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「幼年期の終わり」アーサー・クラーク(ハヤカワ文庫:福島正実訳)
原題:Childhood’s End 1953年発表
核戦争の危機に瀕した人類の頭上に突然巨大な宇宙船が現れる。宇宙船は沈黙しただ世界の大都市の頭上を埋め尽くすだけ。人類の科学を超越した巨大な存在の前に、人類は成長と進歩と闘争への意欲を失っていく。彼ら、オーバーロードは、何かを待っている。何かが地球に生まれるのを…
壮大な、そして圧倒的な力を持った作品。人間はどこからきて、どこに向かうのか。途中でやめるわけにはいかないでしょう、まず間違いなく。結末は少し悲しいが、やっぱりSFオールタイム・ベスト1。別格の印象。
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「夏への扉」ロバート・A・ハインライン(ハヤカワ文庫:福島正実訳)
原題:The Door into Summer 1956年発表
愛すべき牡猫ピートと、古き良きロマンスと、タイムトラベルのお話。これも寝床の中まで持ち込むこと必至。結末にもらい泣きするには歳をとりすぎたけど。猫好きなら、きっともっと好きになるだろうし、猫嫌いでもカットして読んで、まあ大丈夫。ドタバタでミステリーで、ちょっと古い感じの未来予測とガジェット群。レトロですが、きっとずっと読み継がれるハートウオーミングストーリーですね。
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「アンドロイドは電気羊の夢をみるか」フィリップ・K・ディック(ハヤカワ文庫:朝倉久志訳)
原題:Do Androids Dream of Electric Sheep? 1968年発表
ディックの代表作とは言えないが、秀逸なタイトルはインパクト抜群。勿論リドリー・スコットの「ブレードランナー」の原作としてもっと有名。
核戦争後、次々と火星に移住する人々と残された人々。火星で人間に奉仕していたアンドロイドが脱走し地球に逃げ帰る。それを見つけて処分するバウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)との戦いの話。死の灰のため地球上には生物はほぼいない。人間が地球で飼えるのは電気式ペット。でもいつかは電気羊ではなく本物の羊を飼いたいと願う刑事が主人公である。
映画では「電気羊」も新興宗教の「マーサー教」も確かでてこなかったような。この二つ本筋じゃないけど興味深い。ヒトとアンドロイドの境界線を巡り、ユング風の「集合的無意識」「共感力」がもう一つのテーマのようだが、それはそれとして、ヒトが自分も模造記憶を埋め込まれたアンドロイドなのではという恐怖はなかなかのもの。瓦礫の近未来都市で、簡単に死んでいく(壊される)アンドロイドが悲しく切ない。ちなみに、electronicじゃなくてelectricなんです。
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*アンドロイド→幼年期→夏への扉の順で読んだ。最後の「夏への扉」を読んでいる時、NHKの映像の世紀「グレート・ファミリー」が始まってしばし中断。上記作品がいずれも20世紀半ばのものなので、ちょっとシンクロしてしまう。内2冊は学生時代に既読で強い印象は残っていたのだが、詳細はほぼ忘却の彼方だった。わが青春もかくの如し、なんでしょうね。
*古典が三つ続いたので、バリバリの新作2014のベストSF第一位「火星の人」アンディ・ウィアーを読書開始。手持ちのSFは以上なんです。 ファンの方、お勧めがあれば教えてくださいね。
はじめまして、cheezeさん。
古典なら、J.P.ホーガン「星を継ぐもの」、「火星の人」が気に入れば、A.C.クラーク「渇きの海」がおすすめです。
新しい物なら、野尻抱介「ふわふわの泉」がお気に入りです。
yukicchi7さん、コメントありがとうございます。
「星を継ぐもの」了解しました。次の候補として闇の左手と一緒に考えていた作品です。「火星の人」は夕方購入したばかりで今まだ50pですが、いやいやこっちも凄い作品ですね。お勧めの「乾きの海」クラーク作品なら間違いないですね。「ふわふわ泉」こちらも購入(借り出し)リストに入れておきます。
ご推薦ありがとうございます。
yukicchi7さんは、なかなかのSFファンなのですね。私の拙い文章恥ずかしく思いますが、今後ともご教示いただければ幸いです。
こんばんは cheezeさん
「夏の扉」手元にあります。その扉には次のように。
・・・・・・・・・・・(次は4行目で)
世のすべての猫好きに
この本を捧げる
数年前に読んでいささか内容不鮮明ですが、面白かった記憶。暇なとき再読してみます。
SFではなくて、ミステリーの方で、遅まきながらコリン・デクスターに遭遇。「ウッドストック行最終バス」を読了。これから「悔恨の日」に取りかかります。間に、これも遅ればせの発見で、小泉喜美子氏の「弁護側の証人」読みました。傑作でした。年取ってからはSFやミステリーから少し離れていましたが、たまには良いものですね(^.^)
カイエ様、こんばんは。
すべての猫好きに捧げる…ピートは勇者でしたね。私は猫も犬も大好きですが、事情があって今はどちらも飼っておりません
誰でも「バックトゥザフューチャー」を思い出す作品、きっとスピルバーグも愛読したのでしょう。
ミステリー、そっちの分野に迷い込むと時間がいくらあっても足りなくなりそう。読書は休日くらいしかできないので、延々と本の行列ができそうな予感
ご推薦の3冊は近いうちにきっと。
コメント誠にありがとうございました。
