アメリカの大学ではグレード・インフレという現象があるそうです。授業料が高い(年間500万円というところも珍しくない)こともあって、低い成績を付けると学生から文句をつけられるばかりか、訴訟まで起こされかねない。そうなると厄介なので、出来の悪い学生でも甘めに成績を付けてしまう。そのため全体に成績が上がり気味になる、そういう現象をグレード・インフレというのだそうです。
それにならっていうならば、私はヤマレコの山行記録では、一部で「グレード・デフレ」が起きているように思います。距離も長く、上下も激しく、技術的にも簡単でない。非常に難度の高いコースを歩きながら、レコの種類は「ハイキング」になっている。そんな記録を見かけることが多いように思うのは私だけでしょうか。
少し前のことですが、夏場に剱岳の早月尾根を日帰りで往復した記録が「ハイキング」になっているのを見てびっくりしたことがありました。最近では「日帰りで槍ヶ岳」とか、「日帰り越後三山縦走」が「ハイキング」となっているのも見かけました。まだ完全に無雪期とは言えない時期だというのに。「雪山ハイク」にも同様の傾向がみられるように思います。ためしに、標高がありながらスキーリフトで比較的高いところからスタートできる北アルプス・唐松岳に、今年のゴールデン・ウィーク中に登った記録13件を見てみると、6件が「積雪期ピークハント」、7件が「雪山ハイク」となっていました。
ハイキングというと、一般には「登山」よりは体力的にも楽で、安心して歩けるような場所に出かけることを言うように思うのですが、なぜ早月尾根の往復が「ハイキング」になるのでしょうか。理由は色々考えられます。レコを入力する際に、記録の種類を考えるのが面倒だから一律に「ハイキング」にしていることも考えられます。ハイキングでないとすれば「無雪期ピークハント・縦走」ですが、「別に縦走ではないし、頂上に登ることだけが目的じゃないからピークハントとは言えない」という理由で「ハイキング」を選んでいる人もいるでしょう。超人的な体力の持ち主で、常人にはきついコースでも、当人にとっては朝飯前なので、健脚自慢の意味を込めて「ハイキング」にしている人もいるかもしれません。他にも、「コースの長さ・きつさはともかく、日帰り軽装の山行なのでハイキング」という人もいるかもしれません。日本人らしい（？）「謙遜」の心で、自分にとって必ずしも「楽勝」のコースでなくとも、「いえいえ、私の山行など、大したものではございません」という意味を込めて「ハイキング」にしている方もおられるのではないかと思います。
しかし、理由はともあれ、私は山行記録の「グレード・デフレ」は良くない傾向だと思っています。もちろん、個人が趣味の山行をどう呼ぼうと、それは自由です。それに他人が文句をつけるのは下種なことだ、というのもわかります。さらに言えば、誰かが早月尾根日帰り往復山行を「ハイキング」にしていたからといって、皆がハイキング気分で早月尾根に出かけるものでもないでしょう。グレード・デフレに惑わされない判断力を持った人も多いと思います。ですが、多くの人が、様々な危険を伴う登山を「ハイキング」と呼ぶことによって、経験や技術が不足している人が、軽い気分で危険なコースに引き込まれる危険性は排除できないと思います。五月の連休、日帰り「雪山ハイク」のつもりで、軽装で八方から唐松に向かった場合、天候の急変がどういう結果をもたらすのかは、火を見るより明らかです。いや、軽装でなくても天候が急変すれば常に遭難の危険がある。それが連休の北アルプスでしょう。
山の世界に限らないのですが、近年の日本では、室温から湿度の管理、食品衛生でも学校のいじめでも何でも、リスクや不快なものはすべて管理できるはず、無菌室のような環境が当たり前、という風潮が強くなっていると感じています。近年盛んになったトレール・ランニングにしても、山でのリスクを相当程度「マネージ」できる、と考えるからこそ軽装で体力の限界に挑むことが可能になるのだと思います。こうした考え方は、コントロールできないリスクというものをあらかじめ排除したうえで、「効率性」や「達成した結果」を重視する、いわば「都会の思考様式」を山に持ち込むものといってもいいでしょう。厳しい山行を「ハイキング」と呼ぶことにも、リスクを過小評価する傾向がある点で、別の意味で「都会的思考様式」の産物といえるのかもしれません。
