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2016年03月06日 11:55新編相模国風土記稿全体に公開

新編相模国風土記稿 丹沢山

新編相模国風土記稿. 第3輯
巻之五十四 村里部 愛甲郡巻之一
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/763969
コマ番号292
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丹沢山(太武坐波屋満[たむざはやま])  郡の西方にあり。東は郡内七沢、宮ヶ瀬等の山々に続き、西は足柄上郡、南は大住郡、北は津久井県の山々に接壌し、東西およそ3里あまり、南北4里ばかりに及ぶといえり。山中を八所に区別し、同法(度宇菩布[どうぼふ])、汐水(志保美豆[しほみづ])、タラヒゴヤ、荒樫尾(阿良加志遠[あらかしを])、長尾(奈我遠[ながを])、八瀬尾(屋世遠[やせを])、大洞(於保朋良[おほほら])、本谷(保武多爾[ほむたに])(○此所に栃の喬木あり。十囲に及ぶという。また石小屋と呼ぶあり、石を組み立て樵夫等休憩の処とす)等の字あり。山中喬木蓊鬱として良材に富めり。按ずるに元亀天正のころ、北条氏の命により、煤ヶ谷、七沢辺の村々より良材を小田原に運びいたせしことあり。これみなこの山に採りしなるべし。関東御打ち入り以来、山中すべて御林となり、郡中煤ヶ谷、宮ヶ瀬、大住郡、寺山、横野等四村の民に、警衛の事を命ぜられ、かの村々へ合月俸一口半を賜り、かつ駅馬歩夫の課役を免除せらる。その他の村民は猥りに山に入る事を禁ず。寛永元年、山中の掟書といわるもの、今大住郡横野村の里正蔵す(曰く、丹沢御留山書の事。ツガ、ケヤキ、モミの木、杉木、カヤの木、クリの木、右の御用木御法度の事候間。また蔵木成共長木は出申事御法度の儀に候間または地たう衆成共、きり取被(レ)成 者、江戸へ急度御申可被上候、為(レ)其仍而如(レ)件、寛永元子十月廿五日。源半殿、田所助二郎印 按ずるに、文中蔵木は雑木にて、源半は玄蕃の誤なるべし。これ里正が先祖の名なり)。
この余、郡中数嶺相連続すれど、丹沢山に比すれば児孫のごとし。故に各村地域の接する所に標出し、ここに贅せず。
―――――――――――――――――――――――――――――――――

丹沢山の説明です。これも有名なので、ご存知の方も多いでしょう。
丹沢山を8つに分けています。

同法:?
汐水:塩水橋周辺
タラヒゴヤ:タライゴヤ沢周辺(札掛?)
荒樫尾:物見峠入口付近?
長尾:札掛から本谷川へ行く途中(上ノ丸付近)?
八瀬尾:?
大洞:大洞沢出合周辺
本谷:本谷川周辺

武田久吉が大正13(1924)年に丹沢山、塔ノ岳に登った際の順路は、「札掛→荒樫尾→大洞→繰廻し→本谷の河原→黐小屋→蜘蛛ヶ淵→木裏澤→丹澤山頂・一等三角櫓(本年6月完成)→塔ヶ岳・三等三角測量櫓→(諸士平→玄倉?)」だったそうです。
札掛から本谷川に行く途中、荒樫尾と大洞を通っています。荒樫尾というのは、札掛と物見峠入口の間のどこか、多分重要な分岐であった物見峠入口付近ではないかと思います。物見峠入口と塩水橋の間、鳥居杉尾根側から布川に注ぐ沢が大洞沢というので、その出合付近が大洞ということになります(というか、洞=沢のことなので、大洞沢でなく大洞が沢名になるのかな?)。
繰廻しというのは、昔の道が今の林道とほぼ同一ルートであるならば、塩水橋のところで、Uターンしているあたりのことでしょうか。今でもぐるっと回る感じですもんね(^^;
 その後、本谷川をさかのぼり、クモガフチを通って、木裏澤で丹沢山に登ったとあります。木裏澤というのは、キユハ沢のことでしょう。

