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テレビには腹が立つ。
「もう、抵抗力だよ、抵抗力をつければいいんだよ!」
そう妻に宣言し、いつもの朝食をさっさと済ませ、景信山へ出かけた。
すでに日は高い。
妻は何も言わず家事に専念していた。夫の言葉など今更・・・
バスを降りた。うーん、暑いことは暑いけど何とかなるね、ああ自販機だ、水をもう1本追加しよう、500円玉を入れたらコロンと戻ってきた、あれお釣りがないのだ、では200円を入れてと、またコロン、あれ、これもダメか、役立たずだなこの自販機は、ふん、なんか悪い予感がする。
小仏バス停から登山口まで15分静かに歩いた。さあ、ゆっくり、ゆっくり登ろう、このコース意外と急坂だから気を付けないといけない。このほんの小さな岩場は根っこを、みんな掴むので真っ黒になってしまったど仕方ない、ヨイショっと、まだ大丈夫だ、意外と行ける。
20分余り登った、ウーン、やっぱり暑いな、まだ低いので熱気がむっと嫌らしく身体を包む、汗が身体中から噴出し、目を開けていられない。ぼーっとしてきた。ああ、やっぱり、やっぱり、と思っていたらふらふらっと、いけない、早く尾根へ出て休憩しないと、だけどペースを乱したら駄目、静かに歩かないと、あれ、なんか気分が悪くなってきた、胃がムカムカする、うー、こんなこと初めてだ、大変だ、熱中症だ、吐き気がする、気分悪い、熱中症ってこんな感じか、昨年奥武蔵で経験した症状より少し悪いかも、だけどもう目の前が尾根だよ、頑張って、あと10歩だ、と自らを励ましてたら寒気を感じてきた。なんかブルッとするようだ。
猛暑なのに何で寒気?・・・いよいよ本番?
丸太のベンチにどさんと腰を下ろし、冷たい水を飲みながら、凍らせたペットボトルをおでこや首筋、わきの下などに押し当て、少しでも身体の熱気を冷まそうとした。一段落し、氷の溶けた冷たいポカリを喉に入れたら、すーっと身体が楽になった。ポカリがこんなに美味しいとは!、ああ助かった。いつもの軽い朝食だからシャリバテかとサンドイッチを一切れ食べた。
20分近く休憩して楽になったので、先へ進んだ。今日は訓練、行かなければ、暑さは相変わらずで汗まみれになったが、さっきの休憩が効いたのか、熱中症が再発することはなかった。低山とはいえ600メートルを越すと少し楽になり、30分程で着いた小下沢分岐の尾根では念のため15分の休憩をとり、水分を更に補給し、こんどは饅頭を食べた。時折感じる微風が心地よかった。
この休憩が大変よかった。ここから頂上までの急登を一瞬で登った感じ、いつもはふうふうなのに、いつの間にか頂上に着いた。
頂上は極楽、暑くない、吹き寄せる風がひんやりする。もうその辺のベンチに横になって昼寝をしたかった。大勢の登山者もみんな気持ちよさそう、そのうち横に60歳くらいの外国人がふうふう到着して、なにやら大声で話し始めた。あれはどこの国の言葉だろう、中国語でもないようだし、東南アジア系のねっとり感もない。こんな猛暑のなか景信山へ登るなんて面白い父ちゃん母ちゃん達だった。
気分を良くして小仏峠からバス停へ下り、4時過ぎ帰宅した。
「あら、びっくりした、今日は途中撤退なの?」
「成功、成功、猛暑には抵抗力を付けないとね。」
危うく熱中症にやられそうになったことは黙っていた。
男は、妻に威厳を失ってはいけない。
(写真)頂上の花も熱中症
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