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４回目は最終回、現在地が分からない時はどうする？です。
以前に次のような質問をされた事があります。
「スマホのGPSが使えず霧で視界が得られない時は、どうやって現在地を特定したらよいか？」
このケースはやっかいです。
正直な話ですが特定は困難な場合が多く「大体この場所だろう」ぐらいしか分からないケースが大半です。
質問された方は北アルプスによく登られるようなので、北アルプスの地形図を見てみましょう。
左の画像は５万分の１地形図の西鎌尾根です。
この稜線は高度計があっても、どこを歩いているのかさっぱり分かりません。
一般コースなので現在地が分からなくても心配ないのですが、それでも現在地が知りたくなる時はあります。
この場合で頼りになるのは�，虜庫鶻戮任后�
私が西鎌尾根を歩いたのはもう30年ほど前なので、左俣岳の頂上に標識や三角点があったかどうかは覚えていません。
それらがあれば現在地が分かるのですが。
地形図を見ると縦走路は左俣岳から高度差約80�探濤濂爾靴討い襪里�分かります。これがまずヒントになります。
北アルプスの縦走路で高度差80�辰竜濤濂爾六�間にして約10〜15分間ぐらいでしょうか。
今まで霧の中の縦走路を歩いて来たが、10分以上もかかるような急降下はまだなかった。という事はまだ左俣岳の手前にいる。
そういえば先ほど10分以上の急降下があった。という事は左俣岳はすでに通過した。
という具合に判断する事も出来ます。
そして左俣岳の先では西鎌尾根の方向をコンパスで測り、自分がどのあたりを歩いているのか予想出来ます。画像をよく見ると、赤丸の位置で西鎌尾根は屈曲していますよね。
このようにGPSがない場合、地形図から出来るだけ地形の特徴を読み取って現在地の推理をする必要があります。
苦肉の策ですが、霧の中では他に方法がありません。私はこの方法を使い、濃霧の北アルプスの縦走路で現在地が分かった事が何度かあります。
他に霧の中でも現在地が特定出来る場所としては、稜線上の鞍部が上げられます。
しかしこれは５万図であれば最低でも高度差約20�丹幣紂■暇�5千図では10�丹幣紊旅眦拑垢�なければ地形図に表現されません。
鞍部というよりはかなり大きなギャップでなければ、霧の中の北アルプスの稜線では地形図を見ても分からないでしょう。
風雨の中で頂上を巻いて通り過ぎてしまい、いまだにリベンジを果たせない山もあります。
中央の画像は野口五郎岳頂上付近の拡大図です。
この裏銀座コースは43年前に歩きましたが、連日天候が悪くて終始風雨の中でした。
現地で分かったのですが、縦走路は野口五郎岳の頂上直下の西側を巻いています。
この時はそうとは知らず、霧で頂上が見えなかった為に気が付かず、そのまま巻いて通り過ぎてしまいました。
縦走路はその先の真砂岳も巻いています。
この時は
「あれっ？野口五郎岳の頂上の標識がないけど、まだ先かな？」
と疑問に思いながら先へ進んだのですが、現在地がやっと特定出来たのは縦走路が真砂岳を巻いた先で稜線に出た場所でした。
すでに後の祭りで精神的にがっかり。風雨の中を引き返す気力もありません。
「頂上に登っても、どうせ霧で何も見えないだろう」と諦めて先へ進んだのですが、今思えば登っておけば良かったと後悔しています。
低山のバリルートはほとんど尾根上にルートが付けられています。
しかし北アルプス等の高山の縦走路はこのように稜線上のピークを巻いて付けられている事も多く、GPSがないと霧の中では現在地の特定は難しくなります。
さて、右の画像は奥多摩・酉谷山付近の拡大図です。
私が酉谷山から小黒を経て熊倉山へと初めて歩いたのは40年ほど前です。
小黒付近は遭難多発地帯で魔界と呼ばれています。
でも40年前にはそんな話は全然聞きませんでした。
なぜだろう？
10年前、大血川から小黒を経て酉谷山へ登りました。
すると小黒も酉谷山もあまりの変わりようにビックリしました。
40年前は鬱蒼とした笹が山腹全体を覆っていたのですが、100年に一度とも言われる笹枯れ減少で笹はすっかり姿を消し、まるで別の山のように変わっていたのです。
私はこれが道迷い遭難の一因ではないかと思いました。
以前は笹の中に一条の踏み跡がありました。
笹の中はとても歩けないので、その踏み跡を進めば良かったのです。
ところがその笹はすっかり姿を消し、どこでも歩けるような斜面が広がって踏み跡もあちこちに見られ、どの方向に進めば良いのか分からないような状態でした。
このために小黒から北へ降りて川浦谷へ迷い込んでしまう人が多かったのではないかと思います。
今では小黒北尾根の入口にロープが張られています。
ただ、40年前も小黒から熊倉山へ続く尾根を下るルートは分かりにくかったですね。
画像の赤丸印から西へ下るのですが、そこは尾根の体をなさない単なる斜面です。
40年前は目印と標識を頼りに下降し、無事に熊倉山へ続く尾根に乗れました。
もし小黒から下降している途中で明らかにルートを間違えたと思った時、皆さんならどのように対処しますか？
私だったらまずはとにかく小黒に登り返します。
小黒の頂上に出れば、それで少なくとも現在地は分かります。
そしてもう一度だけ熊倉山へ続く斜面を下降し、それでも分からなければ自分の読図力でこの尾根を下降するのは無理だと判断。潔く日原へ戻ります。
しかし言うは易し、行うは難し。
この引き返すという行為は大変勇気を必要とします。
・もう登り返すだけの体力はない。
・このまま下ればいずれ人里に出る筈だ。
・今から引き返したら日が暮れてしまう。
・こんな寒い時期にはとてもビバークなど無理だ。とにかくこのまま下ろう・・・
行方不明になられた方は、引き返した方が良いとは百も承知していながらも、このような心の葛藤があったのかも知れません。
最後になりましたが、いかがでしたでしょうか。
私はどんなに経験を積んでも読図講習会の講師にはなれません。
私は地形図に磁北線を書いた事もなければクロスベアリングの方法も知らず、シルバーコンパスも使った事すらないのです。
YouTubeでヤマレコ社長がクロスベアリングの方法を解説しています。
私も見たのですが、何だか難しくて途中で眠くなり見るのをやめました😅
私はいつも胸ポケットに拡大コピーした２万５千図を入れ、そして直径５cmほどの小さなコンパスをズボンのポケットに入れて必要に応じて使っています。
今まで述べた方法は歩きながら覚えた完全な自己流です。
私の読図方法なんて読図講習会の講師から見たら、お話にならぬと一笑に付されるでしょう。
なので「このような方法もあるよ」程度に覚えておいてもらえれば幸いです。
初めにも述べましたが、読図は登山の大きな楽しみの一つです。
等高線は実に様々な情報を教えてくれます。
この先どのような地形があるのか。緩斜面なのか急斜面なのか、超えるピークがいつくあるのか、あとどれくらい頑張れば目的地に着くのか。
等高線はこれらの情報を教えてくれるのです。この情報を利用しない手はありません。
紙地図でもGPSでも、どちらでも構いません。一般コースの尾根上の道を歩いている時に、左右に分岐する支尾根、そして足元に見える沢が地形図にどのように表現されているか確認してみましょう。
そのような習慣を身に付け、常に地形図を片手に山を歩くようにすれば、自然と読図は出来るようになります。
それでは皆さん、お互いに道迷いする事なくご安全に。
ありがとうございました！(^^)
