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吉野(旧姓:若松)せいさんは、1899年福島県小名浜生まれ。高等小学校卒業後、検定で教員資格を取得し、小学校教師を勤める。1921年に吉野義也氏(詩人の三野混沌)と結婚し、農民生活を始め、6子を育てる。73歳を過ぎてから執筆し、1975年に「洟をたらした神」で大宅荘一ノンフィクション賞、田村俊子賞を受賞。大宅賞の賞金とともに授与された世界一周航空券でヨーロッパをまわり、それから2年後の1977年に、78歳で没。
本書は、表題作を含め、16編から構成されています:「春」「かなしいやつ」「洟をたらした神」「梨花」「ダムのかげ」「赭い畑」「公定価格」「いもどろぼう」「麦と松のツリーと」「鉛の旅」「水石山」「夢」「凍ばれる」「信といえるなら」「老いて」「私は百姓女」。順番は各話の時代順になっているそうです(執筆したのは1972年以降だが、各編の最後に何時の頃の話だかが記載されています)。ちなみに序文は串田孫一氏、解説は扇谷正造氏です。
なんと言っても「洟をたらした神」が凄いです。開拓地で逞しく育つ六歳の息子のお話です。最後にさわやかな気分になります。「春」も同様に最後にほっとする落ちがあります。「梨花」は娘を病気で亡くす場面の話、「鉛の旅」は入隊した息子に会いに行く話。すべて過酷な貧農生活が背景で、「公定価格」〜「鉛の旅」には戦争の影も色濃く見えます。
好き嫌いはいろいろあるでしょうが、少なくとも「洟をたらした神」に出会えたことを私はとても感謝しています。
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