しかし、山登りの相手は大自然です。自然界は、本来管理されたものではなく、様々な危険に満ちているわけです。山に登るということは、普段の管理された、制御された環境を離れて、人間にとって何万年もの間あたりまえであった環境――つまり、人間が自然の都合に適応するしかない環境――に戻る、ということでもあります。その意味で、山に登る際には、やはりそれなりの「畏れ」というものがあってしかるべきでしょう。
山行記録の分類など、細かいことと思われるかもしれませんが、リスクを軽視した山行はどこかで手痛いしっぺ返しにあうのではないか、と懸念しています。自分の山行を振り返ってみて自戒するとともに、あえて苦言を呈する次第です。
はじめまして。おっしゃる通りです。自分で地図やガイドブックで調べるのが基本ですからね。その上でネット関係を見る。これはあくまでも参考にと言うことで自分の力を基準に考える。
進むか撤退か？迷ったときは山では絶対に撤退を主張する私です❗
同感です。
ハイキングは、最高到達点2000ｍ未満ということなので、2000ｍを超えたら無条件にハイキングではないことになります。
2000ｍを超える山に行ってるのにハイキングを選択したら警告を出すように、ヤマレコのシステム（プログラム）側で対応出来そうな気もするのですが..
難しいのかな？
ご存知の方も多いとは思いますが、FAQには下記の様に書かれています。
ー 以下 FAQより （6/21：省略した所も記載しました）−
4. 山行記録の登録
Q. 私の記録はどのジャンルになるのでしょうか？
A. ジャンルについては個々の方の判断でつけていただくことを想定しています。客観的な定義を知りたい場合は、kamog様にジャンル分けの定義を作っていただいていますので参考にしてみてください。
■山行ジャンルの区別
http://www.yamareco.com/modules/xsns/?p=topic&tid=38
kamog ヤマレコに登録する時、山行ジャンルをどれにすればよいか迷ったことはありませんか？
ヤマレコの前身であるカモレコ（カモの会内で使っていた山行管理システム）では、以下のように区分をしていたと思います。
この区分は日本勤労者山岳連盟の遭対基金（現在は特別基金と名称を変えている連盟所属の会員に適用される山岳共済保険）がその基になっております。
「ハイキング」の定義
・日帰り＆一日のコースタイム６時間以内（昭文社登山地図のタイムで休憩含まず）＆一般登山道（白馬大雪渓などは一般道に含む）＆最高到達点2000ｍ未満 ※すべて満たすことが定義ですね。
「無雪期ピークハント・縦走」
・上記ハイキング以外の無雪期登山
「積雪期ピークハント・縦走」
・雪稜、雪壁、アイスクライミングを除く歩行中心の雪山
「フリークライミング」
・複数ピッチを除くゲレンデクライミング。ボルダリング含む。
「アルパインクライミング」
・マルチピッチ（複数ピッチ）を原則としたクライミング。ロープ使用の雪壁の含んでいます。
「沢登り」
・道を外れ遡行自体を目的としたもの。最近のキャニオニングも含みます。
「アイスクライミング」
・文字通り。アックスを使うことが前提でしょうか。
「講習・トレーニング」
・机上講習が主。どこかの団体が主催する実技講習会は他のジャンルで登録した方がよいと思います。例えば、岩場のクライミング教室は「フリークライミング」や「アルパインクライミング」にして、タイトルに「場所（○○主催実技講習）」と記載した方が自然でしょう。
「その他」
・山岳会など山関係の団体が行った登山以外の企画（ってここに掲載する必要もないですけれどね）
なるほど、たしかにそうですね
