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2023年07月31日 19:57日本百名山の短歌全体に公開

短歌で詠う百名山 95 九重山

短歌で詠う百名山 九重山

久住山
久住山霧をむら濃に吹きぼらふ峰尨の風肌に痛しも    須田伊波穂
眼下の谷底に沈む霧深したぎちの智も今はきこえず     持田勝穂
夕まけて青樫の紫は風だちぬ木の下行くに寂しさわくも     同
こよひここに泊ると張りし笹原の天幕めぐりて喝くきりぎりす田中俊介

九重山に登る
いざ行かむ行きて九重の山を知り愉しみたいと陽も上りくる
草千里わたる風のさわやかに若い二人は手をとり歩む
久住山の岩峰切れ落ちてゆくさきにながれこむ風の音
硫黄岳はいまも白煙を吐く噴き出す音にたじろぎとまる
九重につらなる山のおおらかに若芽吹く高原 空ははてなく
二〇〇五年
五月二日。朝八時半、長崎の大村を発って、日田市に立ち寄り、九重の滝ノ本高原に入り、食堂で昼食をとって、牧ノ戸峠に向かった。晴天で気持ちがよい。
今回は妻との九州旅行のなかで、私だけが山に登るため、この山を味わう余裕はない。今日は久住山だけを登ることで我慢することとする。
 峠の売店の駐車場に妻をおいて一人でむかう。登山靴は使わずにスニーカーである。ストックを二本使う。昨年の夏以来の登山となる。峠から西千里ガ浜まで一気に駆け登る感じでひたすら足を早める。星生山が大きく目の前にある。急斜面の登りがゆるくなると西千里ガ原の入り口である。じつに清々しい快適な気分になる。草原の道で、ここにまで来ると写真で見覚えのある久住山の姿を見ることができる。前を若いカップルが楽しそうに歩いている。この草原が久重の雰囲気なのだろうと思った。

 草千里わたる風のさわやかに若い二人は手をとり歩む

 西千里浜から眺める久住山は、その形状からしてすぐにわかった。『九重山は、山群の総称であって、その主峰は久住山』と、深田久弥は書いているが、現在では中岳が最高峰となった。しかし、深田久弥は言う、九重の山々のなかでも、『何といっても品のあるのは久住山である。殊に北側の千里浜と呼ばれる原から見た眺めた形は、精鋭で颯爽としていて、九重一族の長たるに恥じない』と。まさにその通りに、山頂からスパッと鋭角に切れ落ちて、荒々しく見える姿は、他の山とその山様が異なっている。

 久住山の岩峰切れ落ちてゆくさきにながれこむ風の音

 避難小屋の先が久住分れで、そこから見る光景は、硫黄山の山腹から噴煙が音をたてて噴き出し、火口底から茶褐色に荒んだ山肌で、草原とは対象的な荒々しさである。安達太良山の沼尻への景色と同様のもので、久重が火山である事を思い知らされる。深田久弥は、久重の原や温泉には触れているが、、荒々しい光景には言及していない。持田勝穂の歌に『眼下の谷底に沈む霧深したぎちの音もいまは聞こえず』というのがある。これは「久住わかれ」から見た火口の光景がかさなるが、天気は歌とは違って、まったくの五月の晴天。高原哨遥の気分だ。 

 硫黄岳はいまも白煙を吐く噴き出す音にたじろぎとまる
 山頂からの眺めは霞がかかって、祖母や阿蘇の峰々が霞んでみえないのが残念であったが、『坊ヶつる』や法華院温泉など、じっくりと味わってみたい山であることに間違いない。再び訪れてゆっくりと味わってみたい。秋が最適だと思う。駆け足で山頂に立つ。写真だけ撮ると、また慌ただしく山をおりた。本来ならこんな登り方はしたくないのだが、妻が登らないのでやむをえない。牧ノ戸の駐車場から長者ヶ原に、爽快な高原がひろがる。見返れば美しい山々である。
 ここのえ
 九重につらなる山のおおらかに若芽吹く高原 空は果てなく

湯布院町と大分の『鳥てん料理』と『だんご汁』
 飯田高原のドライブインで飲んだ牛乳は美味しかった。国道を湯布院にとり、その美しいひびきをもつ町のたたずまいにふれることに憧れていた。当初の予定にはなかったのだが、宿泊を大分にすることにしたので、立ち寄ることにした。由布岳の真下に町が広がっている印象をうけた。由布岳の特異な姿も捨て難い。
 駅前や観光スポットの一角は、清里や軽井沢の小型版みたいで、観光客は多くいたが、私たちの興味をひかなかった。観光地の池の近くに、土地の共同風呂があったが、駐車場がなく入れなかった。後で知ったが、男女混浴で、道端からのぞかれそうな風呂だという。残念ではあったが入らないでよかったかもしれない。町営の施設に寄ったが、時間外になってしまい、ついに湯布院では温泉に入ることはなかった。                       
  
