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2021年04月18日 10:33日本百名山の短歌全体に公開

短歌で詠う日本百名山 18 蔵王

短歌で詠う日本百名山 18 蔵王

蔵王と言えば斉藤茂吉でしょう。近代歌人にして山形の文芸人で、世にも知られた人物で、山形には斉藤茂吉記念館がある。短歌を詠む人には少なからず影響を与えた人で、歌碑も全国に作られている。

彼が詠んだ蔵王の歌を並べてみよう。
斉藤茂吉 蔵王を詠む

http://jintatatu.web.fc2.com/framepage13.html

あさけより日の暮るるまで見つれども蔵王の山は雪にかくろふ

朝な夕なこの山見しがあまのはら蔵王の見えぬ処にぞ来し

朝ゆふはやうやく寒し上山の旅のやどりに山の夢みつ

あまつ日に目蔭をすれば乳いろの湛へかなしきみづうみの見ゆ

いただきに寂しくたてる歌碑見むと蔵王の山を息あへぎのぼる

いにしえは神にせまりてこの山に上りしかども遊びせなくに

岩の秀に立てばひさかたの天の川南に垂れてかがやきにけり

羽前なるあまそそる山いまだかもそともの雪かげ

かたむきし冬の光を受けむとす蔵王の山を離れたる雲

雲の中の蔵王の山は今もかもけだもの住まず石あか



消のこりし雪のはだれはみちのくの蔵王の山にけふも見るべし

ここにして蔵王の山は見えねども鳥海の山眞白くもあるか

この山に寂しくたてるわが歌碑よ月あかき夜をわれはおもはむ

蔵王よりおほになだれし高原も青みわたりて春ゆかむとす

蔵王より離(さか)りてくれば平らけき国の真中(もなか)に雪の降る見ゆ

蔵王より離(さか)りてくれば平らけき国の真中(もなか)に雪の降る見ゆ

蔵王よりなだれをなせる山膚(やまはだ)に白斑(しらふ)になりて雪消えのこる 

蔵王よりひくき雁戸(がんど)のあゐ色をしばし戀(こほ)しむ雪のはだらも

蔵王山に斑(はだ)ら雪かもかがやくと夕さりくれば岨(そば)ゆきにけり

蔵王山その全けきを大君は明治十四年あふぎたまひき



蔵王山に雪かも降るといひしときはや斑なりといらへけらずや

蔵王をのぼりてゆけばみんなみの吾妻のやまに雲のゐる見ゆ

死にしづむ火山のうへにわが母の乳汁の色のみづ見ゆるかな

純白なる蔵王の山をおもひいで蔵王の見えぬここに起臥す

しげやまのうへにまぢかく見えてをる蔵王の山は雷なりわたる

すでにして蔵王の山の真白きを心だらひにふりさけむとす

たましひを育みますと聳(そび)えたつ蔵王のやまの朝雪げむり

とどろける火はをさまりてみちのくの蔵王の山はさやに聳(そび)ゆる

とほどほし南ひらけて冬山の蔵王につづく白き団塊

夏されば雪消わたりて高高とあかがねいろの蔵王の山

万国の人来り見よ雲はるる蔵王の山のその全(また)けきを

ひさかたの雪はれしかば入日さし蔵王の山は赤々と見ゆ

火の山を繞る秋雲の八百雲をゆらに吹きまく天つ風かも

ひむがしに直(ただ)にい向ふ岡に上り蔵王の山を目守りて下る

ひむがしの蔵王の山は見つれどもきのふもけふも雲さだめなき

陸奥をふたわけざまに聳(そび)えたまふ蔵王の山の雲の中に立つ

みちのくに生れしわれは親しみぬ蔵王のやま鳥海のやま

陸奥の蔵王山並にゐる雲のひねもす動き春たつらしも

みちのくの藏王の山が一等に當選をして木通(あけび)霜さぶ

みちのくの藏王の山に消(け)のこれる雪を食ひたり沁みとほるまで

雪消えしのちに蔵王の太陽がはぐくみたりし駒草の花

ゆき降りし山のはだへは夕ぐれの光となりてむらさきに見ゆ

雪きゆる蔵王谷(渓)よりながれ来て川遠じろし見おろしにけり

とほどほし南ひらけて冬山の蔵王につづく白き団塊

以上四十四首の歌、これは上のサイトにまとめられた歌ですが、ここに乗らない歌もまだある。


結城哀草果 蔵王

あかあかと わが行く歩道 とおりたり ゆく手の蔵王に 雲ひとつなし

群雲は山の腹より湧きいでて蔵王の山はいかめしく

このあした衣手(ころもで)さむしみんなみの山に雲いて風おこるらし

蔵王は朝(あした)吐きたる白雲に己かくれていまは見えずも

蔵王山をま向うに志て撞く鐘は朝勤め夕は憩へと鳴りわたるかも

