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前回6月21日にした上高岩山との約束を果たすため、上高岩山からロックガーデンへ至るルートを昨日登ってみた。
妻が悲鳴をあげたときがいつだったか山日誌を調べたら2011年7月の今頃で丁度15年前だった。当時はまだ山慣れしていない娘と3人で大岳山からの帰りにおしゃべりしながら芥場峠を見過ごしてしまい、あれ、この道違うのでは、という疑問も起きる中、どうせまた下り道があるだろうからとたかをくって歩いて行ったら上高岩山へ着き、そこにロックガーデンへ下るルートの道標を発見して気軽に下ってしまった。
自分としては何気ない道に過ぎなかったと記憶しているのだが、娘の話では岩の急坂を下る非常に危険な道だった、怖かったという。妻は足がすくんで立ち止り、その度に悲鳴を上げては娘に助けられていた。自分は「こんな道、そんな弱虫でどうするの!」と気合を入れるだけ、今でも責められる。
道の状況につき自分と妻達との間の記憶にあまりにギャップが大きいので実際のところどうなのか、それを確認しておこうというのが昨日の目的だった。
ロックガーデンを天狗岩から少し下って行くと「上高岩ルート」の道標があり、そこを左へ折れると歩きやすい山道をしばらく登り、尾根に達してからは平坦な道となる。やがてピークを前に右へ下って巻くように進んでゆくと左折して尾根に登る。
ここから険しくなった。鎖やロープが連続している。いつものように岩や木に掴まり腹ばいになって登った。もう少し若かったら立ったまま脚だけで登れただろうが、こんな高齢になるとバランス力が失われているのでそれが出来ない、安全第一のためにはなりふり構っていられないし、かなりの時間的ロスも仕方ない。それは想定内のこと
そのうち前方にアルミ梯子が現れた。急な岩場に垂直に近い形で結構上まで続いている。「梯子か、長い梯子だな、この辺ではちょっと意外だな。」と思いながらしげしげと梯子を眺め、「あの一番上まで気を抜かないで慎重にいかなければ。」、そう思って登り始めた。とにかく落ちないように手でしっかり握って、足をきちんと置いて、一歩一歩その動作に意識を集中させた。安全第一、それしか頭になかった。
さあ、一番上まできた、どっちにおりる・・・?
前と左は草むらで全くダメ、右側がおりられそうな地形だし、その先に何となく道が続いているような気配がする。ただ脚を置くべき場所がちょっと遠い・・梯子から離れているのでおいそれと足が届かない・・ちょっとおかしいな・・でも何とか移らないと進めないし・・・梯子と岩にしっかり掴まってそろそろ・・・あ、落ちないように!・・もっと腕に力を入れないと、ぐぐーっと、そのまま!・・・よいしょっと・・ふー、何とか無事移動できた。ほっとした。
だが待てよ、回り込んでいるのではと期待した道が見付からない。踏み跡はない。行き止まりだった。どうしよう・・・間違えた?
なんかミスしたのだ。梯子をきちんと登ったのになんでミスした?
(もう山レコのみなさんなら、「なんだお前、〇〇〇のミスじゃないか、」とすぐ気付かれたでしょう。)
私も山レコの登山者です。すぐ気付きました。
梯子の途中です、梯子の途中におりるポイントがあった筈です。それを見過ごしたのだろうと思いました。戻ればいいだけなのですが、それが問題、梯子に戻る方がもっと難しそう、地面になら移動後そこに膝まづいても無事だが、移る相手が梯子ならそうゆうわけにゆかない、下方が断崖絶壁というわけではないけど落ちたらころころ転がって木にどすんと衝突すること間違いなしの状況、進退窮まった。
嘆いていても問題は解決しない、右手を岩にしっかり掛けて左手をそろそろ梯子に伸ばした。梯子の端を掴むことができた、足も梯子へ掛けたいのだがしっかり掛からない、少しの差で踏棒にしっかり置けない、それ以上大股にできない、右手と右足を離す瞬間にジャンプするような感じで梯子に身体を移動するしかない、そのわずかな瞬間が勝負、左手1本で身体を支え切れるか、それを防ぐようにうまく左足に力が入るか・・・
それ!左手は死んでも離すな、決死の覚悟ですっと身体を移動した。うまく左足がしっかり踏棒を捉えた。ほら!右手も梯子を掴んで!
