もしあなたが山好きで、図書館に足しげく通うほどの本好きなら、
図書館の棚でこの本をみかけた時にきっと手に取っただろう。
そしてもしあなたが、エベレストやらアイガーやら、あるいは北アルプスなどの上級者向け登山にしか興味がないのなら、きっとそのまま棚に戻しただろう。
この本は、山を愛するウェールズ人の素朴で可笑しいお話です。
物語の舞台は、ウェールズにある約300メートルの山フュノン・ガルウ。
ある日ふもとの村に、山の高さを測量する人間がやってきます。
測量の結果、
「フュノン・ガルウは、イギリスで山と認定される基準の高さには
6メートルほど足りない。 したがって山ではない。 丘である。」
と結論づけられてしまいます。
それを聞いた村人たちに動揺が走ります。
丘ということになれば、地図からフュノン・ガルウの名前が消されてしまう羽目になります。
おりしも時代は第一次世界大戦中。
愛する家族を戦争で奪われている最中に、山まで奪われてしまうのか・・・
動揺が広がる中、立ち上がる男がいました。
「フュノン・ガルウが山じゃねえってんなら、俺たちの手で山にしてやろうじゃねえか。」
そうして村人たちはフュノン・ガルウの頂上に土を6メートル分積み上げはじめるのです。
それも、ふもとの村から土を運び、頂上に土を盛り上げるという次第です。
私がこの本を好きな理由は、300メートルでも地元の山に対する愛情に加え、
その村人の純朴さというものが感じられるからです。それが味があって面白い。
山頂に土を積み上げる間、測量士を村に引き止めておくために様々な
妨害工作がなされるのですが、
嘘一つつくのにさえドギマギしてしまう村人たちがなんだかユーモラス。
アホのトーマスと呼ばれる人の名前のエピソードも最高です。
また、この本の特徴としては、実話であるかのように書かれている点です。
私も最初は実話かと思っていたのですが、どうも違うようです。
モデルとなった山はウェールズにありますが、100年ほど前に盛り土をして高度をあげた、という事実はなく、すべては作者のクリストファー・マンガーの巧みなストーリーテリングでした。
しかし彼はウェールズ出身であり、山を慕うウェールズ人の心を小説に反映していると思います。
ウェールズ人の誇りをかけた壮大(?)な山物語を、お楽しみいただけるものと思います。
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%BA%E3%81%AE%E5%B1%B1-%E6%89%B6%E6%A1%91%E7%A4%BE%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88-%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC-%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%BC/dp/4594019269
はじめまして。
この本は読んだことがありませんが
10年以上前に映画を見ました。
原題は
"The Englishman Who Went Up a Hill
But Came Down a Mountain" (1995)
直訳すると
「”丘”を登り“山”を下った男」…でしょうか。
若かりしヒュー・グラントが主演です。
”山”の基準に合うようにするため
奮闘する村人たちがユーモラスでした。
本も読んでみようと思います。
こんにちは、Pq77さん。コメント有難うございます。
はい、映画もあります。原題もなかなかひねりが効いていますよね。
映画も面白いけど、本はより面白いと思うので、
ぜひ機会があればご一読ください
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