岩木山を下り、この晩の宿の酸ケ湯温泉に向かう。昔、国鉄(今のJR)のフルムーンの宣伝ポスターだったと思うが、酸ケ湯温泉の千人風呂の写真を見て、この温泉のことが頭にインプットされていたので、八甲田山に登るときにはここに泊まろうと考えていた。
酸ケ湯温泉は八甲田山の麓の大きな1軒宿の温泉だが、今でも混浴である。風呂の大きさはどう見ても千人は無理だが、無理すれば200人くらいは入れるかもしれない。
大きな浴槽の中央に仕切りはないが左半分は女性、右半分が男性と暗黙の了解の線が引かれているようである。温泉宿には観光客は勿論多いが、湯治のお客も多く、その人達の自炊用の野菜やおかずなども売店で売っていた。
岩木山では体調が最悪でバテバテであったが、温泉にゆったりと浸かり精気を取り戻すことができた。翌日、雨が降りそうな濃いガスの中、酸ケ湯温泉の上から八甲田大岳への登山道に入る。途中から沢沿いの道になるが、女性的なイメージの八甲田山に対して強い硫黄の臭いがする不釣合いな男性的なガレ場の道であった。太陽が隠れていて涼しいためか、前日の不調とうって変わって体調が良い。
八甲田清水が近くに湧いている千人岱ヒュッテでひと息入れる。周りには雪も残っていて、雪の消えた部分にはチングルマなどの高山植物が咲き乱れていた。一人で鑑賞するにはもったいないと思いつつ、ガスのベールで周囲から閉ざされた幽玄の雰囲気漂う誰も居ない桃源郷を一人、ぜいたくに楽しむ。
広い八甲田大岳の頂上は濃いガスで回りは見えない。八甲田大岳山頂の標識写真を撮って井戸岳との鞍部に設置されている大岳避難小屋へ。千人岱ヒュッテ、大岳避難小屋ともに素晴しく、無人ではもったいない建物である。小屋付近から下はガスも薄くなり空が明るくなってきた。
小屋から八甲田山一の見どころである毛無岱経由で酸ケ湯温泉を目指して下る。途中、ガスが完全に取れて毛無岱の池塘を散りばめた湿原が足元に展開し、八甲田で見るべき景色を見ることができ心が弾んだ。上毛無岱から下りる木の階段からの毛無岱は写真でよく紹介されている通りの展望が目の前に広がっていた。すれ違う人もほとんどなく、ワタスゲの白い穂と花の終わったチングルマのヒゲが目立つ湿原の景色を楽しみながらのんびりと歩く。7月末だというのに水芭蕉の花も見ることができた。山頂でガスに隠されて展望を楽しめなかった分、毛無岱の風景が挽回してくれた。
酸ケ湯温泉で再び、温泉に入り汗を流した後、奥入瀬渓谷・十和田湖を車窓に見ながら国道103号線を走り、十和田ICから東北自動車道に入り、450Km以上をひたすら車を運転して郡山に戻った。
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私と百名山 81.八甲田山(1585m) 1996年7月28日
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