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現代社会のようにスマホも無い、インターネットも無い、GPSも無い、やっと紙の地図を交易に携わるごく限られた人が見ることがあるかどうかの世界を強く逞しく生きる人たち。
そんな中、前巻からモンゴル族の宿敵タタル族がかつての後ろ盾だった金国と戦闘する流れになった。
テムジン様は育ての父親イェスゲイを殺害したタタル族討伐に燃えるものがあったのだろう、13歳の時に金国へ逃れて大草原では得られないだろう数多くの経験や学び更には人脈を得たこともあってか、実父は金国で生まれ育ってコンギラト族の領土で傭兵部隊となった玄翁だったこともあってか、金国と連合する道を選んだ。
一方でメルキト族のように金国との交易は盛んでも地理的に自国の軍を消耗させる程の出来事ではないと判断して戦闘に参加しない民族も居れば、モンゴル族でもジャンダラン氏のジャムカのように中国の王朝もタタル族と組むことと同様にモンゴル族として有り得ないと考える者も居るなど、大草原には金国との連合を受け入れない民族が多かった。金国と組むということは大草原で孤立するという危惧もあったようだ。
実際に大草原の勢力で金国との連合を選んだのはテムジン様が率いるキャト氏とトオリル・カンが率いるケレイト王国だけだった。
ここ最近は負けや敗走ばかりだったタタル族だが、金国が後ろ盾だったからか負けても困ることはなかったのだろう。それでも何かしら揉めたのだろう。タタル族が軍を最大限に招集し、金国も4万人を動員するなど大草原の勢力では有り得ないレベルの規模での戦になった。個人的な予想通りに金国が勝ったけど、タタル族が予想以上にしぶとく戦い、ケレイト王国の合流が遅れたら全然分からない展開だったことに驚いた。
この結果、ケレイト王国を率いるトオリル・カンは金国から大草原の盟主と認められ意気揚々と母国へ帰還した。テムジン様は金国の北側の境界線付近まで進出や活動を許され、引き続きタタル族の残党を討伐して俘虜も取った。
それと同時に大草原全体で見ても色々動きがあり、中でもメルキト族の族長トクトアが族長を部下に譲って森での隠居生活を送るようになったことも驚きだった。
以前からトクトアは歳をとったことを自覚していた。ジャムカが13歳の時にメルキト族の人を殺害したことで、当時ジャンダラン氏の族長だったジャムカの父にジャムカを土牢に60日間閉じ込めさせたもののジャムカが生き延びた。ジャムカが族長になってからも何度も戦で追い詰めたものの、ジャムカに運が味方したりツキがあったりして殺害できず、逆に自分が急襲されて深傷を負わされたことを思い返す描写もあった。トクトアは族長を譲る際には「道を選びたくても選べないこともあるし、そこを歩いていかないといけないこともある」と語り、前巻までもまず仲間や民の生活のことを考えるなど族長らしい描写が多く、モンゴル族の敵だが個人的には登場人物の中では好きな方だった。
ケレイト王国はトオリル・カンは金国から大草原の盟主と認められたものの、それ以外は目立った変化がなくトオリル・カンが裸の王様になりつつあると思った。
そんな中で、テムジン様が率いる軍とジャムカが率いる軍が遭遇してそのまま衝突した。事の発端はジャンダラン氏の人が南へ馬を買いに行った際に金国に攫われたことでジャムカが武力で奪い返したことだった。テムジン様はジャムカの行動は筋が通ってると認めていたが、突然過ぎる衝突だった。このチンギス紀のシリーズを読んでて1番の衝撃だった。個人的には裏でケレイト王国を率いるトオリル・カンが何かしらの陰謀を企んだのだろう、何かしら両者の戦いが起こるよう仕組んだのだろうと思えて仕方がない。
大草原に金国の影響力が入ってきたことも感じるし、もはや金国と組む親金派と金国を受け入れない反金派にはっきり分かれて戦う情勢になりそうな感じだった。メルキト族の族長が変わったことも大きな影響を与えそうだし、モンゴル族はテムジン様が率いるキャト氏と元から仲が悪いタイチウト氏、理由はどうであれ衝突したジャムカが率いるジャンダラン氏と内輪の対立がもはや歯止め効かずな状態、戦の情勢や利害関係、金国や他の地域との交易も含めて誰がどう解決して統一へ向かうのか、どうやってテムジン様がチンギス・ハンとなるのか、これまで以上に次巻が楽しみになる読み応えだった。
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