山たびの軌跡 第14回 懇意にしている先輩から吾妻山に行くから来てくれと連絡が有る。計画の内容は、メンバー10人。吾妻連峰の浄土平から一切経山経由で姥湯まで行くとのこと。登山口の浄土平へのアプローチと下山口の姥湯からの帰りは、車での送迎付きという美味しい内容だ。私は、西吾妻山から浄土平まで2回歩いているので、山そのものには魅力を感じないが、秘湯の姥湯に引かれて応諾する。浄土平出発も9時30分と余裕である。一切経山は広い山腹を行くコースでガスがかかると迷いやすいところだ。風当たりが強い所で、遭難も一切経山から「魔女の瞳」と呼ばれる五色沼付近で起こることが多いようだ。参加メンバーには山に達者な人は少ないようで、天候の行方だけが気がかりである。
メンバーの約半数が若者で、昼の炊事用に2リットルのミネラルウオーターを2本ずつ背負う。私も持ちましょうと言うと「大丈夫です」という。最初から「お願いします」という人はいないので、そのまま登山開始。案の定いくらも登らずに2本背負ってやることに。ガレ場を登り鎌沼への分岐で休憩。安達太良山、鎌沼、東吾妻山、中吾妻山、桶沼等が臨まれて、いい景色である。天気は少なくとも午前中は持ちそうで、心は早姥湯である。
一切経山に着くと、風が強かった。風の通り道だ。裏磐梯の五色沼が吾妻の五色沼に負けてなるかと神秘的な色を見せる。途中2人連れにあったがその他は誰もいない。10月も下旬である。人気の山も、今は静かな山だ。五色沼の縁を通り家形山に11時半頃到着。ここで昼食とする。大倉川の谷間、磐梯山方面にガスが湧き、風に雨らしき物も混じるようになり、早々に姥湯を目指して出発する。
まず五色温泉に下りる道がある。ここは要注意だ。ここを過ぎればあとは問題ない。しばらくすると道は下って行く。もう兵子になったのか、と後へ続く。しかし、何かしっくりこない。方向的には合っている。間違いないとさらに下る。が、やっぱり変だ。兵子は間違いなくピークになっているはずだが、そんなピークは無かった。そこで初めて2.5万地形図を広げる。何のことはない高倉新道を降りていたのである。
「では、戻りま〜す」で一件落着。のはずだが、「登り返すのは嫌、なんとかならないの」となる。戻っても大した時間ではない。しかし、年配の人もいて「はい、はい、戻り戻り」というわけにはいかなかった。策はないかと聞かれれば、手はある。ここを下って行けば姥湯へ続く道路に出る。その道を歩いて、姥湯で待っているはずの車を呼んで来れば良いのだ。滑川温泉から電話する手もあるが不確実だ。電話で呼びつけて、また姥湯に送れというのも変だ。そんなことをすれば、目玉の姥湯温泉入浴が、パーになる可能性もある。やっぱり姥湯まで歩いて直接お願いするのが筋だ。家形山から兵子までは、樹木で見通しは殆どなく、足元も悪い。パスしてもたいした不満は無いであろう。で、誰が?ってやっぱり俺か。
まあ、道路に出てしまえば、ヒッチハイクできるかも知れない。話が決まれば即決行。一人先行する。マジで走った。地図も歩きながら見る。前方の高い山は高倉山だ。当たり前だが姥湯へ、の標識は無い。標識に従い滑川を目指し急ぐ。13時41分舗装道路に出る。入口に高倉新道とある。姥湯へ直接下りるはずが、滑川を目指して降りることになるとは、まったく情けない。
同じ日、安達太良山でくろがね小屋に下りるところを石筵に下りてしまって、遭難騒ぎがあったと次の日に知る。大雑把に言うと方向が180度違っている。こちらは90度で、直ぐに気づいたのでまだましだった。吾妻山では雨にも当たらなかったが安達太良山は午後から雨とガスで大変だったようだ。高倉新道も途中の白浜や霧ノ平はガスがかかれば迷いやすいところで五色温泉に向かう可能性はある。そうなれば180度だ。他人事ではない。他山の石である。
霧ノ平からの山腹は紅葉が綺麗だったがゆっくり見ている時間は無い。とにかく急いで下る。途中の一ツ清水が渇いた喉にしみた。道路に出ると直ぐにRVが来た。車名はテラノか。訳を話せば、直ぐにドアを開けてくれた。4人連れの若い女性。席が一つ空いていたのはラッキーだった。乗って一瞬たじろぐ。ミニスカートの美女軍団。明らかに一般人ではないオーラが漂っている。なんでこんな山中に。聞けば、カレンダー製作のために、秘湯を回って撮影しているのだという。
