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しかし、玄翁は報酬に見合った分だけ働いて立ち去るという主義で傭兵ではあるが、殺し屋ではないようだ。過去には深傷を負うほど斬りつけられたが死にはしなかったなど、テムジン様はいくら何でもこんな運が良い出来事などあるか?と不思議に思う程だった。
この巻では玄翁の秘密や過去が明らかになっていくと同時に衝撃的な話や繋がりが多い。自分は第一巻から読んでるが、中国やモンゴルの歴史に特に詳しいわけでもない。それでも結構衝撃的だった。
まず玄翁はテムジン様の実父だった。この時点で衝撃的だった。
これまではテムジン様の父親はイェスゲイでモンゴル族を統一しかけてたが、宿敵のタタル族に暗殺されたという設定だった。しかし、玄翁との戦が終わって母親ホエルンに事情を話して質問すると、イェスゲイに嫁ぐ前にメルキト族に攫われたところを玄翁が率いる50騎に助けられて玄翁との肉体的接触で出来た子供がテムジンだったことが判明した。ただ玄翁はイェスゲイに嫁ぐところと知るとイェスゲイとの間でしっかり育てるよう要請して去ったそうだ。
玄翁は病気だったのか寿命の問題か、死に際を自覚してたからこそテムジン様と一騎打ちをして真相を話すことを望まれたのだろう。だから再びタイチウト氏の傭兵になったのだろう。一騎打ちになり、最終的にはテムジン様が浅く斬るが玄翁は立ったまま亡くなられた。テムジン様に立ちはだかった壁のような存在だったけど、玄翁が亡くなられたシーンは悲しくなった。
玄翁は遺言書も残してて、生き残った弟子はテムジン様の仲間になり、継承されてきた吹毛刀をテムジン様に継がせるよう遺していた。これも運命というか巡り合せというか、天から選ばれし者が授けられた運なのだろう。
玄翁と繋がってた商人から吹毛剣を受け取り、由来を知るために遥か西側の沙州まで旅をしたテムジン様。沙州は交易地点として栄え、そこの支配人が吹毛剣の由来を知ってたと同時に玄翁の過去に関する話も明らかになった。ここも中国の歴史に詳しいわけではないが、金王朝の建国に関与した人の孫が玄翁だったことに驚いた。玄翁は養子に出されてたが、その事実が判明して吹毛剣が玄翁に渡されたそうだ。
一方でメルキト族とケレイト王国がまた揉めるなど大草原を舞台にした戦が落ち着いたわけでもなかった。お互いに臨戦態勢をとり、やがて戦になるが、メルキト族の族長トクトアと仲が悪いジャンダラン氏の族長ジャムカが過去の失敗を繰り返さず、トクトアが森にやって来るところを狙って襲撃をかけてトクトアに深傷を負わせた。ジャムカもモンゴル族統一の夢を秘めていてその際にはテムジン様には良き友として自分の側に居てほしいと思い描いているが、テムジン様に勝るとも劣らぬだろう程の軍を持つジャムカがどんな道を歩むかも楽しみだ。
ここ長い間目ぼしい勝利が無く負けが続くタタル族も軍を動かし、後ろ盾だったはずの金国が大軍を動かすなど、揉め事があったのか、これまで以上に不穏過ぎる空気も漂ってきた。
これまでも大草原ではモンゴル族は内輪で揉めててテムジン様のキャト氏とジャムカのジャンダラン氏は同盟関係だが、タイチウト氏と仲が悪い。一方でモンゴル族はタタル族と長年の宿敵だが、タタル族は滅びていくだろうと予想できる。ましてや金国を相手に勝てるわけがないと思う。ジャムカはメルキト族の族長トクトアと仲が悪く、トクトアはケレイト王国のトオリル・カンと仲が悪い、ケレイト王国はナイマン王国と揉めるなど、これまで以上に複雑な利害関係が絡んだ大戦になっていくのだろうと予想できる。
みんな自分より戦闘が強い族長や部隊を何人も見てきたのだろうし、勝ちも負けも経験しながら生きてきたのだろう。だからからか、どの族長もみんな逞しくカッコよく感じる。
そうなったとして、それを生き抜き勝ち残るのがテムジン様なのだろうと思えてきたが、それでも次の話も楽しみで引き続き読み進めることにした。
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