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「わたしを離さないで」ハヤカワ文庫
恐らくはイシグロの最高傑作。物語は小さい頃の寄宿舎の思い出から始まる。幼い友情と仲たがい、少しずつの成長。どこにでもあるような優しい思い出なのだが、何かどこかが違う。懐かしいエピソードの端々に名状しがたい不気味なものが少しずつ顔をだしてくる。やがて読者は自分が異様な世界の中に連れ込まれていることを知る。恐ろしい小説であった。とてつもないテーマなのだが、勿論ここでそれに触れることはできないのが残念。
終局へと向かうエピソードと解き明かされる思い出の一つ一つがあまりに切ない。
*すでに映画化されており、明日からテレビドラマになるとか。
「わたしたちが孤児だったころ」ハヤカワ文庫
主人公クリストファー・バンクスが上海の租界で過ごした幸福な少年時代、そして父母の失踪のあと故国イギリスに戻り探偵となって名声を上げていく前半。後半はいよいよ彼が父母を探しに、日中戦争の戦火に燃える上海を再訪することに。
日本軍の砲撃で破壊された上海の街をさまようバンクスの姿はまるでカフカの世界そのもの。ついに彼は巨悪と対峙し、両親の失踪の真実を知ることになる。
甘く切なく曖昧な記憶が少しずつ裏切られ、やがて現実が圧倒的な姿を現してくる、いつものイシグロの展開。
ところで、ちょっと古いけど、カズオ・イシグロのインタビューがネットで拾えた。村上春樹にも言及しており、なかなか面白い。と思ったらこれも本になっているみたいで、自分はかなり遅れたイシグロファンということがわかった次第。
http://www.kaz-ohno.com/special/kazuoishiguro.html
「ミシマの警告」講談社α新書
哲学者適菜収さんの評論。三島由紀夫の政治評論を読み解いて、真の保守とは何かを語る。三島の論理は今読むと極めて明快である。であるが当時はとてもそのように読めなかったのも確か。「B層」という言葉の意味を初めて知った。
「リベラル保守宣言」新潮文庫
中島岳志さんは若手の論客。こちらも新保守の立場で、現政権や大阪維新などを斬りまくっている。飽きさせず読ませるし、「保守」の定義についてなるほどとうなずく。
二人とも40代で、若い。保守とは、「主義」とか「改革」「理想」「計画」などに対して懐疑的だ、という主張は多分共通するかな。危うく拙速なものがあまりにも多い今の日本社会(政治)、二人が攻撃するものもほぼ同じであった。
cheezeさま こんばんは
カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』は数年前に読んでとても感動しました。
もともとは映画で観て原作も読みたくなったのですがファンタジックホラーもしくは普遍的なSFとでもいえばよいのか不思議な読後感が残る作品でした。
読んだのは翻訳されたものですが他の英米小説に比べ文章自体に日本人に訴えるものがある気がします。
今年から読書を再開したので他の作品も色々読んでみたいです。
monkichikun様、コメントありがとうございます。
never let me goお読みでしたか。すごい小説でしたね。ぞくぞくしっぱなしでした。「日の名残り」からずっと、「孤児」も「離さないで」も、一人称の過去語りの体裁で話が進みますが、その思い出と記憶の網が少しずつ綻びだして、読者を記憶の迷宮に導いていく、これがイシグロの真骨頂ですね。
「日の名残り」の原文はどっしりした由緒正しい英語、日本生まれの彼がこういう英語を書けるというのもすごいことだなあと思いました。長いので他の作品は翻訳で読んでいます。いずれテーマが普遍的ですので、世界中で読まれるタイプの小説ですね。
monkichikun様の書評などもいつか拝見できればと存じます。
チーズさん
良い読書新年をお迎えのようですね。どれも読みたくなって困ります。
うちも積んであるので、ひとまず読書メーターyoneyamaに読みたい本登録しておきます。
yoneyamaさん、読書メーター拝見しましたよ。読みかけの本、読みたい本が100冊越えてる!新しい本がどんどん増えてきて困っちゃいますね
私も読書メーター仲間に入りたい気もするのですが、あちこち登録するとすぐにPW忘れたりしてしまいます、年のせいですね。古い本を登録しなおすのがちょっと億劫かも。でもyoneyamaさんのページなど時々訪問させてくださいね。
いまちょうど「ジャーナリストはなぜ『戦場』に行くのか」(集英社新書)を半分あたりまで来たところ。晩飯作りで中断して、食べてから読んで、10時にはドラマ「わたしを離さないで」を初回だけ見るつもりです(ドラマは苦手
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