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2025年04月23日 22:48老人と山全体に公開

塔ノ岳はもう無理

塔の岳はもう無理、このさき登ることはないだろう。これも自然の流れだから仕方がない。高齢による体力の衰えが一番の理由だが、これまでの楽しかった思い出を美しいまま残しておきたかったためもある。。

もうすぐ5月の連休に入るので、骨のある山として塔の岳へ挑戦してもよいのではと考えた。でも連休中はずっと天気予報が悪いし、それに連休中は人出が多いから老人がのそのそ歩けば他の登山者の邪魔になる、それなら天気の良い今のうちにと昨日塔の岳へ出掛けた。

ただ、いまの体力で頂上までたどり着けるか不安はあった。辛かったら途中で戻ろう、せめて花立山荘までは登りたい、堀山小屋で引き返すのはちょっと惨めかも、まあ、どちらでもいいやという中途半端な気持ちだった。

スタート時は晴れていた。だが登るにつれて冷たい風が強まり天気も曇ってきた。一本松のベンチや堀山小屋のベンチでは寒くておちおち休憩できない。半袖を一枚中に着込んだ。少し身体の冷えは緩和されたが、冷えは続いた。軽いアウターも準備してきたのだが、なぜか羽織る気がしなかった。いま思い返してみても何故だかわからない。この程度の寒さなら山では当たり前、我慢、我慢と意地になったようだ。

登りは、いつにもまして辛かった。いや、いつものようにかもしれない。花立山荘前で休憩しているときに途中追い抜いて行った登山者達が続々と下山してきた。今から登る人は誰も居ない。自分はどうしよう、頂上へ行っても風がびゅーびゅー吹き付け、周りは雲に覆われ、見晴らしは全く期待できないだろう、広場でゆっくりランチなんてとんでもない、そんなところへ行ってどうする、ここまでだっていつもと違い冷えた身体で楽しい気持ちになれずよろよろ登ってきたのに、そんなことをちらちら考えているうちに身体はザックを背負い自然と上へと足を進めていた。もう本能というか惰性というか、いつもの習慣は変えられないものだ。

頂上では仰天した。ブルドーザが入って大工事中、そこらに資材が山積み、そうか、ようやく始まったかという感じだ。古くて壊れたベンチや腰掛(土止め?)が一新されるのだろう。それを横目に山荘へ飛び込んだ。コーヒーを頼みほっと一息、美味しいおはぎを食べながらようやく楽しいリラックス気分に浸ることが出来た。山頂に人が居なくなってガラガラのこの小屋のテーブルで飲むコーヒーはいつも美味しくて気分を良くしてくれる。

2時20分下山開始、余裕だ、明るいうちに大倉へ下山できる。誰もいない、冷たい風の中のんびり歩いた。本当に人の姿がない。冷たい風がビュービュー吹くだけ。金冷やし、花立山荘、階段、岩場を過ぎ、幅広の土留め階段をそろそろ降りていたら、あれ、内股に違和感が、痛くなってきたと思ったら、ピーンと脚が攣った、筋肉の線がキリキリ痛む、うわ、大変、水を飲んでそのまま立ち休みした、この先まだ長いので心配したが間もなく和らいだ、よかった、その後は再発しないようそっと歩いた。

そのうち今度は何やら脚からお尻の真横にかけて両側とも痛み出した。どうも脚と臀部との関節のような気がする。疲労によるものだろうが、こんな経験したことないので狼狽えた。この痛みが段々ひどくなって歩けなくなったらどうしよう、まだ軽い段階だから、とにかくこれ以上悪化しないようにしなければいけない、さらにそっとそっと歩みに気を付けた。時間ばかりかかるのに冷たい風は止むことなく吹いてきた。

堀山小屋を過ぎた平坦地から望む表尾根の山並みもいつになく陰鬱に見えた。1本松からの下りの、いつもは美しく眺める並木も心なしうらぶれて見えた。ああ、気持ちがいつもと違う。悪い時に来てしまった。疲れた。

見晴小屋でがっくりと腰を下ろした。まあ、ここまで来れば大丈夫、もう危ないところはない。とにかく足元に気を付けながらそろりそろりと、いつの間にか観音茶屋、何を考えていたのだろう、ぼーっとしていた、夢遊病者のようだ、やれやれようやく舗装路に出た、あとは楽ちんだねと思っていたら反対だった。なんかコンクリートが脚に響く、山の中より歩くのが脚に応える。脚に力が入らない。踏ん張れない。時々よろよろする。大きな鯉のいる池に差し掛かった。朝眺めた鯉の姿はもう判然としない。辺りは暗くなっていた。


今回は、本当に意気が上がらなかった。よし、頑張るぞ、という気持ちが一度も起こらなかった。これまでの習慣でつい頂上まで行っただけの話だ。最近の大倉尾根登山ではいつも疲労度は極限に達していたから、疲労度だけは同じ程度だったかもしれない。でも今回は、なんだかなあ、もう無理だなあ、終わりにしてもいいなあ、という考えが自然と湧いてきた。

肉体的衰えが進んだことが一番の理由だが、冷たい風に終日吹き付けられて意気消沈したことも理由のひとつになるかもしれない。だが、考えているうち決してそれだけではないことに気が付いた。

