40年ほど昔の話、梅雨時で誰も降りない土合駅、一人せっせと地上へ登って行く。
目指すは蓬峠、避難小屋も独り占めだ。
誰も居ない静かなはずの小屋なのに、夜中はドタバタ鼠の運動会。
次の朝、冴えない天気に気分も落ち込み、高みは目指さず来た道を下りて行った。
左目の下にぽちっと出っ張りがあり、ちょっと痛痒い。
変な虫に刺されたかなと思った。
土合駅のトイレに鏡があったので、のぞいてみた。
茶色い突起がある、近づいて見ると突起からぱやぱやと足が生えている。
おまけに動いている。
「虫!」これは大変だ、虫は私の皮膚に頭からめり込んでいる。
放っておけば虫は私の体に入り込み、悪さをするのではないかとゾッとした。
小さなお尻をつまんで引っ張っても、皮膚が伸びるだけで容易には取れない。
これ以上の侵入を阻止するには生かしておく訳にはいかない、そこでミニ裁縫セットのはさみを取り出し、突出している虫のお尻をちょん切った。
消毒して、絆創膏を貼り、電車に乗る。
住まい近くの医院は診察時間が終わっていたが、無理にお願いして診てもらった。
あわてて白衣を着ながら入ってきた先生に事情を説明すると、「虫?そんなこと無いでしょ」と信じてくれない。
ピンセットでめり込んだ虫をほじくりながらも、「木の破片じゃないの?」と言う。
処置終了後、残骸を顕微鏡で見た先生が、「本当だ、これは虫のようだ」と言った。
それがどんな虫かは、先生も初めてだったのだろう、分からなかった。
それから数年後、家族4人で櫛形山へアヤメを見に行った。
アヤメ平のアヤメは鹿の食害を受けているようで、花は一つも咲いてない。
その日はテントを張って一泊した。
次の日は裸山の斜面にかろうじて咲き残っているアヤメを見てから家路に着いた。
お風呂に入った時に、あの時と同じような虫が左脇腹に喰らいついているのを発見。
すぐに近所の山好きな先生の居る医者に飛んで行った。
さすが先生はわかってらっしゃる。
「ダニだな」
すぐに看護婦さんを呼んで「珍しいから見ておきなさい」と面白がっている。
薬品でダニを麻痺させてから取り除くと言う。
嚙み口もきれいに取れ、まだ生きてるからとフィルムのケースに入れてくれた。
おかげでよく観察することができた。
図鑑で調べたところ、たぶん「ヤマトマダニ」だと思われる。
テント泊の時にダニは忍び寄ってきたのだろう。
皮膚の柔らかい子供たちにではなく、何故か私に喰いついた。
そして3回目ともなると、いつどこでだかも覚えていない。
やはり脇腹で、お風呂で見つけたときは「またか」と笑ってしまった。
喰いつきが浅かったのか、引っ張ったらすぐ取れた。
私の経験はこれだけだが、その後、夫は何回かダニに喰いつかれている。
どうしても笑ってしまうのだが、ダニを甘く見てはいけない。
後処理をちゃんとしなければ大変なことになるらしいから。
やだぁ
虫が多い時期になると
怖いのがマダニやら蛭やら蜂です
痛い!とか分かるならいいのですが
分からないうちに見えないとこを喰われると
気づかないこともあると思うんですよね。
単独行が多いので、ちょっと怖いなぁと
虫には敏感になりながらいつも登っています
近所に山好きの先生がいる病院が欲しいです
山好きの先生、もう引退しちゃったんですよ。
燕岳の診療所に毎夏入っていたというのですが、あちらでお会いしたかった。
蛭はタチ悪いですね。
あんな姑息な手口を使って血を吸うなんて許せません。
私もさんざんやられましたが、日本の山に蛭がはびこったら、山やめます。
虫の時期は防御アイテムで荷物が多くなりがちですが、やられてばかりもいられませんので、頑張りましょう。
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