田部井淳子さんに関連する図書の読書を継続中。これは、女性として世界で初めてエベレスト登頂に成功した日本女子登山隊の公式記録ともいうべき図書で、遠征隊のほぼすべての内容が網羅されています。登山隊のスポンサーだった読売新聞社から登頂後半年足らずで出版されたようです。出版についても新聞社がバックアップしたということで、上手な編集になっています。各ステージ(章)でもっとも適切な隊員の手記などを元ネタに構成されており、客観的な記述(記録)をベースとしながらも、個人個人の思いも各所で吐露されているのが特徴ですね。
全体を通して分かることは、この隊は最後まで隊員が一致団結することができずに、隊としては登頂に成功しつつも、個人としては後味の悪い思いをみんながしている点。その中で、強い批判(特に個人的な事情で一時隊を離れて日本に帰国したことに関して)を浴びてはいますが、久野隊長はその責務を十分に果たしていたと私は思いました。親族等の反対を押し切り、仕事を辞め、借金を背負って、子どもを置いて、など、さまざまな困難を克服して女性が社会進出する時代の産みの苦しみだったのでしょう。登攀活動部分に関して言えば、ルート工作や荷揚げなどの下支えはほとんどシェルパの実績であり、今風に言えば隊員はガイドされたお客さんだったかのような印象です。
個別の内容としては、カトマンズ市外からのキャラバンがとても楽しそうであった(このころはみなさんまだ燃えていた)ところと、資料編にさまざまな記録が掲載されている中で「通信担当報告」が特に興味をひきました(無線機とアンテナを結ぶ同軸ケーブルの型番まで記載されていたり…)。
【読了日:2018年8月29日】
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