アイスクライミングをしに行ったつもりなのに、
過半がラッセルというなかなか過酷な山行でした。
その一方で素晴らしい八ヶ岳ブルーを見ることができ、
爽快な気持ちになることができました。
参考:https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3882238.html
道中、若いリーダー(ぼくより身長が約マイナス8cm、体重マイナス7-8kg)と
交代でラッセルをしましたが、
リーダーがラッセルした後にぼくが踏むとずぶりと沈んでしまい、
結局セカンドなのに殆どトップと変わらない状況が頻回でした。
(写真1がリーダー、写真2がぼく)
そこで頭によぎったのが、「ラッセルはどのように行うと効率が良いのか」。
リーダーにその旨を尋ねると「なるべく抵抗を強めないようにする」とのこと。
歩行には主に8つの相があります(立つ側5つ、浮いている側3つ)。
ちょっと難しい話になりますが、以下に記してみます(写真3)。
【立つ側の足の相】
・Initial Contact(IC):踵で足を接地するとき
・Loading Response(LR):接地した足に荷重がかかったとき
・Mid Stance(MSt):体の重心が足の中心を通り過ぎるとき
・Terminal Stance(TSt):あしゆびで最後の蹴り出しをしようとするとき
・Pre Swing(PS):あしゆびで蹴り出して地面から離れたとき
【浮いている側の足の相】
・Initial Swing:足が地面から離れて地面から浮き、これから振り出そうとするとき
・Mid Swing:振り出した足が反対側の足を通過するとき
・Terminal Swing:振り出した足が最も前まで振り出したとき
歩くときに床に荷重が強くかかる力を「床反力」といいますが、
この床反力が最大のとき、歩くときの抵抗が最大になります。
雪上で床反力を増加させると考えられる要素は主に3つで、
・そもそも体重が重い:質量が重ければそれに比例して床反力は増す
・Mst、Mswの時間が長い:体の重心線と足の中心線が一致する時間が長ければ重力の影響をより受けやすい
・Tst、PSが強い:後足を蹴り出すときの力が強ければ、その分前足に強い力がかかりやすい
といった点が挙げられます。
つまり、足を小さく早く動かすことでラッセル時に
できるだけ足が沈みにくくするためには、
力任せに行うよりも細かく刻んだほうが良いということになります。
しかし一方で体の重心線と足の中心線が近ければ歩幅が小さくなり、
足の重心がより身体の重みを受けることになってしまいます。
「ん?」とお思いの方もおられるかと思いますが、
頭の中心と両足で構成する三角形をイメージしていただき、
両足が狭いほど頭の中心θが小さくなり短い底辺にすべての荷重がかかる一方で、
ある程度歩幅を広げて底辺を長くすればそれだけ荷重が分散される、ということです。
一方でクライミングで分散支点を構築すると、
30°と50°では荷重が1.05倍程度の差にしかなりませんが、
120°になると約2倍の荷重がかかってしまいます
したがって、歩幅が小さ過ぎても大き過ぎても荷重がかかって沈みやすくなる、
ということになります。
この相反する問題をリーダーはどのようにクリアしているのか。
経験がなせる技、と言ってしまえばそこまでですが、
どの程度の歩幅で、どの程度の力の加わり加減が至適なのか。
理論化することができればラッセルが少しは楽にならないでしょうか。
若い頃はラッセルする際にそんな事を考えたことはありませんでしたが、
これから衰えゆく肉体でそれでもラッセルを行うことを余儀なくされたとき、
少しでも消耗を抑えようと考えるようになりました。
この冬の宿題の1つにしたいと思います。
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