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1)「令和7年夏期における山岳遭難の概況」の概要
今夏の全国の遭難件数は808件、遭難者数は917人で、これまでの最高だった令和5年(738件、809人)を上回った。一方、死者・行方不明者は54人で、これは過去14年間の平均値と同じである。
遭難の態様を「道迷い」「滑落+転倒+転落 」「病気+疲労 」「その他」にまとめてコロナ禍前との比較で見ると、道迷いが減少傾向であるのに対して、滑落+転倒+転落 と 病気+疲労 は大幅に増加している。なお、年間を通して見た場合は、道迷いと病気+疲労の順位が逆転する。道迷いは都市近郊の低山に多く、春と秋に多発する傾向があるためである。
年齢層別に見ると、60歳以上が遭難者全体の45%で、これは過去14年間の平均値と同じである。年間の場合のこの割合は50%である。
都道府県別に昨年からの増減を見ると、遭難者数が大きく増加したのは日本アルプスを擁する長野県、富山県、岐阜県、山梨県の4県と北海道、山形県、群馬県、新潟県、逆に大きく減少したのは静岡県である。死亡・行方不明者については、富山県が0人から9人に増加する一方、長野県は16人から6人に、静岡県は7人から0人に減少した。
2)県別の情報
長野県:信濃毎日新聞のウェブサイトに下記の記事(9月10日)があった:
遭難者が過去最多となった背景について県警山岳安全対策課は「好天が続き、特に北アルプスで登山者が絶え間なく訪れた」と指摘する。疲労による遭難については「持参した水分が不足していた事案が多かった」と分析。
富山県:チューリップテレビのウェブサイトに以下の記事(9月6日)があった:
県警のまとめによりますと、ことしの夏山(7月・8月)での遭難件数は90件(前年比+25)で遭難した人は97人(前年比+27)といずれも前の年を大きく上回りました。県警は、7月から好天が続き登山者が増えたことが要因とみています。また遭難した人のうち亡くなった人は9人で、去年がゼロだったのに対し大幅に増加しました。県警は致命傷につながりやすい転落や滑落が増えたことが要因のひとつとみています。
群馬県:上毛新聞電子版に以下の記事(9月26日)があった:
7、8の両月に群馬県内で起きた山岳遭難は42件(前年同期比12件増)で、直近5年間で最も多かったことが25日までに、県警のまとめで分かった。熱中症の症状から動けなくなる例が急増し、今夏の酷暑が影響したとみられる。
山梨県:県警察本部から今年7月分までの遭難の詳細が公表されている。昨年7月と比較すると、富士山で3人から0人に減少した一方で、南アルプスで8人から20人に増加している。
静岡県:県警察本部が作成した「令和7年夏期における山岳遭難の概況」によれば、富士山の遭難者が57人から32人に、死亡・行方不明者が5人から0人に減少した。入山規制や安全教育に大きな効果があったということのようである。
3)コメント
遭難者数 = 入山者数 × 遭難率 という式に即して考えると、今夏は梅雨明けが早く、その後も比較的好天だったために、入山者数が昨年より多かったのだろう(具体的な数字はないかもしれないが、現場の感覚として)。遭難率を高めた要素としては、猛暑の影響が指摘されている。
猛暑であることは分かりきっている。その中で登山のような長時間の野外活動を敢えて行うのであれば、それなりの覚悟と準備が必要である。水を十分に持つのは当然だが、それ以前に平地ないし低山で暑熱順化を行い、稜線までの急登は早朝の涼しい時間帯に行う等の行程上の配慮も必要だろう。それをしない・できないということであれば、特に高齢者の場合は、夏山登山は諦めるということも考えるべき状況なのだと思う。
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