由布の峰希にこの朝雲無きを柳のかげの湯船より見る  与謝野 寛         
雨を撒かねど雲を撒く夕風ありてうらさびしけれ        与謝野昌子

 湯布院について与謝野寛夫婦の歌があった。寛の歌はうらやましいかぎりだ。山岳短歌集にあげられている。長逗留したに違いない。さぞや昔はひっそりとした山中の温泉町であったことであろう。その情緒をもった、由緒ある温泉宿で泊まるのが、この町での過ごし方としては、正解なのだろう。由布岳を見ながらこの町をあとにして、別府、大分にむかった。
 大分には『鳥てん』という料理があるというので、街角でその料理の食べられる店を紹介してもらった。レンガづくりの大分銀行のある商店街の裏に「レンガ屋」というレストラン(食堂)を教えられた。客はいなかったが、『鳥てん定食』というのがあって、それを注文した。ご主人にきくと、「とり肉」のてんぷら料理なのだそうで、大分の家庭料理のようでもある。鳥肉につける下味がそれぞれ違うので、店によって味が異なるのだそうだ。唐揚げより柔らかく食べやすい。値段も安い。東京では出会ったことのない料理に満足した。
 ついでながら、レンガ屋の主人の奥さんの言うには、大分の名物は、この「鳥てん」と「だんご汁」で、道中あちらこちらで『だんご汁』の看板をみたが、どんなものかわからず、食べずにいたが、うどんを手でちぎって入れるものや、ひもかわよりもっと厚いものとかで、うどんの一種なのだそうだ。ちなみに熊本に入るとこれが『だご汁』と呼ばれて「ん」の字が抜ける。中身は同じだそうだ。熊本の山鹿でこの「だご汁」を食べたが、いわゆる関東でいう「すいとん」のことであった。その夜は大分の豊国健康ランドに泊まる。妻は初めて経験であったが、「塩のサウナ」なるものがお肌をすべすべにしてくれて、いたく気にいったとのこと。翌日は午前五時には大分をでることにして、仮眠室で休んだ。
 
短歌 二〇〇五年
草千里わたる風のさわやかに若い二人は手をとり歩む
久住山の岩峰切れ落ちてゆくさきにながれこむ風の音
硫黄岳はいまも白煙を吐く噴き出す音にたじろぎとまる
ここのえ
九重につらなる山のおおらかに若芽吹く高原 空ははてなく
  
二〇一六年
牧ノ戸
いざ行かむ行きて九重の山を知り愉しみなさいと陽も上りくる
湯布院と九重を分ける山のさき由布岳の二つ峰みゆ
「ひとみな花に酔うときも」一人来て微笑んでいる九重連山
沓掛山越えて進めば西千里むかう山道春にぬかるむ
太古なる火山のつくりし風景にゆっくり浸かって時送りたい
三角の形をなせる久住岳眺めていれば春の風ふく
雲もなく久住山頂空青し宇宙の果ては漆黒なのに
久住山への道
たおやかな久住の峰と雲うつす小さな池の朝のぬくもり
雲もなく久住山頂空青し宇宙の果ては漆黒なのに
中岳の尖る頂き目に据えて一歩一歩と吹く風とゆく
中岳に御池は青く光りける激しき火口の跡をかくして
我を呼ぶ青く聳える由布岳を近くに眺める中岳の上
中岳を下れば近く坊ガツル目の前にしてこの時行かず
山頂に立ちてはおれど余裕なく悔やむばかりの登山かな
中岳の頂に立ち目をやれば阿蘇の嶺々裾野ひろがり
けむり吐く硫黄岳あり横にみて北千里へとむかっていく
西部劇の場面と違わぬ風景にただただ我は飲みこまれてる
この広い浜に居るのは我一人コーヒー沸かす音のみぞして
硫黄岳のけむり昇れる青い空コーヒー飲みつ対話するわれ
じんじんと肌に感じる静けさに生きてる不思議宇宙の不思議
噴煙を噴き上げている硫黄岳九重連山太古を語る
星生山山頂からの風景はまぎれもなしに火山の山なり
時を経て三度九重に来られたら法華に泊まって山愛でるなり
 
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