<映画>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ミリオンダラー・ベイビー」クリント・イーストウッド
ロッキー女性版かと思ってたら、とんでもない。クリント・イーストウッドらしい硬派社会派の作品。しがないジムを経営するボクシングトレーナーのイーストウッドと仲間のモーガン・フリーマンのもとに若い女性ヒラリー・スワンクが入門し、サクセスストーリーが始まるのだが…中盤以降予想外の展開に。尊厳死を扱ったラストはあまりに悲しい。ヒラリー・スワンクがアカデミー主演女優賞、フリーマンが助演男優賞を、そしてイーストウッドが作品賞・監督賞をもらっている。スワンクの一挙手一投足に惹きつけられる。こういう演技ができる本物の女優さんが日本にもいるんだろうけど、日の目を見てほしいもの。スワンクの映画はもっと見たい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「レオン」リュック・ベッソン
殺し屋ジャン・レノも殺し屋志願の少女ナタリー・ポートマンもひたすら可愛い。「凶暴な純愛」どころか、今風にいえば「萌え系」のキャラクター設定。絵の一つ一つがいい。特にナタリー・ポートマンの静止した横顔、美少女は数あれどこれは本物。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ライフ・イズ・ビューティフル」ロベルト・ベリーニ
ナチスの時代。ユダヤ系イタリア人の父子が強制収容所に入れられる。その意味を理解できない幼子に父はこれはゲーム、上手くかくれんぼして1000点もらったら優勝、賞品はおもちゃの戦車だと言い聞かせる。徹底した子どもの視点で現実が描き直されており、リアリズムとは対極にある作品に思えるけど、子どもの目からして、それはきわめてリアルな冒険世界。戯画化された父親の姿が、成長した子どもの記憶に残り、やがてそれが子を守る父の愛情だと気づくという仕掛けなのだろうか。
イタリア的な饒舌とユーモアとひたむきさが、最初はうるさくやがて大きな哀しみに。比類なき作品の一つ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「サテリコン」フェデリコ・フェリーニ
フェリーニの作品の中でもかなり異色。若い時はこの「背徳」の映画を見ようとは思わなかったのだけど、やっぱり年のせいか、一応視ておきたくなった。凄まじいローマ時代の人間の退廃が、色彩と細部のディテールと不安な音とともに描かれるのだけど、ストーリーはあってないような。洞窟住居とか奴隷船とか、この監督ならではの禍々しい映像が強烈。
フェリーニは他にも幾つか見たいものがまだ残ってる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ>
映画が唐突に終わって「ん、これで終わりか〜」と思った。少年と少女がソファで眠っていて、薄い光が射しこんでいる。どこかで見た風景、どこにでもあって、でももう戻れないもどかしさと懐かしさ。
この映画はなんだったのかなと考えてみる。
子どもと大人では見えている世界の濃淡が全く異なっている。世界は大人の事情で回っているけど、子どもにとって、母の死も飼い犬との別れも年上の女性への憧れも性の目覚めも、等しく重要で等しく流れ過ぎていくもの。どこにでもありそうで、その実何をしているかわからない不思議な住民と魔法の工場のような一風変わったな職場、どうしてボクシングリングがそこに?
