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変調は夏からあった。それでも短めの山歩きは何回かできたし、レポだってあげてきた。タバコも吸ってきた。タバコと山、という自分の人生を取り上げられるのが怖かったのかもしれない。でも、無情のお迎えは１０月終わりの気管支カメラでいきなりやってきた。いきなり治療の最優先が告げられ何の準備も待たずに検査に入る。結果を聞きに行く日が最悪状態となり、息を吸う度背中が痛んだ。肋骨転移があると手術もできない、ステージ�検�翌日からの入院を決め、職場に戻って今後の依頼をし、挨拶もそこそこに帰宅した。仕事を一段落つけてから入院を、という希望も突然潰れた。本当に重大なことは突然、考える間もなくやってくる。これが今回一番痛切に感じることだ。
検査の１週間はMＲＩの音ばかり聞いて過ごした。何度身体を輪切りにすればいいんだ、そう考えながら微動だにしない時間。入院とは基本的にじっとしている生活だ。検査は転移なしで落ち着き、手術に向けて年末年始を挟んで抗がん剤治療を３週間１セット2周り、今その中にいる。
病室には人生の大先輩たちが３人、この呼吸器フロアを見渡しても私のような若輩は殆どいない。私のこの年で右肺を３分の2切除したら、大先輩の年になったときには一体どんな生活が待っているのか？いやむしろ生活自体がとうに消滅しているに違いない。何にすがるか？考えるまでもなく、もう一度山を歩く身体を取り戻すこと、それしかないだろうと今は思う。もう煙草とセットの山はない、何歩歩けるかわからないくらい呼吸がへたれても、また以前のように少しでも山の空気を吸ってぶらつくこと、少しずつ少しずつ。
毎晩頭の中を巡る言葉を少し形にできたか。今夜は少し眠れるといいな。明日の朝の撮影会はすっきりした気分で臨みたい、今はそれしか撮すものがないからね。
