(2) 羅臼岳(岩尾別ルート)
利尻岳(鴛泊ルート)とスケールや難易度はほとんど同じであることが明らかになりました。
(3) 斜里岳(清里(旧道)ルート)
他コースと比べ,コースのスケールは小さいが,登高速度及び歩行速度は遅く(特に登高速度),難易度が高いコースと考えられました。
これは,中核部に長い沢登り区間があるからと考えられました。
(4) 雌阿寒岳(雌阿寒温泉ルート)
他コースと比べ,スケールは小さく,登高速度及び歩行速度は平均的でした。
一方,勾配は他と比べ急な方で,頂上付近には噴火口もあるので,少々スパイスのきいた軽登山が楽しめるコースと考えられます。
(5) 大雪山(旭岳)(姿見ノ池より)
ロープウエイで上がって,旭岳を登るだけなら,雌阿寒岳とほぼ同レベルで,軽登山が楽しめるコースと考えられます。
一方,奥地に入るとスケールがとてつもなく大きくなりレベルも変わってきます。
(6)トムラウシ(短縮登山口ルート)
距離は長く,標高差も大きく,スケールが大きいコースです。
また,登高速度が極端に遅い傾向がありました。
これは,登山道の登降や緩急が多く,登山道自体の歩きにくさを反映しているものと考えられました。
(7)十勝岳(望岳台より)
他コースと比べ,スケールや難易度は平均的と判断されました。
(8)幌尻岳(額平川ルート)
他コースとは比較にならない程のスケールの大きさをもった難易度の高いコースです。
それは,額平川の渡渉と標高差1,100メートルの急勾配の登りによるものと考えられます。
(9)後方羊蹄山(比羅夫ルート)
標高差は大きく,勾配も急ですが,登高速度や歩行速度は速く,難易度は比較的低いコースと考えられました。
歩きやすい登山道だからでしょうか?
今回,北海道の日本百名山の山岳コースを解析してみると,意外な事実が隠されていることを気づかされました。
例えば,斜里岳。
この山のコースはスケールも小さいし,利尻岳や羅臼岳よりも難易度は低いだろうと予想しました。
ところが,他コースと比べ登高速度の値が非常に低いことがわかりました。
なぜだろうと考えた時,中核部の沢登りがネックになっているのだと気が付きました。
そして,沢登りの経験のない私もてこずって,「さすが北海道の山だ,奥多摩あたりの1,500メートルの山とは全然違う」と驚いたことを思い出しました。
また,利尻岳の鴛泊ルートと羅臼岳の岩尾別ルートはこんなにもスケールや難易度が類似しているのかと驚きました。
山行データを基に多角的に解析し数値化していくと,その時の情景が目に浮かび,疑似登山をしている様な幸せな時を過ごすことができました。
本解析の詳しい内容は,ヤマノートに記載しております。
https://www.yamareco.com/modules/yamanote/detail.php?nid=2554
もし,ご興味があれば覗いていただけると嬉しいです。
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