手元に塚本邦夫の自選歌集『籠歌』があり、1,745首が引かれている。その中から勝手に「山」の歌を探した。
塚本邦夫の山の歌を
0401 濡れて著く祝婚状の左肩切手の死火山の名を知らず
0463 八月の死火山の尾根ちかぢかと兵士の肩のごとし 翳れる
0713 アルプスの禽啖(とりくク)ふ昨夜(よべ)のゆめさめて性器ものりしわかもの歩む
0822 ピレネー山脈恋ひて家出づ心臓のあたりわづかに紅きkl.影曳き
1023 ゑはがきの穂高曇りて紺青の処女雪にけがされし青年
1621 「遠山に日のあたりたる枯野」より還るり来て悲をみごもれり
1610 ひとりむすめのあらばいまごろそむかれゐむころかくらぐらと冬の赤富士
1640 たましひの聲にしたがふわが生のなかばうすかね色の空木岳
1632 茂吉の愚に倣わむとしておとづれし維納突然に木蓮終る
塚本邦男のシュールな歌で、穂高と富士と空木岳が詠まれているだけでも面白い。
このような歌は、好き嫌いがはっきりして言うと思う。でも作り手としては一種の面白さがある。塚本は「新古今」からの着想で歌を詠む。これもありであろうと思う。
わかりずらい歌は、というか読む側の理解度のうちにその面白さが感じられれば良いのかな。一時塚本にかぶれていた時がある。山を対象にして塚本のように作ったことはない。あくまでも作る側の面白さであって、読み手が面白いと感じるかは別でしょう。」
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