高校生の時に初めてキャラバンシューズを買い、2足目に買った革靴を履き潰し、3足目は高田馬場にある山道具屋にて、その店のオリジナル登山靴を買った。
その頃(40年ほど昔)私は神田にある山道具屋に勤めていたにもかかわらず、なぜ他の店で山靴を買ったかというと、エーデルワイスに目が眩んだからだ。
清楚なエーデルワイスの鉢を店主が私の目の前にちらつかせるので、仕方がなかった。
登山靴とエーデルワイスの鉢を抱え、ウキウキとアパートに帰った。
しばらくは花を楽しんだが、終わってしまうと何か空しい。
日本にもエーデルワイスに似た花があると知り、見てみたいと思った。
エーデルワイスに一番似ていると言われるハヤチネウスユキソウは早池峰山へ登らなければならないので、少し遠い。
ホソバヒナウスユキソウなら谷川岳付近の朝日岳に自生しているらしい。
それなら夜行日帰りで行ける。
7月、土合駅より、暗いうちから白毛門へと登って行く。
薄明るくなってきたものの、ガスが濃くて嫌な感じの天気だった。
こんな日に登っても目的の花を見ることができるかどうかも分からない。
白毛門、笠ヶ岳を経て朝日岳へと、まったく視界のきかない中を、ただ黙々と歩いた。
山頂付近の岩陰に、ついにホソバヒナウスユキソウを発見した。
本当に咲いていた。
霧雨混じりの風が吹きつける中、白い綿毛に覆われた淡く小さな花が、岩陰でじっと耐えている。
鉢植えのエーデルワイスとは比べ物にならないくらい、凜とした美しい姿に魅入ってしまった。
帰りは来た道を引き返した。
もちろん「エーデルワイス♪」を口ずさみながら。
土合駅の地上ホームで電車を待つ間、ザックに座りひざをかかえ込んだまま、うかつにも眠ってしまった。
登り列車が入ってきたことにも気付かず、誰かが肩をたたいてくれたので慌てて列車に乗り込んだ。
やはり、山の花は山の中で咲いている姿がいちばん美しいと思う。
以下は余談だが、20年ほど前から山野草を買い集めて育てている。
高山植物も育てようとしたが、上手くいかなかった。
山で拾ったドングリや種を植えて育っているものもある。
なんだかんだと鉢の数は100を超え、マンションのベランダに所狭しと並んでいる。
以前は家族に邪魔物扱いされていたが、今、ベランダは私の自由空間だ。
「山の花は山の中で・・・」とは言ったものの、家のベランダで見ることもまた楽しい。
そろそろ山アジサイの花が終わろうとしている。
この次は、イワシャジンとイワギボウシの鉢。
ちゃんと咲いてくれるか、今年も楽しみだ。
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