英語のハイキングはトレッキングも含む登山全般だと考えられますので、かなり幅があってレベルが高いものも含まれると思います。ですので、山と高原地図にあるルート（つまりトレイルがある）程度ならほぼハイキングの範疇ではないでしょうか。
ピクニックなどの易しい区分があれば解りやいのかももしれませんが、ヤマレコの成り立ちからして本来はマウンテニアリングやマウンテンクライミング集団のレコ収集を目指していたことを思うと仕方が無いのかもしれませんね
と記載したところでヤマレコのQAを確認するとハイキングの定義は
「日帰り＆一日のコースタイム６時間以内（昭文社登山地図のタイムで休憩含まず）＆一般登山道（白馬大雪渓などは一般道に含む）＆最高到達点2000ｍ未満
※すべて満たすこと」
でした。
tanno1967さんのご意見が正しいようですね
私も区分に気を付けようと思います
グレーディングをどのように考えるかは人それぞれだとは思いますが、ヤマレコでの掲載基準として定めている以上、山行記録を載せる際はルールに従うべきでしょうね。
それはそれとして、（おそらくtanno1967さんはこちらが言いたかったのだと思いますが）「都会の思考様式を山に持ち込むもの」という、山で起こるすべてのことを管理できるような考え方が蔓延しているのは確かな気がします。
それだけでなく、事故の際はまるで救急車を呼ぶかのように、「『誰かが』すぐにでも助けに来る『べき』だ」というような、およそ昔では考えられないような思考を持っている方も時折見受けられます。これも『都会的思考様式』の産物ではないでしょうか。
また、過去のヤマレコでも、「ドクター」ヘリにホイストをさせようとしたり、山岳飛行をしろとか、果ては夜間に飛べとか、まるで当然の要求のようにコメントしている方がいらっしゃいました。
これらも「物さえあれば問題は解決するはずだし、物があるなら要求に応えるべきだ」という、典型的な都会的思考様式のひとつなのでしょう。
僕も最近ハイキングと登山はどう違うのか？と聞かれたことがあって調べて見たのですが、日本語でのハイキングは、確かにこれまでは「ハイキング気分」という言葉が示すようなものでした。しかし、英語話者に英語のハイキングの意味を聞くと、ロープを使うレベルの登山がクライミングで、そうじゃないのは全部ハイキング、という概念なのだそうです。そうなると、北アルプス全山縦走も早月尾根も道を歩くならハードなハイキングなんですね。近年は、そういうアメリカ帰りの人の言葉づかいの影響も大きいのかもしれませんね。そもそも外来語の概念は、結構変わりやすいと思います。パンツといえば、昔は下着でしたが、今はズボンのことらしいじゃないですか。という感じなのかな。
ヤマレコのQAが何によるのかはわかりませんが、日本のどこかの権威の定義なのかな？
tanno1967さん はじめまして
人によって言葉の使い方が違うために、それぞれの記録をしっかりと見ていく必要がありますね。
何人かの方がご紹介をされているように、日本語と英語でもハイキングの範囲は異なります。
権威ある分類というほどのものではありませんが、５県でやっている山のグレーデイングの難易度にあわせて、
グレードＡ→「ハイキング」
グレードＢ〜Ｅ→「ピークハント」
「ハイキング」＋「ピークハント」＝”hiking”
グレードＥを超える→「クライミング」
と言葉を使い分けるのが一番いいと思います。
もっとも、ヤマレコの規則（６時間以内）に従うなら、山のグレードの1A,2Aと3Aの一部のみが「ハイキング」に該当することになります。しかし、外秩父七峰ハイキング大会（６Ａ）もハイキングと呼んでいますので、Ａグレードをすべて「ハイキング」にしてしまってもいいでしょう。
ohana36さん、tuchyさん、nanfutsuさん、microlightさん、yoneyamaさん、コメントをいただきありがとうございました。
ohana36さんの言われる「迷ったら撤退」というのが、自然の威力と対峙して安全を守るための黄金律なのでしょうね。なかなか自分では実践できていませんが…
