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私が中学生になりたての頃、祖父に連れられて行った「インド古代美術展」が初めての入館でした。
インドの古代遺跡からやって来た豊満で写実的な女神像に、当時の私はドキドキして目のやり場に困ったことを覚えています。

中学生の私が女の子と二人で初めてデートしたのもトーハクの特別展でした。
地元の駅で待ち合わせて電車で上野まで行き、美術の教科書にある国宝などを見た後、構内で写真を撮っただけで帰ってきました。
まだ初心(うぶ)な私には、二人で喫茶店へ寄ったり、レストランで食事をするスキルはありませんでした。

この時のお相手にはその後あっさりと振られ、私が一人で山へ向かうきっかけになりました。

その後もトーハクへは時おり出かけていて、薄暗い展示室は私にとって癒しの空間でした。社会人になると忙しさに紛れて足が遠のいていましたが、近年になってまた家内と通うようになり、一時は友の会の会員になって特別展にもまめに通っていました。
しかし、このところのコロナ禍でまたご無沙汰しています。
秋に本館前の大きなユリノ木の下で耳を澄ませると、色づいた葉の間からパチパチと微かな音がして実(種)が落ちてきます。

中学生の時に見た国宝に齢を経て再会すると、自身の観賞に厚みが増したことを感じるとともに、柔らかな感性を持った昔の自分がいとおしく脳裏に浮かびます。

【写真 1964年の特別展チケット】
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