我が家は正月になると、元日早々から親戚の人たちや義理の兄が押し掛けて来ていた。
そして酒を飲んでは御託を並べて酔っぱらい、私に説教したり絡んでくる。
とにかくみんな口が達者で酒癖が悪く、私はそんな呑んだくれたちを相手にしなければならない正月が来ると憂鬱だった。
父親も酒癖が良い方ではなかった。
兵隊上がりの父親は典型的な男尊女卑の考え方の持ち主。
自分ではインスタントラーメンさえ作れないクセに、やれ酒の肴がまずいだの豆腐が硬いだの柔らかいだのと異常なほどうるさく、文句ばかり母親に言う。
義理の兄に至ってはろくに仕事もせず、酔っては大きな事ばかり話す。
そして呑んだくれて午前0時を過ぎても帰ろうとせず、本当にどうしようもない男だった。
母親は元日から休む間もなく、そんな呑んだくれの為に酒や料理の準備に追われ、可哀想でならなかった。
私は働くようになってからは正月に家にいるのが嫌で、年末年始はずっと山に行っていた。
冬山は奥秩父の縦走から始めた。
次にアイゼンや防寒具の機能確認で八ヶ岳の天狗岳に登った。
これなら大丈夫だと確信を得て、硫黄岳から赤岳の縦走、更に赤岳から権現岳の縦走もした。
南アルプスは最初に北沢峠から甲斐駒ヶ岳と仙丈岳をピストンした。
その翌年の正月には北沢峠から早川尾根を縦走した。
その時、高嶺の頂上から雪化粧して聳える北岳を見た。
その姿はあまりにも美しく、次の年末には絶対に北岳に登ろうと決めた。
そしてその年の大晦日、吊尾根からテン泊を経て北岳の頂上に立った。
その日は微風快晴の天候に恵まれ、頂上では見える限りの山が見えていたと言っても過言ではないほどの、素晴らしい大展望が待っていた。
帰宅すると父親から「正月ぐらいは家にいろよ」と文句を言われた。
カチンと来た私は「酔っぱらいの相手なんかする気ねぇよ!」と思わず声を荒げて言い返した。
その翌年の元日には塩見岳に登り、頂上から金色に輝く太平洋を見た。
深田久弥著「日本百名山」には(塩見岳の頂上からは海は見えない)という文章がある。
それは誤りである事を知っている人は意外と多いようだが、私も実際に自分の目で確認したのだった。
その年に父親は入浴中に心不全を起こして他界した。
それ以来、正月になると必ず押し掛けて来ては呑んだくれていた親戚や義理の兄はパッタリと来なくなった。
私は酒を飲まない。
我が家に来ても酒が出ないのはみんな分かっていたので、そんな家には用はないのだろう。
それが酒呑みの醜い本性なのだと思った。
父親が他界してからは、自分は年末年始になっても冬山らしい冬山には登っていない。行ってもせいぜい日帰り程度。
高齢の母親を年末年始に1人ぼっちにするのは心配だし、可哀想な気もする。厳しい冬山はもういいかなとも思った。
山も正月も静かなのが一番良い。今度の正月も静かに過ごせるだろう。
でも今になって思うと、たまには父親相手に少しだけでも酒を付き合って上げれば良かったかなと、ちょっぴり後悔もしているが。
皆さんも飲み過ぎて人様に迷惑をかけたりしないように、くれぐれもご注意のほどを。
良いお年をお迎え下さい。
画像は早川尾根・高嶺から撮影した北岳(平成3年1月3日に撮影)
私も先程、高齢の母親が一人寂しく正月を過ごすのを避けるために、新潟の実家に着いたところです。
途中見えた谷川岳が白く輝いていて、登りたかったなぁと思いました。
東京の自宅には私の子供達が集まって妻と過ごしているはずです。
何か複雑な気持の正月です。コロナでここ数年は来ていませんでしたが、今年は一人で来ました。
正月に北アルプスの燕岳に行くことを恒例にしている人たちの話を聞くと、羨ましいなと思って聞いていました。
vt250zさんと私の正月、何か同じですね。
ご実家は新潟でしたか。新潟にはいい山が多いですよね。
関東と違って日本海側の山々はすっかり雪化粧したと思います。
年末年始に母を一人だけにさせるのは心配なのも理由の一つなんですが…
自分自身の体力やモチベーションも低下して、もう若い頃のように何がなんでも登りたいという気持ちは薄れて来た為もあります。
母には自分が若い頃にさんざん心配をかけました。
炬燵でのんびりしてもらって、私は家事に精を出しています。
それが私に出来るせめてもの親孝行ですかね(^_^;)
元旦は帰省して親父と深酒する側ですので😅まわりの気持ちに気遣うよう注意いたします。
よいお正月を!
一緒に飲んだくれるのも親孝行だと思います。お父様、きっと喜んでくれますよ😉
デグヲさんも良いお年をお迎え下さい!
私は、酒飲みなので、お父様の付き合い方も理解できます。酒呑の閑話も楽しいもの。
正解は無いので難しいですね。
ともあれ、良いお年をお迎えください。
父親が他界した途端に誰一人として我が家に来なくなり、私は親戚とはこんなものなのかと愕然としました。
母は「その家の主人が亡くなるとこんなものだよ」とは言ってましたが。
ひろぽん様のお母様、早く退院されると良いですね。
ひろぽん様も良いお年をお迎え下さい!
明けましておめでとう御座います。
家庭の事情で色々ありますよね。
我が家も、父母とも分家筋なので、今はほぼ親戚付き合いはありません。
ともあれ、今年もお互い安全に山行を楽しみましょう。
お互いに安全で楽しい山行を楽しみましょう!
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