tuchyさん、ヤマレコで基準が設定されていることは知りませんでした。お教えいただきありがとうございました。基準は私の感覚には割と合っている感じです。まあ、北横岳ロープウェーに乗って坪庭を散策した、というような場合は2000ⅿ以上でもハイキングというほかないでしょうし、あまり厳密にとらえることもないかもしれませんが。
nanfutsuさん、ヤマレコがclimbing, mountaineeringの記録を集めるために始まった、というのは知りませんでした。今は色々な人が使うようになっていて、人によってそれぞれ感覚も違うので、交通整理が難しくなっている、という面があるのかもしれませんね。
microlightさん、その通りなんです。私自身がそうなのですが、気が付くと、分刻みで行動計画を立て、効率性と何を達成したかを重視する山行をしていたりする。それも悪くないけれど、そもそも山に行くのは、都会と同じことをしに行くためだったっけ、なんて思ったりするのです。
Yoneyamaさん、ハイキングの意味が英語の影響で変わってきている、ということもあるのかもしれませんね。これはnanfutsuさんも言われていた点でした。ただ、山登りの形は国によってもかなり違っているので、外国の区別をそのまま日本に持ち込んでもやはりうまくいかない面は出てくるんだろうと思っています。
確かに英語のhikeは、四つん這いにならず、ザイル(あれ、最近はこれもロープでしたか！）やアイゼン(クランポン?）、ピッケル(アイスアックス?）を使わない場所ならなんでもカバーする、という面はあると思います。ですが、こうした分類を設けるそもそもの目的は、レコの概要だけ見た人が大体どんな形の山行なのか想像しやすくすることであって、その目的のためには、春の丘陵ハイクから早月尾根日帰りまで全部ハイキングでまとめてしまってはやはり困ると思うのです。個人的には「無雪期登山」と「軽登山・ハイキング」のような区別にすればよいと思うのですが、そう簡単にはいかないのかもしれません。
用語法が難しくなっているのは、恐らく山登りの形自体が多様化していることもあるのかもしれません。日記でも触れたトレランしかり、スポーツクライミング然り。多様な楽しみ方ができるようになったのはいいことでしょうが、もしその陰で、危険に対する心構えや自然に対する謙虚さが失われかけているのだとすれば恐ろしい。それが私が一番言いたかったことでした。
いずれにしても多面的な角度からそれぞれに考えさせられるコメントをいただきありがとうございました。
tanno1967さん
はじめまして。
山行の分類に関しては私も以前から疑問を抱いております。
ヤマレコでは個人の判断による「自己申告」ですから、同じ山（ルート）や、同レベルの山行がバラバラに分類されるのは当然ですよね。だからレコの分類欄もほとんど役に立っていないわけです。
となると、もう、誰が正しく誰がインチキで誰が見栄で誰が謙遜か…なんてそもそも無駄な議論になります。
そこで私が提案したいのは、「システムにより機械的に分ける」です。機械的は自動的と言い換えてもいいでしょう。
すなわち、次の各要素をシステムのほうで判断し、分類欄を決めてくれるのです：
�〇劃困良弦發蓮�
��登山口（orスタート地点）の標高は？
�Ｎ濱冑弦發蓮�
�ど弦盧后牴５�離（つまり斜度）
�ド現�CTは？
��積雪期か無雪期か残雪期か？
…などなど（他にも要素はあるかもしれませんが、以上は例としてです）。
で、以上の要素から、例えば「積雪期ピークハント」という「答え」をシステムが勝手に出すのです。これなら「一般化」された分類になり、個人の技量などには無関係で、公平だし、自分で判断に迷うこともなく、一律の基準で出てきます。なのでどこからも文句は出ないでしょう。
あと、ついでにその山行の難易度を最高Aから最低Fぐらいまでランク付けしてくれればなおよしです（というかそっちのほうが知りたいかも）。
なお、以上はあくまで「通常の登山」(軽い/ハード関係なく）の話です。純粋なクライミング（もしくはクライミングが大半を占める山行）、逆に安全すぎる近隣散策などはそもそも「種目」が違うので、それこそ個人が「手動」で判断可能だと思います。
