2014年10月31日付けGoat's diaryに見られる地名 : (再考)Radium Hut、Radium Spring Hut、Radium Riverでは、ラジウム小屋に関する資料2点から、ラジウム小屋が現在の石楠花谷にあったいう見方を示しました。今回、この所在地について新たな資料を得たため、それによる検討を行います。
「山田村郷土誌」に掲載された内務省大阪衛生試験所の文書では、鉱泉の湧出地を兵庫県武庫郡山田村ノ内上谷上村字大岳八番ノ下川中としています。
この所在地がさす場所を探していたところ、「神戸市固定資産(土地)地番参考図」(以下「参考図」)というものがネット上に公開されていることを知りました(注1)。北区の参考図を見ると、山田町上谷上字大岳を対象とする箇所があり、全部で15枚の図が掲載されています。このうち図50-K16に山田町上谷上字大岳8-1と記された区画があります(注2)。
参考図は神戸市が税務上作成した図画で、市街地などでは現在の住居表示が使われています。一方、市街化調整区域にあたる部分では明治時代の地番が引き継がれている可能性があると考え、上谷上、字大岳、8というキーワードが一致することから、ここが山田村ノ内上谷上村字大岳八番に対応するのではないかと思っています。
参考図は、一般的な地図とちがい、地番の境界を線で結んだ図に地名と地番が書き込まれたものであり、地図上の場所との対応が取りづらい側面もあります。
図50-K16の中で字大岳8-1の区域は、南東から北西向きの川のように見える帯に沿い、堰堤に当たると思われる場所から下流方向を西の境界とし、南北の境はほぼ横に東の方向に伸びています。また、東面は有野町唐櫃と境を接する区画となっています。さらに、図50-K16の左上に当たる図59-K15には、その下流に当たる地域が描かれ、そこに地獄谷と表示されています。これらと図50-K16の右下にあたる図50-K22と合わせて、堰堤などからおおよその場所を想定すると、地獄谷中流域で、水晶山第四砂防ダムから300乃至400mほど下流の東の区域にあたると見当をつけました。
前回引用したInakaにある"Rambles round Rokkosan"の仮訳には、"この谷は唐櫃道と並行に走る支脈の西側にある。"という部分があり、これについては前回想定した石楠花山より地獄谷の方にふさわしい表現だと思っています。一方、「山田村郷土誌」には、"川の西岸に當れる一脈は緩斜面となれるを以て攀登容易にして展望に適し、有馬街道は眼下に迤々たり、"と描写されていますが、これについては現地を知らないのでなんともいうことができません。
なお、参考図では石楠花谷について、同じ字大岳ではあるが異なった地番が与えられています。
以上のことから現時点では、ラジウム小屋については現在の地獄谷にあった可能性が高いと考えます。場所的には「六甲」(注3)ほかにある炭酸泉との関連も考えられます。また、この想定が正しければ、ドーントらが地獄谷を石楠花谷あるいは石楠花谷の一部と考えていた可能性もあるように思います。
また、参考図については神戸市立中央図書館の教示により知ったところですが、同館からは今回の地番について場所の特定はできなかったと伺っています。
注1: http://www.city.kobe.lg.jp/life/support/tax/kita_index2.html
注2: http://www.city.kobe.lg.jp/life/support/tax/pdf/chiban/28_t/50-K16.pdf 拡大表示すると地番が表示される。
注3: 竹中靖一「六甲」復刻版 1976
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