先日の山行での事。
稜線を歩いていたら「ピー」と笛の音が長音で聞こえた。
鹿の鳴き声と聞き間違えたかとも疑ったが、気になって耳を澄ます。
続いての音はなかったが、一応念のために「ピッ ピッ ピッ」と短音で返した。
…無反応。
イヤーな気がするが暫く注意が必要だなと気にしながら先へ進む。
以前も同様に山中で笛の音を聞いたことが何度かある。
その時も短音で返したが無反応だった。
暫くすると先程より明確に笛の音が聞こえた。
音の発信源は先ほどから移動しているようだ。
どうやら登山道の進む先の方から聞こえた。
先へ進むと、女性の単独登山者に追いついた。
ザックのショルダーにはオレンジの笛が取りつけてある。
追い越す際に
「先程、笛吹きましたか?」
とたずねると、少し躊躇した感じで
「ハイ、吹きました。…熊が出ると怖いので。」
との返事。
お話をしようかと思ったが、正直なところ自分の気持ちに負の感情が強く出たので、
「そうですか」
とだけ答えて追い越してその場を離れた。
遭難者が居るかと神経を尖らせ、自分自身に向けるべき注意力を減らしてでも周囲に注意を払って緊張感を持って行動したのが馬鹿々々しい。
はっきりと苛立ち、腹立たしい気持ちを感じたが、やはり伝えたい思いがあったので行動に移した。
笛を取り出し力強く吹く。
「ピッ ピッ ピッ」
「ピッ ピッ ピッ」
「ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ」
三三七拍子だ。
彼女にハッキリ聞こえたハズだ。
個人的解釈かもしれないが登山での笛ってのはエマージェンシーコールだと思う。
クライミングなどではビレイの合図で笛を使う場面があると聞いたことがあるが、そのような場所から離れた山中で笛の音が聞こえたら、遭難者が助けを求めているのかと心配する事が多いのではなかろうか。
私はそうだった。
したらば、その笛の音に最大限の注意を払い、自分自身の行動に気を付ける以上の負担が掛かるワケだ。
「何か笛の音したけど、気にしなくてイイんじゃね?」
なんて感覚は登山者として失格だと思う。
笛の音には神経を尖らせる程の影響力があると思う。
それを安易にピーピー吹かれたら、周りはたまったもんじゃない。
熊鈴落としたとか、ラジオ壊れたとかで熊避けの手段を失ってしまい、どうしても笛を吹きたいなら陽気な感じで吹くべきと思う。
三三七拍子吹く余裕のある遭難者は居ないだろうからね。
自分もまだまだ勉強中で、自身の行動に至らない点が多くある。
フォールラインを意識して他人とライン上に入るタイミングを極力減らすとか、ヘリに手を振らないとか、キジ撃ちに行く時はザックだけ登山道に置き去りにしないとか、物の本には書かれていないお約束を勉強中だ。
まだまだ、気づいていないお約束事がたくさんあるハズだ。
自分の行動が他人にどのように伝わるかをイメージしながら一つ一つ学んでいきたいと思う。
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