山頂にたどりついて喫む一本のタバコは、格別にうまいものだ。大昔の専売公社の名キャッチフレーズ、「今日も元気だ、煙草がうまい」とは、すなわちこういうことなんだ、と思う。ところが、ここ数年、山で心穏やかに一服のタバコを楽しむことがなかなかしづらくなった。嫌煙ムードがすっかり世の中を覆ってしまったからである。
たとえば、山頂などでタバコを吸っていると、近くにいる他の登山者に露骨に嫌な顔をされることがよくある。ちらりとこちらを見て、「こんな空気のきれいなところにまで来て、毒の煙を吸うなんて」と言いたげな顔をされるのはまだいいほうで、露骨にパタパタと煙をはらう手振りをされることすらある。私も一応のところ常識人であるからして、他の登山者からある程度距離をとり、できれば風下に立って吸うように心がけてはいるのだが。
ああ、健康強迫神経症のアメリカ人たちが嫌煙権運動などを流行らせはじめる以前は、こんなことなかったよなあ。山男の多くが平気でタバコを吸っていた。山頂の岩なんかに腰かけて、紫煙をふーっと吐き出したり、山小屋のテラスでパイプをぷかぷかやったりする姿は、ごくごく日常的でなおかつ絵になる光景だった。
山を舞台にした小説、映画の類いでも、登場人物の喫煙シーンが当たり前のように出てくる。先日見た岡本喜八監督の山岳アクションコメディ「大学の山賊たち」でも、若かりし頃の山崎努扮する大学山岳部員がくわえタバコでキスリングザックを背負う様はたいへんカッコよかったし、1958年版の映画「氷壁」でも、穂高の岩壁の取り付きで、菅原謙二と川崎敬三はショートピースをくわえながら、登攀用具を点検するのである。
「うまい」、「絵になる」だけでなく、山での喫煙には実際的な効用だってあった。道に迷ったり、悪天に見舞われたりして、シビアな状況判断に迫られたとき、かつての山男たちは「ま、一服」と言って、タバコに火をつけたものだ。カッとなった気持ちをニコチンで鎮静し、切り替えて、よりベターな「次の一歩」をさぐったのである。私にしてもこれまで、山で判断に困ったとき、一服のクールダウンによく助けられた経験がある。
しかし、これだけ世間的に禁煙の圧力が広がり強くなってくると、「全山禁煙」の山なんかがでてくるのではないか。道標に禁煙マークがついていて、「この山での喫煙は、他の登山者の迷惑になりますから、ご遠慮ください」なんて書いてあってね。
いや、その前に、喫茶店や列車のように分煙化がなされるか。たとえば山頂の地面に2メートル四方ほどペンキで線が描かれていてね、「喫煙コーナー」という立て札がたっている。
たぶんそれはその山頂でもあまり眺めが良くなかったり、居心地が悪そうな場所でね、長居ができないようになっている。足場が不安定だったりして、なかには滑落する者もいるかもしれない。
そうして哀れな喫煙登山者が一人落ちると、それを見ていた非喫煙登山者たちは、顔を見合わせて、きっとこう言うんだろうなあ。
「ほーれごらん、やっぱりタバコは寿命を縮めるだろう?」
私も頂上でのタバコがうまいと吸っていたのですが
次男の誕生を機会にタバコを止めて22年になります。
タバコを吸っていた当時でも後の臭いは自分で
不快に感じていたし、確実な発癌性があるので
donburiさんには申し訳ありませんが禁煙化は
仕方ないと思います。
発癌性がはっきりしていて販売が止まらないのは
タバコだけですね。
私、結婚後(30前)に禁煙しまして、まあ、夜中に喉の調子が悪くなっていたのもあったのですが、禁煙してからメシが美味くて瞬く間に10キロ以上増量してしまいました。この時はタバコ吸ってたときよりも状態は悪かったと思います。何せ内臓脂肪をため込んで、山登りどころでもなかったですから、、、
増量状態はホンの3、4年前くらいまでキープしてたのですが、その後トレーニングで絞りました。トレーニングが山の再開に繋がったわけですが、体を絞ってからは心肺系にタバコを止めたメリットが現われています。もう、登りが楽で楽しくて。今日のスキー場ゲレンデ直登でもそうでした。
でも、ダウン(=休憩、懐かしいことばでショ?)の時の至福の一服というのはタバコ吸いにはたまらんでしょうね。
今はタバコの煙は好きではないですが、以前吸っていた分、両方の気持ちがわかります。ハイ。
donburiさん、こんばんは。
私もかつて1日2箱程吸っていたヘビースモーカーで、世の中の禁煙化に困惑していましたので、donburiさんのお気持ちも良く判ります。
でも自ら禁煙してみて、喫煙がいかに迷惑行為であるかを知ることになりました。
喫煙時には考えたこともなかった程度のことでも、非喫煙者には気になります。
これは喫煙しない限り理解出来なかったと思います。
donburiさんには申し訳ありませんが、喫煙にはいかなる正当性も無いと思います。
shigeさん
いや申し訳ありません。駄々っ子みたいなことを書きまして。確かにタバコがカラダに良くないだろうことはわかっております。私とて「いつかやめねば」と思ってはおるのですが・・・。
bokemonさん
こないだは山行中プカプカやってすまんかったね。どう?でも、私はわりあいにマナー守った吸い方してたでしょ?そうでもなかったか・・・?(マイページの写真が変わりましたな。すっかり雪山仕様になったね)
MATSUさん
すみません。確かに吸わない人にとってはあのタバコの臭いは迷惑でしょうね。喫煙者でも、新幹線の喫煙車両はキツイですから。なにしろ私は天の邪鬼な男で、つい人の気に障ることを言ったり書いたりしたくなり、あちこちで顰蹙を買っております。なので、友達もいたって少ないです。この日記もやっぱりそうなりましたね。反省してます。たぶんですけれども、私も近い将来孫ができそうな感じなので、そうなったらいよいよ禁煙かな・・・と思っております。
doubriさん、マナーOKです。
山での至福の一服、至福の一杯、至福の風景、至福の花。
人それぞれ、が好きです。青空に紫煙をくゆらせればいいのではないでしょうか。同行者が気持ち良さそうなのが一番です。
ダウン(休憩)、ここで一服吸い点けベエ。区切りですね。
そして、火器を余熱し、点火するのに愛用のオイルライターなんぞを使う、風の強い日なんぞはこれが良い!私、煙草吸いを止めて火器への火つけがずいぶんへたくそになりました。
止めるも続けるも自分の気持ち次第、だと思います。
そう言っていただいてありがとうです。
山での火器使用って、いいですね。
私はアルコールストーブが好きで、いっとき深くはまりこんで、「ああ、アル中になった、アル中になった」(アルコールストーブ中毒、略して「アル中」)と喜んでおりました。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する