この小説が不思議な温かさを感じさせるのはすべて、主人公である紫郎、その回りの大人たちのありようのためだ。
険しく聳え立つ大自然に立ち向かう、小さなしかし勇気ある人間たちを描いた作家は、この作品で、子供が大人になるために必要な時間と特別な経験を、主人公を見守るようにして書いたのに違いない。
父親的な、大きく毅然とした優しさ。
「つぶやき岩の秘密」は少年小説であるとともに、少年をどう育てたらいいか悩む大人たちに、一つの回答をくれる小説でもある。(解説から)
舞台は三浦半島の海辺だ。
少年小説であり、またミステリー小説でもある。
一部登山家が出てくるし、太平洋戦争の敗戦にまつわる話も出てくる。
紫郎少年は、戦争と妄執の愚かしさを一瞬にして理解し、一人きりで目に見えない勲章だけを手に入れる。
その苦さと誇らしさが胸に迫るのである。(解説から)
一人で登山を続ける自分の心の葛藤や達成感という悦びという点で共感できた一冊であり、予想外に面白い小説であった。
少年が大人になる鮮烈な瞬間を描いた本作は、戦後児童文学史の中に確かな地位を与えられるべき名作である。(解説から)
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