蔵王山まともに仰ぐ家に住み七十年を気強く生きつ

蔵王山の濃霧がなかにおほらけき高橋四郎兵衛の声がきこゆる

山麓のとびらに墨もくろぐろと書きてたびしは蔵王

田のなかに稲扱(こ)きながらながむれば蔵王の山はすでに真白し

ひむがしの蔵王山にかたまれる夕焼雲は動かざりけり

みちのくの高山脈の朝明けてただ白銀とひかるなり

荒れたりし今日の山ともおもほえず谷間にしづむ紅きゆう雲


「日本山岳短歌集」より

群雲は山の腹より湧きいでて蔵王の山はいかめしく見ゆ   結城哀草果

蔵王に深くこもれる雨雲の今日もたなびき五月雨やまず     結城哀草果

山小屋の外はあきらけき月夜にて白樺の葉は雫おとせり     同

神山に夜明しをれば天津風寒く吹きて来ぬ笹原の上を       同

蔵王嶺に今日も雪雲霽れねども庭の柿には薄日さしゐつ  菅野幽介

心恋ひ蔵王より得し駒草は庭に根つかず枯れてしまひぬ     同

五色岳  

火口湖にさかさにうつる五色岳風波立ちて影みだれたり     菅野幽介

火口湖に影をひたせるさかさまの五色ヶ岳に朝日出づる見ゆ   同

山川の淵の涵へに影ひたす母子草の花はさかさまに呪く      同

母子草のひと茎垂れて浮きし花淵の湛へに影とゆれ居る      同



深田久弥は百名山の中で蔵王について書いている。

「もし最高点を盟主とするならば、それは熊野岳であって、その細長い頂の一端に、斎藤茂吉の歌碑が立っている。
陸奥をふたわけざまに聳えたまふ蔵王の山の雲の中に立つ   茂吉 
 茂吉は山形の生んだ大歌人で、その故郷からは朝に夕に蔵王を仰ぐことができた。その高弟結城哀草果氏も同じ山麓で一生を農に励んできた歌人であって、その多数の作歌の中から蔵王を選び出すのに事欠かない。

柿紅葉へだててあふぐ蔵王嶺にはつかに白く雪ふりにけり    哀草果
 この熊野岳の続きに、地蔵岳とか一宝荒神山とか呼ばれる峰があるのは、蔵王が昔から信仰の山であったことの証左であろう。日本の古い名山には大てい神が祀ってあった。仏教が盛んになると、本地垂迫の説から権現の名が用いられた。蔵王山という山名が蔵王権現から来たことは言うまでもない。
 『日本名勝地誌』には「本名を刈田岳と言う。刈田嶺の古社あるを以てなり。中世より専ら蔵王山と呼ぶ」と出ている。刈田岳は熊野岳より八十米ほど低いが、遠くから望むと却って熊野岳よりも目立つ円頂の峰であって、おそらく昔は蔵王の代
表は刈田岳ではなかフたかと思われる。」



やはり蔵王を語るにこの2人の歌人は故郷の山をこよなく愛した歌人であり、こお二人に勝る歌人は全国の歌を巡ってもいないのではないだろうか。

岩手山と言えば啄木、蔵王と言えば斉藤茂吉と言うように、今後も多くの山が出てくるが、もちろん歌人に詠まれたNO1の山は富士山であり、それを越える山はない。


ただ、茂吉の蔵王の歌も一首ごとによく読むと味わいがある。

*蔵王よりなだれをなせる山膚に白斑(しらふ)になりて雪消えのこる

*蔵王山に斑ら雪かもかがやくと夕さりくれば 岨(そば)ゆきにけり

上の歌が絵画的で蔵王を詠っている。二首目は「岨」は嶮しい意味だから、「夕さりくれば」も「ゆきにけり」もわかりづらい。

此方の歌のが、本来は描写としては良いのかもしれないが、私の解釈が良いかはわからない。

「蔵王の斑雪が湯日に輝いて襞襞の蔵王の嶮しさが見えてくる」とでも読み取るのかなと思うです。

結城の

田のなかに稲扱(こ)きながらながむれば蔵王の山はすでに真白し

の歌は彼が農民で、農業をしながら歌を詠む。時田則雄の先達者だ。山形盆地から蔵王を詠む。



私にとって毎朝見るのは富士山だ。マンションのベランダから見える。見えないと寂しい。

こういう山として浅間山、磐梯山、筑波山など、また甲斐駒とか、木曽駒なども故郷の山と言えるろう。

ただ蔵王は、やはりローカルな山かもしれない。それと宮城県側から詠われる歌が無いうように思う。宮城の歌人は誰がいるのかな。逆に山形の2人が強烈すぎるのかもしれない。
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