先に読み終わった北村節子さん著の「ピッケルと口紅」でちょっと(ネガティブに)紹介されていた図書です。正直、後味の悪い本ですので積極的にお薦めすることはしません。後味が悪い理由は著者にあるのではなく、主題となったシシャパンマ女子登山隊の遠征(隊員では田部井隊長のみが1981年4月30日に登頂)そのもの自体が後味が悪いものだったからだと思います。田部井隊長・北村副隊長の首謀者二人と、それ以外の隊員との間の溝をあからさまにして、著者なりに女性を取り巻く時代背景などをベースに考察したものと言えば良いのでしょうか。
著者は登山界とは全く無縁の人で、邪推するに、シシャパンマ遠征が終わった後に残ってしまった借金の穴埋めをするために、登山隊側が取材に協力することで図書を出版することを持ち掛けたのではないでしょうか(そうは明記されていませんが)。著者が引き受けたきっかけは、2歳の子供を置いて命の危険がある高峰登山遠征に出かけたという田部井隊長に興味を持ったためだとあとがきで記しています。
自分のミスを棚に上げて他メンバーのミスを許さない、という事実がいくつも暴露されているところや、田部井さんと北村さんだけが特別に仲良しでありすぎて他のメンバーとの親密度にそもそも大きな開きがあったという部分には辟易する感が否めませんが、さまざまなプレッシャー(文部省の後援、日中友好イベント名目での中国の思惑、スポンサーやNHK取材班への配慮など)の中で、個々人の趣味の延長線上の海外遠征、しかも女性隊、というところにさまざまな軋轢が生じる土壌があったことが分かります。女性の自立をテーマとして、時代考証的なものとして読むべきでしょうし、著者の狙いもそこにあったことが確かです。
【読了日:2018年8月3日】
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