ジャガイモは花がとてもきれいだ。ある旅の本を読んでいたら、フランスの家庭料理のビシソワーズのことが書いてあって、夏向きのこの冷たいジャガイモのスープを作ってみたくなった。炒めた長ネギとジャガイモをコンソメで煮て、ブレンダーでつぶして、濾して、生クリームと塩で味付けして、冷蔵庫で十分冷やしていただく。簡単で素朴でほの甘い。
ニンジンは土の中で長持ちする重宝な野菜。お盆にやってきた小さなお客様が、生でポリポリ食べてくれてびっくり。最近はスムージーで簡単にいただくことも。
ナスは、追肥をしたら次々に大きな実をつける。昆布出汁でじっくり煮て冷やしていただく。味噌炒めにも麻婆ナスにも、時々漬物にも。この夏は毎日食べている。
ミニトマト。サラダの他にレモンと塩コショウでマリネにして、バゲットに乗せてブルスケッタ風。そのままパスタに和えてもいい感じ。
野菜はおいしい。収穫は喜びである。もっとおいしい野菜を作りたいけど、まだまだ素人でノウハウはない。
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「サピエンス全史(上下)」ユヴァル・ノア・ハラリ(河出書房新社)
遅ればせながら、この高名な本を読む。一読、巻を措く能わず。見事な人類史の通史であった。経済学、社会学、考古学、生物学、遺伝子工学、物理学などの最新の研究成果をうまく援用しながら、統一した視点でサピエンスの歴史を俯瞰していく。同時に読者を飽きさせないギミックもあちこちに。とても上手い。
7万年前の認知革命とともに言葉と想像力を獲得したヒトが集団化し、世界各地へ移住し始める。ネアンデルタール人を絶滅させたのもこのころ。一万年前の農業革命とともに、植物栽培が始まり家畜が出現した。定住と人口増加。「社会」の創設という特異点である。さらに宗教、通貨といった複雑で抽象的な観念を発明し、ヒトは次第にグローバル化し科学革命を経て、地球の覇者となった。残酷で暴虐の覇者である。
筆者はこの通史を現代までで終わらせない。加速度がついた人類の進化がここで止まるはずがない。かつてコロンブスが大海に乗り出しアメリカを発見した情熱は、その新たな探求の場をどこに求めるのか。例えば人間の脳の中に。脳がシナプスと頭蓋骨の小宇宙を超えて、AIの中の無限の電気信号に拡がっていく。そこに最後の「革命」が起こる。筆者の描くAIの未来はなかなか怖い。
膨大なヒトの歴史を、エピソードを多用しながら生き生きと描き出す筆者の力量は卓越したもの。コルテスのアステカ帝国征服やオランダの東インド会社設立など、小さな歴史読み物がたくさん詰まっていて、どこを読んでも面白い。
ヘブライ大学の歴史学者とのこと。この方の大学での講義はさぞ刺激的だろう。
「人工知能と経済の未来」井上智洋(文春新書)
スマホのSiriとか将棋のAIとかは「特化型人工知能」と呼ばれ、一つの特化された課題をこなすだけものだが、人間のように様々な知的作業をこなすことができるものは「汎用型人工知能」と呼ばれている。もちろんいまだ存在せず。筆者はその出現を早ければ2030年頃と予想している。
その当否と時期はさておき、経済学者である筆者は「汎用型人工知能」の出現で、私たちの仕事はどうなるのか、経済はどうなるのか、来るべき社会の動態を描き出している。2045年「純粋機械化経済」の形となり、ロボットが生産の全てを扱う時代は人にとって大失業時代である。人は労働から解放される一方で、労働の対価の賃金という形でしか収入のない人は、もはや生きていくことができなくなる。そ
こでベーシック・インカム(BI)が現実味を帯びた選択肢となる、という話。
BIなきAIはディストピアをもたらします。しかしBIのあるAIは
ユートピアをもたらすでしょう。
このように単純なものなのか。そもそも汎用型AIは(いずれ生まれるにしても)そんなに早く出現するのだろうか。里帰りしていた娘の旦那に聞いてみたら「もっと早いかもしれません」とのこと。
