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2022年01月22日 05:39未分類全体に公開

単独行〜白神山地・厳冬期

2022,01,15
元旦に引き続き、今日もまた白神岳へと足を運んだ。
先日と同じ登山口駐車場の1.5km程手前で積雪により行き止まりとなり、林道上に車を停め、車外へと出た。
夜明け前の真っ暗な空からは、パラパラと雪の粒が落ちてきては額のヘッドライトの明かりに照らされ、放物線を描きながら視界の外へと消えていく。
しかし、それ以外は風も感じられず、目の前に広がる暗闇の中には、穏やかな雰囲気を感じ取ることができる。
6時、登山装備を身に付け、ヘッドライトの明かりを頼りに歩みを進めるが、数十メートル進んだところで、早くも今日の装備の選択にミスをしたことに気付く。
林道は2週間前の元日より更に積雪を増し、足のすねまで雪に潜り込む深さとなっており、ワカンでは雪に足を載せた瞬間と体重を載せた時との2段階に沈み込む為、非常に歩きにくく、スノーシューを選択しなかったことを後悔した。
一時間ほど歩き続けると、見慣れた小さな三角屋根の記帳所が現れ、本日の入山届けを提出して山道へと進んだ。
しかし、白神岳に続く深い雪に覆われた山道は、既に跡形もなく、急な斜面に通された山道は、一見してただの斜面となっており、雪を踏み固めながら足場を形成し、先へと進む。
先日登った蟶山への急登の尾根も積雪を増しており、膝の高さから股下程度の雪を掻き分けながら登って行くが、降り積もった雪に阻まれ、高度は遅々として上がらず、斜面でもがきながらも時間だけが過ぎて行く。
9時40分、息を切らせつつ、漸く蟶山山頂へと到着するが、このペースでは白神岳山頂へ到着しても日の入りまでに下山することは困難な為、白神岳への登頂はまたの機会とし、取り敢えず辺りの景色を観賞しつつ、時間が許す限り進んでみることとした。
そうと決まれば、もう焦る必要は無いので、蟶山山頂の雪を掘り、即席の椅子を作って一息つくこととした。
雪で作られた椅子の背もたれに腰を委ね、あんぱんを片手に水筒の熱いお茶を口に含む。
目の前にには真っ白な雪を纏った見渡す限りのブナの森が広がっている。
空からは、相変わらずパラパラと雪が落ちてくるが、気になる程ではない。
四季を通じて日々人知れず変わり行く白神の森の姿は、空に流れ行く雲のように、訪れる度にどれとして同じ景色は無く、森が生きている事を実感させられる。
そして風もなく穏やかな雰囲気が漂う厳冬期のブナの森に囲まれつつ、一人だけの心地よい時間が過ぎて行くが、少し肌寒く感じてきた為、雪の椅子から腰を上げ、また深い雪を漕ぎつつ尾根伝いに白神岳へと続く南東の方角へと進んだ。
積雪は更に増し、尾根上の斜面を覆う雪の吹き溜まりは、雪庇となって尾根から右手の斜面へと突き出ており、白くふんわりとした姿は、まるでスイーツにのせたホイップクリームのようだ。
この柔らかい新雪で出来た巨大なホイップクリームを四肢を使って這いずり上がり、更に雪を漕ぎながら先へと進む。
そして、10時37分、雪に埋もれた白神岳山頂まで2.5kmと記された道標の前に到着した。
この調子だと、あと3〜4時間程深い雪を漕ぎ続ければ,白神岳山頂に到着出来そうだが、その頃にはもう復路への体力も尽きていることだろう。
それにしても今日の白神の森は静かだ…動物達の鳴き声や雪に残された足跡さえも殆どなく、聞こえるものと言えば、ウェアに落ちるパラパラという雪の音だけだ。
見上げれば、真っ白な雪を纏った沢山のブナの枝が頭上に覆い被さり、灰色の空と共にモノトーンの空間を演出し、あたかも洗練された美術館を想わせる光景が広がっている。
青空の下での新緑や紅葉のきらびやかな森の姿も美しいものだ。
しかし、太陽の日差しがない厳冬期の森が見せるモノトーンの世界もまた、この時季にしか見られない心を惹かれる光景だ。
そろそろこの辺で折り返すとしようか…少々心残りだが、見上げていた視線を先程登ってきた復路の方向へと戻し、新雪に残された一筋のトレースを辿り道標を後にした。
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コメント

体験したことのない幽玄の世界!素晴らしい光景を、そして文を読ませていただき感謝ですscissors
2022/1/22 9:25
4080takaさん
お褒めの言葉をいただき、ありがとうございます(^_^)
今回は、白神山地の主峰「白神岳」には登頂なりませんでしたが、目を三角にして無理に登頂せずとも、白神の森に息づくブナ達が織り成す素敵な情景、そしてこのような嬉しい御言葉をいただき、早くも2022年の思い出深い山行となりました。
ありがとうございました。\(^-^)/
2022/1/22 12:17
はじめまして

"太陽の日差しがない厳冬期の森が見せるモノトーンの世界"、いいですね。時間を忘れて何時までも森中に居たい気分になり、性分でしょうか私も大好きです。

青空の下雪原の起伏に織り成す陽射しの陰陽や見上げた樹間の美しさもまた素晴らしいのですが、明るい光景の感動あっと言う間の興奮で疲れる気もしますね。

きっと私も日本海側の雪国に生まれ育った幼き頃の生い立ちが "日常的光景" に心が落ち着くのかも知れません。遠い故郷を思い出しました。

素晴らしい日記有り難うございました。
2022/1/23 7:36
tonkaraさん
コメントありがとうございます(^_^)
雪国にお生まれでしたか。
雪国の事情はよく御存知かと思いますが、私が住む秋田県も今季は特に積雪が多く、毎日のように降り続く雪に除雪が追い付かかず、日々雪とのせめぎ合いに四苦八苦しているところです。
さて、幼い頃から雪に親しみ、毎年まだかまだかと雪が降るのを楽しみにしていた頃から早数十年。
日常生活では困り者の雪も、やはり雪国に住み、登山を趣味としている私にとっては、ひとたび日常を離れれば、雪が降り積もる冬は毎年の楽しみの一つでもあります。
時間と共に移り行く光と雪が作り出す様々な情景の中、おっしゃる通り、真っ青な空の下にキラキラと輝く雪の姿も美しいのですが、日差しが無く白と黒とが強調される世界もまた、冬特有の心惹かれる景色の一つです。
幼い時に読んだ冬を題材にした童話の挿し絵を彷彿とさせ、懐かしくもメルヘンチックな世界に紛れ込んだかのような光景に癒されます。
嬉しいコメントをいただき、ありがとうございました。(^_^)
2022/1/23 10:55
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