それから、英語がどうのと言う件ですが、そもそも「ハイキング」の英語でのニュアンスがどうか？なんて言っても仕方ないと思います。あくまで「日本語」としてのハイキングですから。
じゃぁその日本語のハイキングですが、ピクニックとほぼ大差ない語感ですよね？ 例えば家族で低い丘を越え、河原に行ってお弁当を食べた…これってハイキングともピクニックとも言うでしょう？
だから、ヤマレコの「ハイキング」という分類自体廃止して、ピクニックという分類に変えればいいのです。それなら早月尾根登山を誰もピクニックに分けたりしないでしょう。
ヤマレコのFQAに基準が書いてあるとのことですが（私も知りませんでした）、読んでも分かりにくいし、2000M以下は軽いほうに分類されるなら、谷川岳西黒尾根も軽くなってしまいます。あれも意味ないです。
だから、やはり上述の要素から機械的に出すべきだと考える次第です。
初めまして
興味深い内容だったのでコメントさせて頂きます。
私は、めんどくさいので何も考えずにハイキングを選択していたものです。
最近はレコではなく、登山届けを出す為に計画書として使ってたので余計に…
山を含めアウトドアは自己責任の世界だと思っています。
好きな事をしてるので他人にどれだけ迷惑が掛からないようにするかを考えて、行動するものだと認識しています。
なので、ネットの情報を丸っと信じる事はありません。
それこそ、自然を相手にするので刻一刻と状況は変化していくものですし
皆さんのレコを拝見させて頂く時もルートの状況を見る程度です。
崩落とか
確かに、何でもかんでもハイキングにするのは問題かもですが
情報を取捨選択して処理して判断するのは読み手の方なのでは？
ハイキングじゃないコースをハイキングだと認識してしまうのは、その人の危機管理能力、若しくは経験が足りないのだと思われます。
分類、云々よりそれぞれの経験、体力とかに合わせた登山をするように注意喚起する方が有用かと思ったりもします。
でも、たぶんそういう人に限って読まないし気にしないんでしょうけど(笑)
なので、何か起こってもそれは自己責任です。
備えて、自分の出来る限りの事をして事故に合うのと何もせずに事故に合うのとでは全く意味が違ってきますからね。
あとは、高齢の方は人の意見に耳を貸すべきですね。
遭難、事故の多くは高齢の方ですので
遭難、事故はいつでも、自分に起こるものだと思って行動するのが一番です。
論点ズレましたがコメントさせて頂きます。
tanno1967さま
はじめまして。
以前はレコの内容とジャンルがそぐわない事にイラッとした事もありましたが、最近は全く感じません。今敢えて私がユーザーさん達にお願いするとすれば…普段ランをやっている人が少しでも走ったのなら、それはトレイルランにして欲しいなぁという事ぐらいでしょうか。
ジャンル選択にヤマレコの基準があったとは知りませんでした。雪の有無しか考慮していませんでした。ユーザーである以上、今後は基準を尊重するよう心がけます。考える機会を与えて頂き、感謝致します。
ところで…
”様々な危険を伴う登山を「ハイキング」と呼ぶことによって、経験や技術が不足している人が、軽い気分で危険なコースに引き込まれる危険性は排除できないと思います。”
と本文中に書かれておられますが、どうでしょうか。 ”経験や技術が不足している人が、軽い気分で危険なコース” に立ち入る事をたしなめ、自覚を促す事の方が重要なのではないでしょうか。”ハイキング”と書いてある事によって、自分が歩くルートが危険であるかどうか判断できない事も含めて、です。
登山のキャリアが30年もある方に対して甚だ失礼とは存じますが、”登山は自己責任において行う（と私は信じております）”という意味を一度じっくりと考えてみてはいかがでしょうか。
この部分以外については特に何も申し上げる事はございません。上に指摘した部分についても、本意ではないと信じたいものです。
Shokunpapaさん、tsukadonさん、megu1128さん、tokumuraさん、コメントをいただき、ありがとうございました。