こんばんは
私もSF好きで・・・
マイクル・クライトン、ジュラシック・パークシリーズとか
古いところでは、エドモンド・ハミルトン、キャプテン・フューチャーシリーズ、単純明快
最近は積読が多いんですが
araingengaさんもでしたか、意外でした
読みだしたら止まりませんね。私はSFもミステリーも有名どころをちょこちょこっと読んだくらいですが、思い切りフィクションなところが爽快ですね。
ジュラシックパークはシリーズなんですね、エドモンド・ハミルトン、なるほど。そういう趣味でしたか
残り人生短いので、あたりだと嬉しい
あらすじを言ってはいけない読書感想文は難しいのによく書けますね。SFは憧れているんだけどほとんど読んでおりません。アンドロイドの作者の「高い塔の男」を昨年読みました。日独戦に敗戦したアメリカの話でした。
チェコ旅行に行く前に駆け込みでカレル・チャペックの山椒魚戦争を読んでいきました。読んで行ってよかったです。チェコっぽく可愛くて面白いですよ。
yoneyamaさん、フィクションはあまり読まないのかなあと思っていたら、しっかり読んでますね。ディックは高い塔の男が多分代表作なのかな。山椒魚戦争、これも名作でしたね。
読書日記、フィクションの場合、気をつけているつもりですが、ときどき失敗してるかも
cheezeさん、私もSFが好きな時期があり、
「アンドロイド~」と「夏への扉」は読みました。
最近仕事が忙しくて活字離れがはなはだしいです
wakaさんからお借りした「神々の山嶺」上下巻、
もう一年位お借りしてるかも
sakusaku様、平地も雪は積もりましたでしょうか。タイヤ交換は終わったかな。
夏への扉は結構女性の方も読まれていますね。逆にアンドロイド読んだ人は少ない気がする
初めまして。
SF御三家といえばクラーク、ハインライン、そしてもう一人はディックではなくてアイザック・アシモフですね〜。
ロボットSFの『われはロボット』、SFミステリの『鋼鉄都市』、SF叙事詩の銀河帝国興亡史シリーズ、どれも定番です。一冊のものが良ければ前の2冊のどちらかをどうぞ。
20世紀中頃のSF黄金時代の作品でもうひとつ上げるなら、ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』。アメリカ、カナダ、フランスでそれぞれ計3回映画化され、日本では2度連ドラに、3度舞台演劇になってます。
山下智久主演のドラマは今年の春だったのでご存知かも。旧作はユースケ・サンタマリアでした。
最後の一行を読んだときは心臓を鷲づかみにされたような感じで、しばらく身動きできませんでしたっけ。
21世紀の作品なら、一転して日本人作家の伊藤計劃。長編『虐殺器官』『ハーモニー』のうち前者は『SFが読みたい!』でゼロ年代(2000〜2009年)第1位に選ばれ、後者は『SFが読みたい!』2009年第1位と星雲賞と日本SF大賞のトリプルクラウンの後、英訳版がフィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞してます。
彼の早世は日本SF界の痛恨事でした。
もっとも新しい有望株は、今年トリプルクラウンを達成した藤井太洋の『オービタル・クラウド』ですかね。
翻訳に戻って、今年一番の話題作はケン・リュウの『紙の動物園』です。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞受賞の3冠は史上初です。
ヤマレコ会員なら忘れてはいけないのが谷甲州。
『白き嶺の男』や『単独行者 新・加藤文太郎伝』の著者としてご存知の方も多いと思いますが、山岳小説作家であると同時にSF作家でもあります。というか、SF作品の方が多いです。
新田次郎文学賞と星雲賞の両方を受賞したことのある作家は他にいないんじゃないかと思います。
『火星の人』がもしお気に召しましたら、谷甲州のSFもきっと楽しく読めます。
20世紀に書かれた作品はほとんどが電子書籍でしか入手できなくなってしまいましたが、ハードSFであると同時に冒険小説である最初の長編『惑星CB−8越冬隊』はまだ文庫で買えるはず。
もちろん現役で執筆されていて、今年はファン待望の(22年も待った!長かった〜!)『航空宇宙軍史』の続編を出してますが、単発ものなら2013年に『星を創る者たち』が『SFが読みたい!』3位にランクインしています。
それから、マイクル・クライトンの『ジュラシック・パーク』は、続編『ロスト・ワールド』が書かれているだけで、映画の3作目と4作目は映画オリジナルストーリーです。
クライトンは常に新しいテーマに挑戦し続けた作家で、続編を書かない人でした。『ロスト・ワールド』は唯一の例外です。
初めましてなのにこんなに長く書いてすみません。好きなものでアツくなり過ぎました。
ご寛恕下さい。
ソル122
アイリス、軌道から消失。残り400ソル余りで、マークのジャガイモは尽きる。
ルイス船長のことも気がかり。
ここまで急いで読んできたけど、もう急がない。ゆっくりと残りのソルを楽しもう。残念なことが一つ、私は化学式が苦手だ…まあなんとかしよう。
Artemis-MV様 今こんな感じです
私でも谷甲州を楽しめるでしょうかね。
それはさておき、詳細なSF界の航海図、ありがとうございます。そうですね、アシモフは絶対外せないですよね。「アルジャーノン」は読んでいましたが、日本でドラマになっていたんですか
ご推薦の本を手始めに、少し読んでみたいと思います。「アツく」語っていただき、誠に光栄です。 そのうち本物のSFファンになれたら、 Artemis-MVさんとアツく語り合いたいものですね
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