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ロードマップ上のすべてのポイントに、印がついた。
あとは、あそこへ逢いに往くだけ。
人間の身体は本当に不思議だ。
ひと捻りすれば、簡単に壊れる。
そして、心は同じ人間なのに、
壊れる前と後で、まるで別人の身体であるように感じた。
あたかも、ぼくの心が、他人の肉体に憑依したかのように。
ともあれ、新しい身体と折り合いをつけるべく、
ここ数週間は毎回テーマを設けながらお山を歩いてきた。
思ったよりも良い答えが返ってきたこともあったし、
思ったよりも良くない答えが返ってきたこともあったが、
最終的にはあそこへ逢いに往くだけの身体と心になったと思う。
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心身の仕上げに選んだのは、
八ヶ岳のバリエーションルートである、阿弥陀南稜、中央稜。
いずれも、季節問わず初級バリエーションルートとして名高いが、
今回は南稜の核心部をどのようにして登るか、というテーマを設けた。
その場所は、初冬になると中途半端に雪と氷が張り付き、
ベルグラ(薄氷)があって非常に悪い。
そして今回はまさにそのような状態を想定していた。
一応登攀具は持参したが、岩角以外にランニングビレイをかけられないし、
実質的にエスケープの時以外は使用しないと思っていた。
登ってみると、3週間前の両神で味わったような恐怖感は湧き上がってこなかった。
身体の調子がその時よりもさらに上向いていることもあるのだろうが、
フロントポインティングのアイゼンの先で岩にスタンスを取っても、無駄な力は入らない。
素早い動作はできないが、ひとつずつを淀みなくできる。
「絶対、大丈夫だ」
そういう気持ちが、久々に漲った。
そして、阿弥陀岳の山頂に立った。
気づけば、想定よりも1時間近く早く下山ができた。
ルートを示すテープやペイントが、
しつこいくらいにあちこちあったことも関係しているが、
重い冬靴で夏と変わらない時間で動けたことも、大きな収穫だった。
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今回、登山口の舟山十字路までのアプローチには、自転車を選んだ。
夜行列車で最寄りの富士見駅まで行き、そこから自転車で11kmの道程を走る。
この、ひたすら続く上り坂を、歩く速度に毛が生えた程度の速度で上がったが、
舟山十字路に着いた頃にはすでに疲労困憊状態。
こういうアプローチはもう二度とやらん!と思った。
自転車を電車で運ぶのに、輪行バッグというものを使う。
昔、いわゆる「チャリダー」をやっていたころには、
チャリ旅のついでに登山、などということをやってもいた。
その時代に活躍していた輪行バッグを、
何故か捨てずに押し入れに保管していたものを、
実に15年ぶりに引っ張り出してきた。
15年前、ぼくは23歳だった。
その頃の思い出というと、ほとんどろくでもないものばかりで、
嬉しいこととか、楽しいことなんて全然なかったので、
その鬱憤をぶつけるように、登山や自転車に没頭していた。
その頃の負の遺産のひとつとも言うべき輪行バッグを、
今こうして使用することに、深い感慨を覚えている。
15年経ったぼくは、申し分なく充実した生活を送っているよ、
23歳の自分へ。
motchさん
またあのお山に行くのですね
あっという間 だったでしょうか
ようやく だったでしょうか
お山は決して逃げないけれど
さまざまな理由でチャンスは逃げ去ってしまうもの
やはり意志があるところに道ができるのですね
motchさんは強い意志で再度スタートラインにつきました
それは傍目には奇跡をみるような早さでした
意中のお山と思う存分対話をしてきてください
いい汗をかいて、心地よい風に吹かれてきてください
良いお天気に恵まれますように
doppo634
>doppoさん
こんばんは。
本当にいろいろとありがとうございます。
あっという間とも、ようやく、とも形容しがたいですね。
長いとも、短いとも感じませんでした。
ただ、その時の課題をひとつずつクリアしてきましたし、
そうすることでしか進めませんでしたから。
またスタート地点に立てたことに感謝をしつつ、
トライ&エンジョイの精神で、
今度は最後まで楽しく歩きたいと思います。
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