今のオミクロンは、それほど辛くもなかったが、咳が残り、だるくて力も出ない。クライミングにも山にもしばらく行けなかった。
ヒマだ。。。
そんな中、私の中でブームになったのが、UL研究である。
装備は年々進化しているので、買い替えのタイミングでより軽量なものを選んでいるが、ちょうど買い替の時期の装備があり、色々気になってきた所だったのだ。
ネットでUL装備を調べたり、アイデアやエッセンスとして面白いものはないかYoutubeを見たり、日本のULの第一人者の土屋さんの本を読んでいた。
特に興味深かったのは、土屋さんの本の中で紹介されていたULの始祖とよばれるエマ、ゲイトウッドさんの話である。
アメリカ東部のアパラチアン山脈沿いに3500kmに渡るAT(アパラチアン・トレイル)を歩き通した67歳のスーパーおばあちゃんなのだが、DVの夫、子供が11人、孫が22人と、大変な人生だったが故に、晩年になってロングトレイルに自由を求めたのだ。
その時の装備は
・Kedsのスニーカー
・レインケープ(雨具、グラウンドシートとして)・シャワーカーテン(テントとして)
・軍用毛布・セーター
・簡易クッカー、安全ピン、針と糸、石けん等
・手製の袋(肩に担いで、バックパックの替わりに)
というシンプルなもので、9kg程度だったそうだ。
西海岸の乾燥した土地を縦断するPCT(パシフィック・クレスト・トレイル)と違い、樹林帯を通るため雨も多い。
全てを野外泊で過ごしたわけではなく、農家に一晩の宿を求めたりするバックパッキング的な旅だったようだが、その自由さや潔さに目がゆく。
自然回帰の社会風潮を背景に発展したアメリカのULは、自然にダメージを与えないよう、ブーツよりシューズ、炊事と食事と宿泊は別の場所で行い、環境へのダメージを軽減し、融和する考えらしい。
対して日本の標準的とされる登山装備は、もともとヨーロッパから輸入されたヘビーデュティーなスタイルで、『何かあった時のために、頑丈な道具を持ちなさい。安全装備を持ちなさい』と耐久性・安全性に対する志向が強いものだ。登山靴などはその最たるもので、武装して敵陣に切り込むような考え方だ。
たしかに、
『過剰に持たされてるかな?』
という感じがする。
今の日本のULはそんなヘビーデュティー志向に対する反動にも感じられるが、若いナレッジに溢れて豊かで興味がそそられる。
まずは軽量化に大きく貢献するザック、テント、シュラフ、ストーブから考えてみることにした。
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ザックは去年にパッキングを見直し、冬用は40+10ℓ、夏用は28ℓのクライミングザックに荷物が収まっているので、既にそこそこ軽量だ。
キューベンファイバー製のフロアレスシェルターは非常に試してみたいが、相棒が嫌がったのでNG。
シュラフは標準的なものを使っているが、シュラフカバーを持ってないのでULより軽量だった。ULだと天幕を薄くする代わりに厚手のシュラフやシュラフカバーで保温する傾向にあるようだが、例えば冬季にダブルウォールに2人で寝ると外気温より10度近く暖かく、結露もしないので、ヘビーにする必要がないのだ。
アルコールストーブはソロ向きのようで、2人で使うには火力が弱すぎる。特に冬は煮沸に時間をかけすぎると、逆に冷えてくので燃費も悪く、今使っている寒冷対策されたガスバーナーが無難な感じだ。
『意外に軽量化の余地はないゾ・・・。』
ただ、エマおばあちゃんの潔さを突きつけられると、何か余計なものを持ってると思うので、ULのお作法的に自分の装備を全てエクセルにリストアップし、重量を測ってみることにした。
改めて一つ一つを吟味すると、いろいろ省けるポイントが発見される。
・ザックの背面パッドははずした。フレームだけで十分
・道具をメンテナンス、事前チェックしておけば、マルチツールは要らない
・グランドシートはULの定番である軽量なタイベックシートや厚手エマージェンシーシートに
・薄手のレインウェアは蓄熱しないので、ウィンドシェル代わりに
・フードがバラクラバになるフリースを使っているので、バラクラバやネックゲイター、ニット帽、全部はいらない
・激しいラッセルをしなければゲイターは不要。パンツの簡易ゲイターで十分
・ゴーグルは、風速20mでも背中や大きめのフードで風を受け流せれば使わない。念の為持っていくが、一度しか使ったことがない。場所や条件によって装備から外す。
・裏返すとフェルト生地の枕になるスタッフサックを導入。スタッフサックを枕にすると寝てる間にどっか飛んでいくので、エア枕を使っていたので、リベンジである
・装備は小分けしすぎなければ、スタッフサックを減らせる
・ビーコンはポケットに入れればストラップは要らない
・アイスの時はスクリューはルートに合わせて必要な分を吟味
・18650電池に直接USBケーブルを差して給電できる50gのモバイルバッテリーを導入
・直火できるキャンプ場なら薪を現地調達し、焚き火料理もいいかも
結果、食料や水、ガスを抜いたベースウェイトはフル装備で
・夏山テント泊 3.5kg
・雪山テント泊 9kg
・アイステント泊13kg
となった。
自分はテントは持たず、食料とクッカー担当だが、一泊分の食料と水とガスを加えてプラス2kg強。
古くなった小物を2、3点買い替えた程度で、特別な軽量装備を揃えている訳でもない。ツェルトや、でかめのライトやランタンも持つし、食事やお菓子はすこぶる贅沢だが、十分ウルトラライトである。
軽量化への影響が大きいなと思うのが、レイヤリングとシュラフとマット、テントの組み合わせである。
メリノウールは汗冷えがないので1,2泊なら着替えが要らないし、さらに近年の化繊インサレーションと極圧のエアマットの組み合わせによって行動中と就寝中の保温が上手くバランスすれば、コンパクトに軽くできる。
少ない装備で・兼用し…
装備は分担し…
パッキングは効率的に…
ザックは小さく軽くなり…
というロジックで軽量化につながったようだ。
冬はザックやアイゼン、ピッケルを買い換えれば、あと1〜2kgくらい減らせる余地もあるが、質素であることや自然と融和することが崇高だとか思わないし、お金がかかりそうなので、この辺でやめた。
荷物が少なく整理され、なんかスッキリ。
軽快に歩けるのはもちろん、テントの中で細かい荷物が出てこないし、束縛感が薄れ、気持ちがフリーになる感じは非常にいい。
だがしかし、せっかく減らした荷物が増える事態が発生してしまった。
小さくなった私のザックを見た相棒が
『じゃあ私の荷物持って』と、
言ってきたのである。
((((;゚Д゚)))))))
軽量化をすると、努力した側が荷物を押し付けているように見えてしまうのは落とし穴であった。
相棒のザックの中身も全部チェックしようと思う今日この頃である。
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