ふと思ったのだ、ああこれは子ども(イングマル)から見える世界の姿なんだなあと。
ここに描かれているのは「少年の世界」で、シンプルで不正確で一つ一つが鮮やかな記憶の残像。
ハルストレム監督の提示する少年時代、なかなか心温まる美しい作品であった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<本>
「ボーン・コレクター」ジェフリー・ディーバー(文春文庫)
頸椎損傷で四肢麻痺となった元刑事とスピード狂の若い女性巡査がNYのシリアルキラーに挑む。サイコスリラーというジャンルかな。「羊たちの沈黙」のレクター博士を思い出させるけどどっちが先に書かれたんだろう。ヒーローヒロインそして犯人と次々と視点が交差し、それが小説にスピード感を持たせており、上下巻だが一気に読ませる。登場人物のどれも個性が立っている。クライマックスはやや予想どおりかな。犯人は意外だったけど。シリーズ化されているので、もう一つ読んでみたい感じ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「影武者徳川家康」隆慶一郎
家康影武者説について、隆慶一郎はあとがきで、昔のある資料に触れており、関ヶ原以降の家康の変わりようは、多くの人にも指摘されているところみたい(解釈は様々だが)。事実はさておき、この本の魅力はもし家康が関ヶ原で死んでいて、それにとってかわった影武者が、もしこのような人物であったらという作者の壮大な想像力(と歴史解釈)に負うところ大。影武者由良二朗三郎の出自と思想、彼を支える仲間たち(島左近、風魔忍群など)には網野義彦の「無縁・公界・楽」が直接的に影響を与えているよう(影響強すぎの感あり)。
上中下三巻で結構長いが、中ダレせず一気に読ませる。間違いなく時代小説の傑作の一つで、徳川秀忠と柳生宗矩ファン以外は楽しめるはず。
関係ないけど、半村良の「妖星伝」をまた読みたくなった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「だしの神秘」伏木亨(朝日新書)
甘味、塩味、苦味、酸味、の4大味覚に加えて、日本人が発見したのが「うま味。」(英語表記はUMAMI)化学的には昆布などのグルタミン酸、鰹節などのイノシン酸が代表だけど、併せて使えば相乗効果もでてくる。伏木さんはうま味発見の歴史と、味覚とうま味の科学的根拠、古くからの日本人の食生活を概説し、日本独特の「だし」文化と健康食について、1970年代の日本の食事が一番健康的だったという。それは、
「…ご飯とだしの利いた吸い物や味噌汁、香の物を中心として、魚や野菜の豊かなこれまでの食事を維持しながら、どうしても運動量の少ない人は、ご飯の量を少しだけ控える。」(p226)
簡単ですよね…うーん、そうでもないか。
仕事柄、京都の老舗料理店との付き合いが深い伏木さん、いろんな名店の「だしの引き方」を紹介してくれる。そして「うま味を相乗効果で強力に利かせただしを引いたならば、塩は驚くほど少なくてもいいことが、料亭のだしの分析や…公開実験での一般の人たちの満足感から確認されています。」
そう、問題は「塩分」をどうするかでもあったのだ。
「本当にうまいだしのとり方」が2ページで詳説(温度計必要)。
吉本隆明の昔々のエッセイで、貧しくておかずが買えなくて、ご飯に味の素とかつお節をかけて食べていたエピソードがあって、肝心の話はすっかり忘れたけど、この部分だけが記憶に残っている。グルタミン酸ソーダ、恐るべし。味の素、一つ買ってみるか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「国境のない生き方」ヤマザキマリ(小学館新書)
漫画家のヤマザキマリさんのお母さんはバイオリニスト。子どもの育て方が自由奔放。14歳でヨーロッパ一人旅、17歳でイタリア留学にでたマリさんは、その後の人生も波瀾万丈の貧乏旅。一周遅れの青年の如く、舞台はイタリアで、行動し読書し議論し、考える。誠にアクティブで魅力的。イタリアで読む本は安部公房、三島由紀夫、ガルシア・マルケス、つげ義春。マリさん何年生まれだっけとつい裏表紙を見る。いい本。素敵な人生でしたね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「テルマエ・ロマエ」ヤマザキマリ
エッセイを読んだせいで、どんな絵を描く人か興味あり。コミックを今まで買ったことがない。古本コーナーで1冊100円5冊まとめ買いしたが、レジに出すのがちょっと恥ずかしかった。古代ローマの浴場建築士がタイムスリップして現代日本と行きかう話。アイディアはとっても面白いけど、何冊か読むとちょっとワンパターンかな。細部の絵が楽しいので、嫌いではない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そろそろ畑の土作りしなくちゃいけないけど、あまりに寒いです。皆さんはどうなさってるでしょう?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どれも面白そう!フェリーニ以外は90年代が多いかな。どれも見たか、名を知るものです。ミリオンは見ようと思ってDVDもあるのですがまだでした。
ヤマザキマリってテレビでお話ししているのを何度も見ましたが面白いですよね。マンガも読みたいのですが100円で買えるんだ!エロ本じゃあるまいし恥ずかしくないですよ。
ヤマザキマリさん、先週NHKで道後温泉訪問してましたね。
この本は軽い自伝風の読み物ですが、なかなか面白かったですよ。
新しいものでなければコミックも映画も100円で買ったり借りたりできますね、このデフレ、貧者の生きる智慧みたいなものになってます。エロ本といえば、昔の日活ロマンポルノの名作もちょっと借りたいのだけど、同じくらい敷居が高い
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する