ガイドさんに、
『今度タイにクライミングに行くんです』
と言ったら
『マンゴーごはんが上手しいよ。食べてみると良いいよ。』
と言われたらしい。
しかも一緒に受講していた人もタイに行ったことがあるらしく
『マンゴーごはん美味いですよね〜』
と盛り上がったそうな。
講習会から帰ってくると、
『1日目はバンコクでマンゴーごはんを食べる』
と、勝手にマンゴーごはんを食べる旅程が組まれていた。
こちらとしては
『マンゴーごはんって何だよ!』
って感じである。
ご飯にかける納豆代わりにマンゴーを乗せる様なものなのだろうか?ガイドブックの写真を見ると、ごはんの上にマンゴーが乗ってて、そのまんまって感じ。味が全く想像できない。
『そんな訳わからんものを食うために、なんで付き合わなければならないんだ!』
と思いつつも旅はスタートしたのであった。
最初の1日は、トランジットで立ち寄ったバンコクを廻る予定だったので、その日にマンゴーごはんの店に立ち寄ることにした。サイアムと呼ばれる地区に『マンゴー・タンゴー』と呼ばれるマンゴースイーツ専門店があるとのことである。
午前中は、スカイトレインや海上バスを乗り継いでお寺を廻り、お昼にタクシーでサイアムに移動する。
『ボッタクリタクシーがいるから流しでタクシー捕まえてね。』
と言ったら相棒が見事にボッタクリタクシーを捕まえたので、降りるぞと脅したり、値切ったりと、ひと悶着ありながら、サイアムに無事到着することができた。
サイアムは渋谷・新宿みたいな感じの街である。駅前の大きなビルには、大型ビジョンに様々な広告が映し出され、駅のホームドアに取り付けられたデジタルサイネージのグラフィックが切り替わるので、一面きらびやかだ。
高級ブランドの入ったショッピングモールが軒を連ね、パルコみたいな若者向けの店がたくさん立ち並んでいる。
『まるで日本から日本に来たみたいだ・・・』
東南アジアというと、日本から見ると下にみるが、タイは東南アジアの中では優等生的な存在なのだ。
しかし、せっかくタイに来たのだから、エスニックな食事がしたい。そこで屋台通りに繰り出そうとしたが、店はものの見事に閉まっていた。何故ならその日は大晦日だったからである。
どこか食べるとこないかと、デパ地下のフードコートをのぞいてみると、まるで渋谷の高級フードコート。
『ここはヒカリエですか?』
て言いたくなる感じ。
並びの生鮮食品売り場の内容もゴージャスで、100バーツ単位でモノが売られている感じだ。※1バーツ=3.5円
日本の蜜柑や柿が数個で300バーツだの500バーツだので売られていたが、日本円に換算すると1000円〜1700円以上するわけなので、めちゃくちゃ高い。よもやぼったくりタクシーどころではない。
ここだと渋谷で食べるようなモノなので、外に出て中華のファミレスみたいなところに入ったが、あまり異国情緒はない。もちろん地方に行くと、アジアっぽい光景が広がるが、旅行者が何を期待しようと、逆にこれが今のアジアの素顔なのだろう。
お昼ごはんを食べた後は、予定通りマンゴーごはんの店に向かう。入り口には、でかいm&m’sの様なマンゴーをモチーフにしたキャラが立っており、今時の原宿ぽい。異国情緒ただよう、可愛いような可愛くないようなキャラはタイ女子の好みなのだろうか?
中に入ると、店内は明るく、ちょっと錆びついたような金属のフレームにアンティーク風木材の天板のついた机や椅子が並んだガレージ風の内装である。天井からはマンゴーをモチーフにしたプレートがたくさんたれさがっていてモダンな感じだ。日本人の無印良品的なサッパリした感性からすると少し尖った感じを受ける。
レジで早速、写真入りのメニューが渡される。マンゴーの店だけあってマンゴーを使ったメニューしかない。一皿150バーツくらいからで、日本円でいうところの500円程度。タイの物価を考えるとなかなかいい値段である。
主力商品はマンゴー・タンゴーというマンゴーとジェラートの盛り合わせであり、高野フルーツパーラーみたいな存在であろうと想像した。
相棒はもちろん『マンゴーごはん』を注文する。タイ語だと『カウニャウ・マムアン』(餅米・マンゴー)という伝統スイーツで、少し脇役の扱いであった。高野フルーツパーラーならば、フルーツパフェに対し、フルーツあんみつという位置づけだと思う。
私はどうもマンゴーと餅米の組み合わせに対して不信感がぬぐえず、マンゴーにホイップクリームを添えた、リスクの少なそうなモノを注文する。店員のインバウンド対応は手慣れたもので、番号と値段を使った数字の筆談でテキパキと注文が行われた。
そして、いよいよマンゴーごはんなるものの登場である。出てきたものは、どっさりもられたマンゴーをメインに、蒸した餅米がちょこんと添えられたものである。それに甘いココナッツミルクをかけるのである。
見た目はとてもオシャレである。相棒が美味い美味いというので、一口もらったのだが・・・
『これは!美味しい!』
マンゴーは完熟で甘くてトロトロ。日本ではまずお目にかかれない甘さである。餅米もモチっぽく程よく潰され、トロミのある甘めのココナツミルクがかかっている。餅米独特の風味はココナッツによって中和され、マンゴーの味との掛け渡しとなり食感のハーモニーが絶妙であった。
よくよく考えてみれば、果物と餅米と甘いソースの組み合わせは、いちご大福と同じである。
・マンゴー→イチゴ
・餅米→餅
・ココナッツミルク→アンコ
と例えれば納得が行く・・・ような気がする。
イチゴ大福だって言い方を変えればイチゴごはんではないか!
マンゴーごはんなどいわず、マンゴー大福のような感じと言ってもらえれば、興味を持っただろうに。誤訳に完全にミスリードされていた。
マンゴーごはんを頼まなかった私はちょっぴり後悔した。そして、この旅行中にマンゴーご飯食べる!と
『マンゴーごはん・ザ・リベンジ』
への静かな闘志を燃やし始めたのである。
そしてそのリベンジの日がとうとうやってきた。浜辺でのんびり過ごしている時に甘いモノでも食べたくなったのである。
海岸沿いの売店でマンゴーごはんを見かけたので買ってみたのだが・・。
それは別モノだった。カレーライスのごとく、大量の餅米の上にマンゴーが乗っているものである。
マンゴー・タンゴーが
マンゴー80%:餅米20%なのに対し、
売店のものは
マンゴー50%:餅米50%
しかも、もち米はそのままで米粒感があって、ごはんそのままである。
マンゴーと餅米を一緒に別々に食べてる感じが満載。これぞまさしく、初めにイメージしていた『ザ・マンゴーごはん』そのものであった。
あの良い素材を絶妙なバランスで組み合わせた専門店のクオリティーには及ばない。どうもはじめに最も完成度の高い、一番美味しいものを食べ逃してしまったようで、ちょっと惜しかったかなと思った。
やっぱカジャさんの旅モノは面白いなぁ
こんにちは!
感じたことが上手く伝わるように、わかりやすく書くことを、すごく意識します。
和書のみならず洋書まで読み漁るmaam先生のチェックも厳しく、描き直しや没も多いので、楽しんでもらえると嬉しいです。
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