書かれている内容は、読み終わってみれば北村さんの自慢話ということに気がつくのですが、とにかくとーっても愉快なタッチ(と語調!)で描かれているので、大変楽しい読み物です。その点では、「山と溪谷」に連載されて単行本になった高田直樹さんの著書「なんで山登るねん」とそっくりですね。ちなみに田部井さんはガンの末期に入院生活を送っていたとき、その事実をご主人・政伸氏を含め5人にのみ打ち明け、他は口止めしていたそうですが、その5人の一人が北村さんです。
北村さんご自身の弁:「75年の初遠征で『へい、ベースキャンプまででけっこうですから、ぜひお供をさせていただきたく』と隊に加えてもらった二等兵見習いの私自身、とうとうここまで田部井淳子という一人『時代の個性』を、傍らでじっと『観察』することになったなんて。まこと、山をめぐる二十年間連続上映ドラマの中を、生身で駆け抜けてきた思いがする。」「田部井さん、それに私の楽しい山仲間たち、いろいろバラしてしまった。許してくれい。」 北村さんはお茶の水女子大から読売新聞社に入社した才媛ですが、巻末の著者紹介を見ると、あの(!)松本深志高校出身であることが分かります。実は私が大学生のころ、同校出身の後輩と夏休みに上高地に行った折、松本深志高校山岳部の定着BCに数日間居候させてもらった経験があります。大学ならともかくも(地元とはいえ)高校で夏休み期間中ずーっと大型天幕を張っていて同校関係者がいつでも気軽に生活できるという大らかさに大変感心したものです。教育方針が偲ばれましたね。また、本書を読むと分かるのですが、北村さんは子連れの男性と一緒になっており、その結婚については親に大反対されたという点が田部井さんと共通だったそうです。このように、みかけは超一流女子大出身のお嬢様でありながら、その実は、おとこまさりの奔放な気質という点で魅力的な女性ですね。
本書で紹介された山行の中で、とても印象的なものというと、世界七大大陸最高峰の一つでニューギニアにあるオセアニア最高峰・カルステンツ。実は田部井さんの著書には、カルステンツ登頂の場面では北村さんが全く登場しないのです。というのも、北村さんが同行したのは1回目でその時はビザの時間切れで登頂できなかったのです。田部井さんが登頂に成功したのはリターンマッチ(2回目)の方。そういう背景もあって、1回目の内容紹介は貴重であり、ワクワクドキドキ感満載でした。
【読了日:2018年7月23日】
北村さんのこの本は、流石に読売新聞で活躍された方だけに軽快なタッチで田部井さんの7大陸最高峰登頂関連の題材を紹介してくれており、夜の更けるのも忘れて一気読みしてしまいました。良い本を紹介していただき、ありがとうございました。
matusanさん、いつもコメントありがとうございます。
matusanさんも長野県出身なので、北村さんと同郷になるのですよね、松本と上田(坂城でしたっけ?)は比較的近隣ですし。最近の話題では、御嶽海でしょう…
田部井さんを取り巻く世界に関しては、まだまだ宿題の本がありますので、また紹介できたらと思っています。
よろしくお願いいたします。
確かに北村さんとは、同郷ですね。松本市と上田市は、広域合併でいまや美ヶ原で行政界を接しており、三才山トンネルで繋がっております。
北村姓と言えば、行列のできる法律相談室の北村晴男弁護士も長野高校の出身で北村姓は長野県に多いようですね。
また、面白い本をどんどん紹介してください。
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