同法と八瀬尾というのが、わかりません。
どちらかが、現在の札掛周辺なのかもしれません。札掛という地名は、江戸時代、御林巡回の札を大ケヤキにかけたことによるものなのだから、それ以前の地名があるはず。でもタライゴヤ沢出合=札掛なのだから、タラヒゴヤが札掛のことかも。
あるいは諸戸植林事務所のあるあたりも、何か地名があったはずで、そのあたりまで含むのかもしれません。ちなみに諸戸というのは地名ではなく、三重県出身の諸戸清六氏が始めた造林事業の事務所があるということです(現在は諸戸ホールディング)。

本谷にあるという栃の喬木ですが、本谷川には栃の木橋という橋があり(トチノキ沢)、そこに幹周り5m程の大きなトチノキの大木が今でもあるそうです。この記事に出ている木かどうか、ちょっとわかりませんが、一度見にいってみたいですね。
石小屋沢というと、ユーシンの檜洞水系にありますが、これは全然関係ないですね(^^;

ようするに、本谷川、布川、タライゴヤ沢周辺のことをひっくるめて丹沢山といったということになります。
札掛が、もともと丹沢という地名だったという説もありますが、この記事からはそれは読み取れず、なんともいえません。いずれにせよ、御林の中に部落があって生活していけるわけがないので、江戸時代以前の話になりますね。

ただ、この項の最後の文「この余、郡中数嶺相連続すれど、丹沢山に比すれば児孫のごとし」を見ると、このころにはもう、今の丹沢山、丹沢三峰、塔ノ岳、不動ノ峰、もしかしたら蛭ヶ岳もまとめて、丹沢山といっていたととることができます。
広義と狭義の丹沢山という言葉が混在していたのではないでしょうか(今現在もちょっと違った形で混在してますよね)。


丹沢の語源については、「丹」が朝鮮の古語で谷の意味のタンから来てるなどといわれますが、丹沢周辺に他に「〜谷」という言い方が一切ないことを考えると(小川谷は山登りの人がつけた愛称のようです)、どうして「丹沢」だけにそれが残ったのか(道志にタンノイリというところがあるけど、そういう話は全然出てきませんね)。
正直「困ったときの古朝鮮語」みたいな、ちょっとでも音が似てて意味も「おかしくない」と、結びつけて考える的な感じがします(^^; 思考過程が美しくない。それはどういうことかというと、現実の名称や地形などの事象に対する尊重の念が感じられない、ということです。
もっと簡単に、たとえばタナサワ(棚沢)が丹沢になったとか、丹のような赤い沢(丹沢には何か所か、岩が真っ赤になった湧水場所がありますよね。それにマンガン鉱もあれば紅れん石もある)があって、とか、いくらでももっと「らしい」説明はできる。もし仮に丹=谷であったとしても、古朝鮮語のタンがずっと残ったというより、日本語になった谷という言葉がさらに訛ったと解釈するほうがより現実的では?
日本に朝鮮から人が多く渡ってきたのは確かではあるけど、おそらく言葉ができる前から日本に人が住んでいたのは間違いないし、特に山間部であれば、そして地形を表現する基本的な言葉であれば、朝鮮系の言葉よりも、それ以前に日本で使われていた言葉が残る可能性のほうがずっと高いのでは、と思うんですがどうでしょう。


まあそういう面倒なことは別にしても、大体、丹沢山=谷+沢の山って、なんなんだよ、日本のどの山だって谷や沢はあるじゃん(^^; たとえば現実に谷川岳と名付けられた山の谷と比較して、印象的かどうか? 丹沢の沢が有名なのは、明治以降の沢登りのおかげで、そのイメージに引っ張られただけでは?
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