8年前に1度、計画したが、集中豪雨で途中断念して引き返した悪沢岳・赤石岳を、お盆休みを利用して計画した。身延からのバスを田代入口で降りて転付峠を目指して歩き出す。真夏の太陽に照らされると10分も歩かないうちに汗ビッショリとなってしまう。
家で冷たいビールを飲んでいれば良いのに、何のため自分はまた山に来てしまったのか。この山にも登ったという自己満足のため、他人にあの山も登ったよと言いたいためだけに歩いている。バカバカしい。やめて帰ろうかと考え始めてしまう。1日目の工程の半分過ぎになると、もう引き返すより先に進んだ方が楽だと戻ることを諦め、歩を前に進める。
この頃の山行はいつも出かける前には非常に億劫になり、家を出るのに気持を無理に奮い立たせ、山に来ればいつも何故、自分がここで苦労しているのかと同じような考えに落ち込んでしまった。家庭を持ち、子供もできて、仕事も責任のある地位に就き忙しさを増す中で、せっかくの連休を連れ合いとも喧嘩をし、家族を置いて山に登ることに罪の意識を感じながらの山行を繰り返しいた。
転付峠からは急に雨となり、急いで二軒小屋に下る。二軒小屋は南アルプスとは思えない、スキー場のロッジのような豪勢な建物でシャワー付き、部屋はベッドで山小屋とはとても思えなかった。後年、二軒小屋に行ったときは大きな風呂に入ることができ、ワインまで飲む事ができた。
翌日、雨はやんだが、今にも降りそうな天気の中、千枚岳に向かう。暑さにも慣れ、前日よりは体調も良く、マイペースで歩いているとまた雨が降り出し、本降りとなる。マンボ沢の頭で雨の中、昼食のパンを食べていると2〜3m先に野うさぎが現れ、餌を欲しげにじっと見ている。パンのかけらを投げてやったら慌てて逃げて行ってしまった。
昼食後、千枚小屋に下る途中でキスリングザックの肩ひも固定具が切れてしまい、キスリングを担ぐことができず、前に抱えて小屋まで歩かざるを得なかった。幸いなことに小屋に近かったため助かったが、登る途中だったら歩く事はできなかったであろう。小屋で針金をもらい、キスリングをなんとか担げるように修理する。14年間使用してきたキスリングもこの山行が終わって、さよならせざるを得なかったのは寂しかった。
翌日も雨の中、千枚小屋を出発し、悪沢岳を目指す。悪沢岳に近づくに従い、雨はやみ、頂上に着いたときはガスも消え、見事な展望が待っていた。近くの塩見岳から仙丈岳、甲斐駒ケ岳、北岳、間ノ岳。北アルプスの槍・穂高連峰、乗鞍岳が雲の上に顔を出している。南側の赤石岳以降はまだガスが残っていて全容を確認できなかったが、富士山は1部、姿を現していた。初日の登り初めに考えていた、家でビールを飲んでいたほうが良かったとの考えは当然、この景色を見たらどこか遠くに吹き飛んでいってしまっていた。
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日記
私と百名山 45.悪沢岳(3146m) (1977年8月14日)
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