ああ、またもやため息、助かった。とにかくよかった。
果たして梯子を下りて行ったらすぐに左へ容易に下りるポイントがあった。普通なら見落とす筈がないほど明確な地点なのに、脇目もふらず手や足にばかり注意を集中し、当初の思い込みで一気に最上段まで登ってしまった。そのため中間のおりるポイントを認知しなかった。
階段を眺めた途端、最上段まで登らなければと思い込み、それがあまりに固かったため、最上段で、あれ、おりるところがないね、と不審に思ったときに、待てよ、ミスしたかな、という考えが浮かばず、そのまま突っ走ってしまった。梯子を上がる途中にあたりを観察する必要性も全く感じなかった。老人の思い込みは恐ろしい。痴呆の第一歩というべきかもしれない。
もうガックリして精神的に疲労し、その後は精力を使い果たした感じでのろのろロープを掴んだりして、本当に痴呆老人になってしまった。もう静かに休みたい、ゆっくり昼食をとりたい、ここは誰も訪れない静かな山だから気持ちを癒やしたい、そう思いながらほうぼうの体でようやく頂上へたどり着いた。それなのについさっきから頭上でヘリコプターが激しい音を響かせ始め、ぐるぐる旋回して一向に離れない。森閑とした山の雰囲気が台なし、げっそりして昼食も進まなかった。
どうもまだ腑に落ちない。15年前に歩いたときはこんなに危険なルートではなかったように記憶している。その後、台風や地震で道が崩れたりして危険な状態に変化したのではなかろうか、それともルート状況は相変わらず同一でも、当時は若かったから平気だったのに対し、今やあまりに年を取り過ぎて何にでもビクビクするようになったので、15年前と比べ自分の受け取り方が変わってしまったのだろうか。道が変わったか、自分が変わったか、昨日、実地に確認してみたが疑問は晴れなかった。
(写真1)写りはそうでもないですが、実際はかなりの急梯子です。
(写真2)最初の一歩を梯子に乗せるのに四苦八苦した。自分の腰くらい高い、段差ありすぎ、もっと背の低い人はどうやって足を掛けられる?、この時にすでに悪い予感がしていた。
(写真3)去る時の写真、こんなに目立たない標識も珍しい、控えめで好ましいです。
ロックガーデンから上高岩山への道。まだ歩いてはいないのですが、下の分岐に「上級者ルート」などと書いてあった記憶があります。結構激しいルートなのですね。『ハシゴは上まで』の思い込みは有りがちだけに、気を付けないとと思いました。思い込みから来る道迷いも多そうです。
一方で、迷いやすい箇所によくロープが張ってあるように… 持っているマジックでハシゴを降りる所に「←←←」と書いて置きたい気分です😅 またバスや夕暮れの時間に追われたりしていると、さらに間違いそうで計画の余裕や引き返す勇気も大事ですよね。
ところで実は今日脳ドックを受診してきたのですが、その一環で認知症を調べるMCI検査を初めて受けました。今日の日付は?に始まって、100から7つずつ引算した数を言う、聞いた4個の数字を逆順に言う、物を5点見せられて後で何が有ったか?などの質問に受け答えするものです。幸い30/30の満点を取れたのですが、以前なら余裕でクリアできたはずが、考えて頭の中で暗唱してのギリギリセーフでした。
最近、思い込み・ド忘れ(つい先ほど置いたスマホが見つからない💦)が増えたのを実感していまして、たまに検査を受けるのと、会話・運動・そして山とできることをやり続けるのが大事だと改めて思った次第です。
コメントありがとうございます。
今回は、本当にどつぼにはまったという感じでした。
老人の遭難事故はこうゆうことで起きるという典型的な見本です。
今回は上養沢から入ったので、疲れが溜まって心に余裕がなくなっていたのでしょう。
いつもならあんなに明白な降り場を見逃す筈ないのですが。
あの梯子、両側がぬるぬる滑って足掛かりにならず、下の出っ張りも役立たず、最初の1段を上がるのに難儀しました。なんとかへばりついて身体を持ち上げましたが、ズボンが泥だらけ、踏み石を置くとかロープを垂らすとかしてもらうとありがたいです。もっとも上級者用のルートに入ってつべこべ言うなと返されればそれまでですが。
脳ドック、自分も1度は受けてみようかと考えないこともありませんが、いつも恐ろしくて尻込みしてしまいます。なんか異常がみつかったらどうしよう、開頭手術?・・ブルブルブル・・・
MCI検査、面白そう、運転免許更新のとき受ける検査をもっと詳しくやるようですね、一度受けてみたいです。
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