megu1128さん、tokumuraさんが言われる通り、山登りはまさに自己責任の世界なので、山登りのグレードについても、やはり自己申告、自己判断が原則だろう、と思います。山の面白さの一つは、自分の判断で自然と向き合うところにあり、すべてのコースが一律にグレードづけられ、「定食化」、「標準化」されてしまっては、山登りの魅力の本質的部分が欠けてしまう、と考えるからです。
私が申し上げたかったことの根本は、「誰も間違いを起こさないシステムを作れ」、ということではありませんし、「レコを書く人間はそのグレーディングについて責任を負うべきだ」と考えているわけではありません。私が本当に申し上げたかったのは、むしろ登る人の心構え論です。心構えには当然、自己判断、自己責任ということが含まれます。それに加えて私としては、山に対する「畏れ」の気持ちが必要である、と主張したいところです。(自分はそれを常に意識できている、ということではありませんので念のため）。
ではなぜ正面から心構え論を説かず、「グレード・デフレ」を問題にしたのか。それは、「グレード・デフレ」が、山に対する「畏れ」の欠如を反映している場合がある(常にそうだ、というわけではありません！）と私が考えるからであり、また同時に、グレード・デフレが、（特に山を始めたばかりの方々の間に）山への「畏れ」を欠いた姿勢を助長してしまう危険がある、と思うからです。
日記の本文でも書いたように、グレード・デフレは色々な原因でおこります。megu1128さんのように、「面倒だから」という理由でハイキングで統一されている場合もあるでしょうし、日記の本文でもそうした場合を含め、色々なケースがありうることに触れています。ですが、中にはリスクを無視している、という意味で「畏れを著しく欠いているのでは」と憶測したくなるケースも一部見受けられましたので、あえて問題提起させていただきました。
また、山登りは自己責任が基本で、そこにこそ山登りの魅力があるわけですが、誰でも山を始めたときは、ネットを含め色々な情報に頼ります。ネット情報の取捨選択を含めて確かに自己責任ですが、仮にヤマレコ全体にグレード・デフレの傾向があったような場合、その影響を受けてしまうことはありうる、と私は思います（だからレコを書く人は責任をとれ、などという気持ちは毛頭ありませんが）。一部の記録にグレード・デフレがあっても大した問題ではないでしょうが、もしヤマレコ全体にそうした傾向が広がることがあるとすれば(仮定の話ですが）望ましくない、と思うのです。
その意味では、Shokunpapaさん、そしてtsukadonさんがしてくださったようなグレード標準化のご提案にも十分意義があるだろう、と思います。tsukadonさんのご提案は、もし導入されれば、直前の段落で触れた問題についてはすっきりした解決になるだろうとおもいますし、Shokunpapaさんがご提案くださったシステムについても同様です。Shokunpapaさんがご紹介くださった５県共通のグレーディングについては、私は５県で共通にやっていることを知りませんでした。(お教えいただきありがとうございました）。こうしたグレーディングが導入されたのも、恐らくは、近年の登山ブームに対応して、改めて登山者に自分の実力にあった山登りをしてもらうよう促そう、という趣旨なのだと思います。各県としても遭難事故の対応等に頭を痛めているということなのでしょう。
いずれにせよ、大切なのは安全登山です。私もせいぜい山への畏れをもって安全な登山に心がけたいと思います。
今回の日記については、タイトルも敢えて挑発的にし、問題提起をさせていただきましたが、色々な立場の方から、予想以上の反響があり、とても嬉しく思います。文は人なり、と言いますが、温かいお人柄がにじみ出たような文章もあって、微笑ましい気持ちにもなりました。改めて、コメントをいただいた皆様にお礼を申し上げます。
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