「旅だから出逢えた言葉」伊集院静(小学館文庫)
主にヨーロッパの小さな旅の話を集めたもので、画家や作家やアスリートの心に残る言葉をめぐって、それが発せられた場面へとエピソードが収束していく。ミロやシャガールやゴッホやマティス。ジダンやフィーゴ、ディマジオ。ファド、カジノ、そしてゲルニカ。
ユーラシア大陸の端、ポルトガルのロカ岬にある「ここに地は終わり、海はじまる」という石碑、やっぱり自分も見てみたい。
「ブロッケンの悪魔」樋口明雄(ハルキ文庫)
山岳冒険小説。台風の北岳山荘が舞台なので、南アを歩いた方ならなお楽しめるだろう。山岳警備隊の特に女性たちがなかなか魅力的な一方、悪役陣の影がやや薄い感じ。スピード感があって、一気に読み通せる。が、ちょっとマンガ的。
「たとえ世界が終わっても」橋本治(集英社新書)
イギリスのEU離脱とか、トランプ大統領の誕生とか、日本の今の政治状況とか、「なんか終わってるなあ」と思うことが幾つもあって、その「終わってる感じ」をいつもの橋本口調でしっかり納得させられる。橋本治はバブル期のことを何度か話題にするが、それは実体経済が金融経済に席巻された時期であり、いよいよ経済が飽和に達した時期でもあった。名言多数。
・貿易なんて西洋人の陰謀に過ぎない
・廃墟同然の地球で、産業だけが発達する。
・「損得で物事を判断しないこと」を「正義」って呼んでいるんです。
橋本治はいつもどれも面白いのだが、わかりやすいとはとても言いかねる。独特な位置にいる人。直観の人、だと思う。
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休みが終わって急に暑くなった。エアコンのない職場で40年も働いてきたけど、それでも朝エイッヤと家をでるのがまず一仕事、という感じ。行ってしまえば何とかなるんですが。
私も、夏は野菜がたくさん近所から知人から回ってきて、ここ10日ほど、ごはんを炊いてません。野菜おかずのみだけど10種類ぐらいあるし、お腹にはご飯の入る隙間がないです。冷蔵庫は漬物、蒸し物で作り置きだらけです。
江戸期の農民は貧乏だから米が食えなかったのではなくて、貨幣として流通していた米だけをわざわざ食べなくても、他に野菜や雑穀や魚があった、と読みまして、なるほどなあ。日本人なのに米毎日食えなくてかわいそうなんて、思い込みだったかもしれないなあと思いました。
サピエンス全史、面白そうですね。
中1娘が夏休みの作文でA.I.について書いていました。2030年には26歳。B.I.についてはまだわからないかもしれません。
毎度の紹介楽しみにしています。
yoneyamaさん、コメントありがとうございます。
野菜はいろんな調理をしてせっせと食べていますが、さすがに主食にという発想はありませんでした 野菜料理は美しくバリエーションが豊富なので工夫のしがいがありますね。まだまだレパートリーが少ないですが、毎日楽しんでいます。
サピエンス全史は、なかなか楽しめる本でした。ご一読をお勧めします。歴史書になるんでしょうが、研究書という位置づけではありません。むしろ、メリハリのついた話ができて、歴史のディテールを楽しく語ってくれる大学の先生の講義のような雰囲気。次に次にと読み進めていけます。
AIの話は人類最後の科学革命となりますね。シンギュラリティは遅かれ早かれやってくるでしょう。その時、人類は決して平静ではいられないでしょうね。
カーツワイルは「Singularity is near」の中でGRN(遺伝子工学、ロボット工学、ナノテクノロジー)の三つの将来について述べています。ナノテクノロジーだけはなかなか進みませんね。
ベーシックインカムは、検討に値する「社会保障」制度だと思います。今のところ誰も望まないかもしれないけれど…
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