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涸沢のテント場は、赤や黄色の鮮やかな色のテントで彩られている。シャッターチャンスを狙うカメラマンや出発の準備をしているグループ、朝食を食べているグループなど、朝の涸沢は、実に様々な姿を見せる。たしかに涸沢の紅葉はすばらしいが、カールの広さに比較して、紅葉の面積が少ないのが気になる。朝早いため、カールの底まで日が当たらずに、影になっているのもマイナスだ。あちらこちらと、場所を変え、時間をかけてビューポイントを探せ、ということであろう。
パノラマコースは渋滞である。ロープや鎖の下がる箇所で詰まっているのである。鎖場を一人一人、通過しているのだから時間がかかる。パノラマコースの名前はロマンチックだが、山慣れない者にとっては、なかなか厳しいコースなのである。以前、何でもない所で滑り落ちた若い女性を見たことも有る。そのうち列が、ピクリとも動かなくなって、ザックを降ろして休む「余裕」である。
越後の山を歩いている者にとっては、なんでこんなところで、と思うような鎖場ではあるが、さまざまなレベルの人が登っているのだから、それはやむを得ない。しかし、パノラマコースの眺めはすばらしい。まず、涸沢全体を俯瞰出来るのが良い。日の光に、まぶしいような、稜線とカール。小屋の赤。カールの縁を彩る紅葉。天を突き刺す槍ヶ岳。これらがいっぺんに楽しめるのである。
あんまり混んでいるので、屏風の耳までは登らずに、途中から戻った。若い女性の「素晴らしい」という華やいだ声。登る身体が弾んでいる。すれ違って、思わず「上に行くともっと良くなるよ」と声をかけた。後でわかったことだが、その人は私が良く閲覧するHPを開設している人だった。彼女とは白馬でもテントが隣同士というニアミスをしたことが有り、その奇遇に驚いた。顔も見ていて言葉も交わしているのに覚えていないし、その素性も何も知らない。不思議な縁である。
屏風への分岐には、ぞくぞくと登山者が集まってくる。長居は無用と、早々に上高地を目指した。最初の目標である徳沢へは、慶応尾根を越えて、奥又白沢までトラバース気味に進むのだが、足下はゴロゴロとした岩の道で、ピッチは上がらない。徳沢で大休止して、次の目標である明神小屋を目指してひたすら歩く。マイペースの私を、ドンドンと追い抜いていく。そうしないと、下山の渋滞に巻き込まれてしまう、という強迫観念におそわれているのだろうか。ガッガッと、靴音を鳴らしすごい勢いで迫ってくる足音は、鬼気迫る感じである。だが、私は、かたくなに自分のペースを守って歩いた。山行の余韻を味わいながら。
写真左:モルゲンロートに染まる奥穂高岳
写真中:紅葉の先に連なる穂高北尾根
写真右:渋滞パノラマコース 穂高には人々を惹きつける何かが有る
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