大倉尾根そのものが、これまで慣れ親しんできた山とは違ってきたと今回ひしひしと感じた。人工物の山に様相が変わってしまった。きれいな階段がどこまでも果てしなく続いている。自然保護のためやむを得ないとしても、歩いていて自然に触れられないということは登山の楽しみを奪われたようなものだ。もう自分のような高齢者が以前のイメージで登る山ではなくなった。高尾山の稲荷山コースと同じ、やあ、ここは泥だらけだ、仕方ない、じゃぶじゃぶ行こう、なんて楽しみはなくなった。みんな木道、汚れなくなった。泥んこ遊びが懐かしい。


さようなら塔ノ岳・・・・私も年をとってしまった


(写真1)長く続く階段

(写真2)頂上は大工事中

(写真3)もうすぐバス停
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コメント

同感です。年をとり腰、膝、背中など身体中に痛みをかかえ昔は楽しめた大倉尾根が苦行に思える。山頂からの展望と天秤にかけてついに苦しいほうが勝ってきた気がします。
2025/4/23 23:53
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h321さん
おはようございます。
そうですね、辛い、辛いと思いながらも、つい頂上まで頑張ってしまいます。
だけどもう高齢になりすぎました。
脚の付け根や臀部の骨が痛み出したときは、さすがに恐怖を感じました。
素直に年齢に従うしかありません。
2025/4/24 6:47
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nibinさん、こんにちは。
お疲れ様です。

いやいや、あの大倉尾根を塔ノ岳まで登るんだから凄いと思います。

それにしても画像の塔ノ岳頂上のブルドーザー!?😱
あんな山の上までどうやって運んだのでしょうね。

私が大倉尾根を歩いたのはもう40年以上も前でした。
当時はコース上に丸太の階段はありましたが、尾瀬のような木道はまだなかったですね。
降雨時はめちゃくちゃ滑りやすい赤土の道と化し、ドロだらけになりながら下山した懐かしい記憶があります。

また大倉にはバス停しかなかったのですが、今は立派な吊り橋やら公園まで設けられたようで、その変貌ぶりには驚きます。

久しぶりに大倉から馬鹿尾根を登ってみるのも悪くないかなとも思います。
でも何だか、昔の思い出が音を立てて崩れてしまいそうな気もして、足を運べずにいます・・
2025/4/24 16:09
vt250zさん
こんばんわ
頂上の大工事には本当にびっくりしました。
これまで荒れ放題の有様に、まだかまだかと待っていたので嬉しい気もします。
でも遅過ぎましたね、新しい頂上にはお目に掛かれないでしょう。
ブルドーザーをはじめ機材や重量物が山積み、ヘリ運搬でしょうが、結構な費用だったのでは

私が初めて大倉尾根を上ったのは丁度14年前ですから、vt250zさんとは年季が違います。直近は1年半前です。その時も、おやっ、と感じたのですが、今回は特にあの木道がどこまでも長く続いてのを強く感じました。
あちこちの丸太の階段は歩きやすく改造されているし、終始人工物の上を歩いているのはやっぱり楽しくないものですね。

頂上の工事が終わる頃、新しい塔ノ岳にぜひ登ってみてください、その時は写真も添えて是非ご報告お願いします。
2025/4/24 23:37
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こんばんは♪
私も山歩きを始めたのは16年前の58歳の時とかなりの遅咲き(?)でした。
菩提峠から出発して表尾根を歩いて塔の岳へ行くのが楽しくて、日帰りピストンしてました。まだ三の塔地蔵前からは木道もなく、山歩きを満喫できてましたが、整備されてからは自然に触れ合うこともできなくなり、併せて三年ほど前から足がついて行かなくなってしまいましたので、書索小屋で戻ってくることもしばしばです。最近は無理をせず三ノ塔までで戻ってくるようになりました。
加齢による衰えを受け入れて安全に楽しく歩くようにして山歩きを楽しむようにしておりますが、いつまで歩けるか時間との勝負にような気がする今日この頃です。
お互い無理せず、山を楽しみましょうね♪
2025/4/26 20:13
yasnakさん
こんばんわ
58歳のときですか!!
私と同じですね。28年前です。
丹沢の始まりは、ヤビツから表尾根を歩き、大倉へ下りました。
ヘッデンを持参するなんて頭になく、木綿の下着で登ってた無知な頃です。
雑事場あたりで暗くなりはじめ、ピッタリ後ろにくっついた、同じ初心者らしい小学生連れの父子ともども3人で息もせず急いで下ったのを今でも鮮明に覚えています。
それ以来、塔ノ岳にはどれだけ苦労し癒され楽しい思いをさせてもらったか

ある時、花立山荘階段手前の岩場をふうふうしながら登っていたら、身近で「ハクション!」という女性のくしゃみ、おや、と思って辺りをキョロキョロ見回してみたが誰も居ない、不審げな顔をしていたのでしょう、今度は「オホホホッ」という笑い声、そちらの方かと顔を向けると、頭上の岩陰から笑顔の女性がひょいと顔をのぞかせた。ああ、先刻追い越していった小柄で身軽な女性か、休憩していたんだ、「やあ、やあ、」こちらも愉快になり、お互い笑い合ってしまった。ただそれだけのことでしたが、今でも思い出すたびに顔がほころんできます。

とにかくもう年ですね、まだまだ登りたいけど、登れると思うけど、なんか、こう、コース自体が別の世界になってしまったような、自分がはじかれてしまったような、いそいそと楽しく出かける魅力を失ってしまったような、そんな精神的な面でもうおしまいにしようと思った次第です。

でもわかりませんよ、ちょっと呆けてまた無謀な挑戦をするかも
2025/4/27 0:44
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