兵子へ行くべきところを、高倉新道を降りたわけだが、今考えるとありえない勘違いだ。兵子直近から下る堀田林道と勘違いする2重の誤り。2.5万地形図を持っていながら、観光パンフの概略図さえも見ずに進んでしまった安易さ。他人様任せのお客様気分が招いた結果だ。2.5万地形図を見れば兵子は小ピークで、時間的にいっても兵子のはずは無いとすぐ分かるのだ。五色温泉に向かわなければ、どこを降りても姥湯へ繋がる道に出て、後は何とかなる、と考えてはいなかったのか。猛省である。
姥湯から取って返すもみんなは降りてこなかった。みんなより40分は早く降りた。よく頑張ったものである。だけど、手伝いといっても、俺ってお客さんなんだけどなあ。まあ、何はともあれ、待ち時間無く姥湯の露天風呂に案内できて一安心だ。姥湯は宿泊、休憩とも満室。8月に秋の予約を取るが曜日を問わず1日で満員になるというほどの人気の秘湯である。予定通り入れて良かった。先程の美女軍団が露天風呂からバスタオルを巻いて出て来て、若者は、大騒ぎ?・・・・。
姥湯コースは三階滝の下を通って、温泉に直接降りるようになっているが、土石流でやられたらしく、標識は残っているが道は無く、500m位前の駐車場へ降りるように変更になったようだ。そこに垂直と見えるような梯子がかかっていた。その上部も見るからに険しそうで、「いま降りた所で良かった」とみな口にする。結果オーライだった。露天風呂は荒れて脆そうな火口壁?に囲まれた沢辺にある。姥湯への道は、車がスイッチバックで進む個所もある。まさに秘湯である。しかし、車が入り、自家発電あり、では真の秘湯とは言えないのかもしれないな。
結果だけを見れば順調な山行だった。しかし、私が先行して車を呼んできた、ということさえ知らない人がいたのはおかしかった。負んぶに抱っこに肩車である。メンバーシップが問題だ。もっとも仲間内の山行に規律を求めること自体が間違っているのだと思う。物見遊山の延長線上なのだから、メンバーの力量以上のものを求めてはいけないのだ。たとえアクシデントが起こったとしても、リーダー陣で対処できる範囲内での山行とすべきである。孫悟空がきんとう雲に乗って、十万八千里を駆けたとしてもお釈迦様の手の内のこと。リーダー陣はそのような環境づくりに努めるということが大事なのであろう。専門的な集まりではないのだから。
猛省の山行だったが、所期の目的は達成した。その最大の功労者は、実は車に乗せてくれた美女軍団だ。それが無ければ姥湯の温泉に入れなかったかもしれない。姥湯まで歩いて約一時間。車で戻り10分位は見なければならない。待っているメンバーに不満が噴出するのは必至である。乗せてもらって、狭い車内で美女軍団のオーラにドギマギしてしまったが、それに助けられた山行だった。しかし、あと1分でも遅かったらこの出会いは無かったのだ。いま思えば奇跡の出会いだった。美女軍団に感謝感激。本当にありがとうございました。
おんぶにだっこに肩車(;'∀')
山の会に入っていないので
連れて行ってもらうってのがよくわかりませんが
リーダーさんはガイドさんではないのだから
お客様状態の方にはお金払ってもらって下さい
美女軍団がさらに超美女に見えたでしょうね 〜
おはようございます。
山の会でも何でもないんです。職場の人だけだったんです。山登りそのものが初めての人もいたようで心細いので私を呼んだ、ということなんです。私は、その辺を2回歩いていたもので。何かあった時、菜っ葉の肥しくらいにはなるだろうと思ったのでしょう。ところがこっちは秘湯姥湯狙いで”お客さん”気分。あんまり役に立ちませんでした。
間違いやすいというか、行く前に絶対行っちゃだめと思っていたのに、漫然とくっついて行ってしまった猛省の山行です。
大した戻りじゃなかったんで、戻ればどうってことなかったんですが、美女軍団との奇跡的な出会いも有って忘れられない山行です。
今日は予定通りラッセル訓練に行って来ます。どうなりますか。
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