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深田久弥のこの山の紹介はこのように始まる。
「函館を発って札幌へ行く汽車で 私たちの眼をそよだたせる山が一つある。まず駒ヶ岳、ついで後方羊蹄山。駒ヶ岳の颯爽とした尖峰よ胸の透くような眺めだが後方羊蹄山はドッンリと重く 一種の圧迫を感じる。古来蝦夷富士と呼よれただけあってその整正な山容よどこから眺めでも形を崩さない。」
その山容の美しさを褒める。次にこの山の名前について深田節が出る。
「この山を単に羊蹄山と略して呼ぶことに私は強く反対する。古く『日本書紀』斉明朝五年 六五九年)にすでに後方羊蹄山と記された歴史的な名前である。その前年、阿倍比羅夫が蝦夷を討つて、この地に政所を置いた。後方羊蹄山の後方を「しりへ」(すなわちウシロの意)、羊蹄を「し」と読ませたのであるに・・・」
「羊蹄を『し』と読ませるのは万葉集にも例かおるが、なぜ「し」という発音にそんな変テコな 一字を宛てたかという理由を、私は牧野富太郎氏の植物随筆で知フた。羊蹄とはぎしぎしというと読ませたのである。ぎしぎしは私たちの子供の時から馴染み深い野草であって、おそらくその葉の形から羊蹄という漢名が生れたのであろう。だからただ羊蹄山だけでは、「し山」ということになる。アイス詰ではマリカリヌプリである。」「マクはうしろだがカリは廻るの意で、マっカリは元は川の名であった。現在の真狩川である。それがヌプリをつけて山の名になった。」
「シリベシ山」と言うのが正解で、漢字で書くから後方羊蹄山になってしまう。
さて、この山に登るのも大変だが、短歌を探すのも大変なのだ。
有名山なのに歌が少ないと言える。
与謝野晶子 かずしらぬ虹となりても掛るなり羊蹄山の六月の雪
しかし、有名な山ですから1首だけと言うことはなく見つけております
太田水穂 まさやかに空にあらはるる青眉の蝦夷富士が峰もわかれなりけり
千田泰三 雲晴れて残雪のせたエゾ富士がやっと顔だす洞爺湖の朝
大森亮三 後方羊蹄山(シリベシ)山、マッカリヌナリ、マチネ
シリいずれの呼び名もわれは拒まず
同 羊蹄とはギシギシにしてタデ科草語源の遠く日本書記にあり
父の通夜の引き明けにして仰ぎたる羊蹄の荘厳にこころ震える
同 父母眠る墓地より仰ぐ高山の円錐形こそいよよいとしも
地元の喜茂別短歌会の会報に
(https://kimobetsu.sakura.ne.jp/koho/2014/files/06/p4_5.pdf)
佐藤百合子 羊蹄山茜の雲はのこりしに語りかけ来る春の満月
以上のうたは大方素直な歌い方で手の込んだ工夫はないので素直に読める。大森の歌は面白い。私も深田の言うように、この山は「シリベシ」山と呼びたい。私は以前知識もなく、「後方」と書いてシリベシと呼んで「シリベシようていざん」だと思っていた。
最後に紹介した地元の会の佐藤のうたが、私は素直に好きだし、きれいだ。私は山の短歌として「絵画的な歌」を取り上げている。また山の姿を表現する歌も好きだし、心を添えた歌も好きだ。
太田水穂が歌っているとは知らなかったが、水穂の歌集で見つけたと思う。
いまひとつネットで見つけた歌を紹介させてほしい。
<あなたへの手紙…!>
https://blog.goo.ne.jp/amym184/e/141128722de333ccec8f5c1008702753
「旅三日目…最終日小樽、札幌へ出る。始めにバス前列座席<有料>を申し込んでいたので、この日は最前列で、ご機嫌なドライブなり。
真狩峠を通りキロロを横目に小樽へは入る。途中・・・羊蹄山が目の前に現る 。何度も羊蹄山の短歌、俳句を見聞きしたが、これが羊蹄山かと、見られたことが、たまらなく嬉しくて仕方ない」
雲流れ羊蹄山が顔を出すナナカマド映ゆ山峡のむら
うらうらと眠らむとする夫揺すり羊蹄山と起こすバスの中
この人の歌素直な歌い方で、現代口語短歌的でもあり、所謂今風の歌い方でもある。二首目はいいですね。シリベシを見た感動が伝わってくる。いやそのくらいあの山を目前に見たら、この方のように思う。
1首目はシリベシが現れるあらわれ方が衝撃的でないのが残念かな。「雲流れ」と「顔を出す」が平凡なんだと思う。とてもいい切り取り方をしているので、手を加えればと思う。二首目の感動を1首目にも出ればと思う。
人の歌をどうこう言えるものではないのですが・・・・
何度も「シリベシの歌や俳句を見聞きしていると」言われるが、私は数多く知らないので羨ましい。
「北海道の文学碑」
http://aiko1.sakura.ne.jp/bu/niseko/niseko.htm
短歌とは違いまうが、この羊蹄山のまわりには、いくつかの文学碑があるんですね。
有島武郎記念館や「赤い靴ときみちゃん」(留寿都)
八州秀章音楽碑 真狩村 羊蹄山自然公園内
ここに私の好きな「アザミの歌」を作曲した。
あざみの歌
山には山の 愁(うれ)いあり
海には海の 悲しみや
ましてこころの 花ぞのに
咲しあざみの 花ならば
高嶺(たかね)の百合の それよりも
秘めたる夢を ひとすじに
くれない燃ゆる その姿
あざみに深き わが想い
私の短歌百名山の北海道編は、残る一座幌尻岳となった。この山も歌に歌われることのない山なのだが、最近になって歌集『ポロシリ』を出している歌人を知った。時田則夫である。その歌集を2冊、アマゾンで取り寄せているがまだ来ないので、それを手にしてから幌尻岳を書き上げようと思っている。
(書きかけです)
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