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2023年12月12日 22:37老人と山全体に公開

サルギ尾根を登った

5月に海沢コースを通って大岳山へ登って以来、奥多摩へはとんとご無沙汰している。そろそろ何とかしないと結局このまま年を取って奥多摩は終わりになるかもしれないと不安になり、あれこれ思案しているうち、ふと「サルギ尾根」のことが頭に浮かんだ。

このルートは、古い2006年版山と高原地図には載っていないので身近に感じなかったのだが、奥多摩の遭難本で読んでその存在は知っていた。上養沢から大岳山へ至るルートのうち芥場峠までの尾根道で、2015年版には実線ルートで載っていた。実線ルートなら何とかなりそうな気もするが、自分のような年寄りがのこのこ入り込んでいいものか心配なので、山行記録をいくつか覗いてみた。登り口から急登であること、途中岩場のやせ尾根もあること程度しかわからなかった。

でもまあ、8月に熱中症で倒れそうになった大高山、天覚山コースに先月と今月「やあ、こんにちは、もう平気だよ。」と2回も挨拶してきたし、そのために北高尾でトレーニングも重ねたし、一昨年歩いた奥武蔵の「スルギ尾根」もそれほど苦労した記憶がなかったから、一字違いの「サルギ尾根」も何とかなるだろう、時には精神を緊張させる冒険に挑戦してみてもいいだろうと考え、日曜日朝7時半張り切って家を出発した。

出だしから躓いた。もうすぐ武蔵五日駅に到着というところで、「電車が無線で異常を感知したので安全確認のためしばらく停止します。」のアナウンス、うわあ、それは困る、10分待ちのバスが出てしまう、早く動いてくれと焦ったが、自分の都合だけでは如何ともしがたい。異常感知といっても動物が横切っただけでないの、注意しながらそろそろ進めばいいのに、昔はこんなことまず起こらなかったのに、などとあらぬうっ憤を空にぶつけてみたが、まあ、仕方ない、流れに任せるしかない。

結局20分ほど電車が遅延し、もうバスの姿はなかった。時刻表を見たら次のバスは1時間半後、うーん、そんなには待てない、もともと登山にはぎりぎり遅い時間だし、タクシーを利用するか、バスで40分余り掛かるのだからタクシー料金はどれだけ嵩むだろう、2・3千円では済まないだろう、タクシー乗り場には車が1台、運転手が社外で楽しそうに知り合いと談笑していた、人が好さそうだ、「上養沢までいくらぐらいですか。」、尋ねてみた、「5千円位かな。」という返事、うーん、1万円は掛からないけどどうだろう、思い切るか、また今度というのは年寄りには不可能だし、明日死ぬかもしれないし、「どうします、乗りますか。」、明るい声に誘われて、「あ、乗ります。」急いで乗り込んだ。

車中であれこれおしゃべりしながら走り、10時少し過ぎ神社前に着いた。今日は体調万全を期して家の出発をわざと遅らせ、大岳山までは行かないで芥場峠から御岳ケーブルへ向かうことにしたのでこの時間でも余裕だろう。暖かい快晴のなか、なんか今日はいつもより体調がいいぞ、楽しく登れそうだ、ちょっと体操をしてなど気分よく準備していたらバスが姿を現した。バスより早かったのだ。気分がさらに良くなり、タクシー料金4千500円もOK,OK・・・惜しくない!

神社へお参りして安全を祈願し、10時25分すぐ横にある登山口へ入った。うわー、確かにこれは急登だ、半端ない、そのうえ道が細く足場が悪い、バランスを失ったら急坂を転げ落ちてしまう、時には四つん這いになって必死に登った。登りはなんとかなったが、下りにとったら自分は進退窮まっただろう。余り歩かれてない急坂は荒れていた。

この急登を終えれば普通の登山道になるが、ピークが近づくと俄然急坂になる。上高岩山までの間に大きなアップダウンが確か3回あって、それぞれのピークへの登りが怖かった。大きな石がごろごろする岩場の急登で、踏み後のはっきりしないやせ尾根が危なっかしく、なかなかの難所だ、踏み後を辿ったつもりだったのに上の方に出たらもっとはっきりした踏み後が岩の反対側から上がってきていたときもあり、どうも判然としなかった。

また、アップダウンの落差がこれほど激しいとは予想していなかった。特に高岩山から上高岩山方向を眺めたときは、あまりに高くピークが聳え立ち、こっち側との間が深く落ち込んでいる様子には本当にビックリした。いつもならガクッと心が折れるところだが、その時は「おー、またきたか、大丈夫だよ、気長にゆっくり行くからね」と気負けせず頑張ることができた。大高山・天覚山コースや北高尾で訓練を重ねたおかげだ。「山の呼吸」を会得したか。

大岳山の帰りに、今度はこっちから下山してみよう、などと高齢者が気易くこのサルギ尾根を下るのは避けた方がいい。奥多摩の遭難事故を扱った「すぐそこにある遭難事故」のトップにこのサルギ尾根の死亡事故のことが取り上げられているのだが、そのルートミスをした地点は、恐らくここだろうと気が付いた。狭い岩場から降り立った地点の登山道に枝木が横たえられていた。確かに本に書いてある通り、下山中にこの道を歩いて来たら踏み跡のはっきりしない岩場の方に左折することはなく、歩きやすい道をそのまま前方へまっすぐ進んでしまうに違いない、現在は横木が通せんぼしているが、量がわずかでいつなくなってもおかしくない、本気で事故防止を図るなら進入禁止のロープを張るか大きな看板を設置すべきだろう。


芥場峠に着いたときは、3時半になっていた。あまりにゆっくりし過ぎた、急がないと暗くなる、足を速めた、でも道に小石がごろごろ敷き詰められて歩きにくい、今年の5月に娘と2人で海沢コースからの帰途がっくりしながら歩いた時と何か様子が違う、記憶にない、不安に思ったが、そのうち御岳ケーブル駅とロックガーデンとの分岐に差し掛かった。ケーブル駅へ向かえばいいものを何故かロックガーデンに下ってしまった。遠回りになったかと思ったが後の祭り、せっせと急ぎ大分してから出会った案内板に従い、緩いけど長い坂を息もつかずに上がったら見覚えのある長尾茶屋前に到着できた。ようやく安堵して神社の階段を駆け下り集落の中のわかりにくい道をうろたえながら急いだ。
なぜ案内板を設置しないのだろう。いつも戸惑う。

5時2分前のケーブルに乗りたい、それを逃せば30分待ちになる、山上の暗い寒い場所で一人で待つのは嫌だ、下り坂との分岐を通過した時には残り2分弱、最善を尽くそう、駄目もとだとダッシュ、さっき追い抜いて行った、ロックガーデンの薄暗い東屋に妖しく見かけた若いアヴェックが駅員に待ってくれと声をかけていた、そこへ追いついた自分に駅員が気付き、運転士に大声で「あと3名残ってまーす。」と叫んでくれた。「もう発車時刻を過ぎているから急いで急いで!」、せかされて何とか最後に飛び乗った。やー、努力は報われるものだ。すごく儲かったような気がした。

というわけで今回も楽しい山歩きが出来た。無事でよかった。年が明ければすぐに85才、まだ負けてない。我ながら不思議な気がする。


写真1 正面の階段を上がった神社の横に登山口がある

写真2 登山道

写真3 登山道
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