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私が高校生の時に深田久弥の「日本百名山」の本が出され、手にした時に北海道の山、トムラウシ、幌尻岳という山の凄さを知った。夢の様な奥谷に思えた。
深田はトムラウシについて
「トムラウシを眺めて初めて打たれたのは十勝岳からであった。美瑛富士の頂上から北を見ると、尾根の長いオプクテシケの彼方に、ひときわ高く、荒々しい岩峰を牛の角のようにもたげたダイナミックな山がある。それがトムラウシであった。それは私の心を強く捕えた。あれに登らねばならぬ。私はそう決心した。」と書き出し、更に大雪から眺めて「あれに登らねばならぬ。私の志はますます堅くなった。そして翌年の夏、私は望みを達してその頂上に立った。」と述べている。
(旭岳から眺めるトムラウシ)
「トムラウシは、大雪山の旭岳につぐ北海道第一の高峰である。地理の本によると、大雪火山群と十勝火山群との中間、平ヶ岳、忠別岳、化雲岳、トムラウシにわたる一連の山を、戸村牛火山群と呼んである。しかし平ヶ岳や忠別や化雲は、広大な尾根上の一突起でしがないが、トムラウシは毅然としてその独自を主張する個性的な山である。」と紹介している。
実際に奇妙な名前であると思ったが、深田によると「それは十勝川の上流トムラウシ川から来たもので、トンラウシと呼ぶのが正しいそうである。Tonra-usiは「水垢」を意味し、ウシは「多いところLを意味する。つまり『水垢の多い川』、温泉鉱物のため水がぬらぬらしているのでこの名があるのだという。北海道の山名に詳しい村上啓司氏はトムラはtom-raが原形でないかと考えている」のだと言う。
どちらにせよ、その威容から「トムラウシ」とカタカナ書きする山名に惹かれる。
この山は新得町の山なのだ。トムラウシ登山学校と言うのがあるが,民間のホテルに売却された。
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新得町「トムラ登山学校レイクイン」「ペアーレ札幌」など公共の宿の売却が相次ぐトムラ登山学校レイク・イン(新得町屈足546、飯山俊夫社長)は8日午前の臨時株主総会で、今年度末で会社を清算、温泉宿泊施設を帯広市の「ホテル十勝屋」(後藤健二社長)に売却することを承認した。施設所有者は町。売却額は土地と建物を合わせて326 hokutonomado.com
今では日帰り登山できる山になっている。
私が出かけた時はしるよしもない。ただ2009年に8人の死者を出す遭難事故があって山の名前が世間に知れた。
ところでこの山の短歌は、当然ながら、近代化人が読むはずもない、知る人にしかわからない山で、この深田の紹介で知った人がほとんどだろうから、短歌など無いのだが、一つ救いがあって、ネットで『野いちご文学館』と言うのがあって、その主催者が母衣崎健吾氏と言い、その人の「青春の山々」と言う歌集の中に日本百名山を対象にして歌っていた歌を見つけた。
雪渓の風にゆられてエゾツツジ今年も咲けるトムラウシの峰に
北の辺のヒサゴの沼畔にたちつくす花に囲まれ乙女のごとくに
この方も年齢的には私よりわかいだろう。青春時代に北海道の山を歩いている。まだ全部の山を詠っているわけではないようだ。ネット上の歌人だ。自費出版で本も出されているようだ。
1首目は「今年も咲ける」とあるから、何度か登っているのだろうか。ただ私は蝦夷ツツジは目にしなかった。日本庭園あたりに咲いていたかな。
2首目のうたはわかる。ヒサゴ池の周りはお花畑なのだ。この歌彼女と登った時の歌かと想像をたくましくしてみたが、そうではなさそうだ。自らを詠ったのだ。
トムラウシの山名の入った歌を見つけて、うれしかった。
ともかくアルペンガイドの北海道の本を読みながら、想像をたくましく・・・などできずに、、ただただ不安であった。この山には深田が帰りに取ったトムラウシからヒサゴ沼、化雲岳のコースをピストンすることにした。
2024.5.21に新たな歌を見つけました。藤井正吾氏の「山の歌」の大雪山(p39)に次の歌を見出しました。
「山の歌」大雪山
眺め遣るみんなみの末あまかざる向つ恋ふる峰(を)トムラウシかな
藤井さんの詠う通り、私も大雪山の稜線から、青く見えるトムラウシを眺めて喜んでいました。
裏書に1955年生まれとあるから、10歳若い方だが、山恋いの歌集を出されている。今朝改めて読み、いくつかの歌を見つけて、短歌百名山に採取させていただきました。
トムラウシの歌を見出すことができて、うれしいです。一つの山を除いて。
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