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久しぶりの読書日記。長年日本に暮らす米国人アレックス・カーさんが、日本の景観がいかに劣化しているかを、数百枚の写真とともにユーモラスに解説。文化遺産の前に立っている種々雑多な看板、無残な土木工事、無数の空中電線、醜悪なハコモノ建築物などなど、なんでこんなことに!?と、読者はあんぐり(多分)。「日本には美しい自然と四季がある」とか、もう空々しくて言えないね。里山を歩いていると思いあたることばかり。まるで自然破壊、文化破壊、景観破壊のために、大量の税金がつぎ込まれているような。お金使いたくてしょうがないなら、せめて逆に過去の公共事業を撤去するクリーンアップ事業に入れたらって、まあ無理だろうね。そして「使えない」杉の植林地…後世に残していくのは借金ばかりじゃないみたい。
文中で、カナダの送電線鉄塔がツリーにカモフラージュしているお話、そういう発想はなかったなあ。
そういえば筆者、21世紀の基幹産業は観光業になるという指摘。世の円安誘導からの工業の国内回帰という流れとは全く異次元の提言でびっくり。面白い。
(2014年9月22日初版)
「日本劣化論」ちくま新書
衆議院選挙を前に、気鋭の政治学者、白井聡とオールド新左翼の笠井潔の対談「日本劣化論」を読んでみる。白井聡さんはヤマレコの友人に勧められた「永続敗戦論」が初めてだったが、30代だけど、なかなかの論者。年もかなり違う二人の対談だが、目指す「敵」は同じで話もはずむ。選挙の時期でもあり対談の内容にここで触れるのははばかられるのだが、日本の近代史と戦後史の理解が、対米関係を中心に自分の頭の中で組み直される。戦後の一人一人の政治家の顔が思い浮かぶ。左翼嫌いは読まないほうが良い。
「日本劣化」に関して、一つ引用すると:
白井:こういう時代にああいう人が首相になってしまったということは偶然ではなくある意味必然ですよね。社会全体に反知性主義が蔓延しているのですから、見方によっては、日本国民を正しく代表しているとも言えるわけです。
いやあ、言ってくれますね〜
・本当に経済は上向いているのか。
・日本はアメリカにも嫌われつつある
・日本と中国は軍事衝突するのか
・日本の劣化を食い止める天皇
・なぜ左翼は衰退したのか
などなど、どの議論も刺激的で頭に突き刺さる。自分自身の中にも最近見え隠れする「ネトウヨ」的退化(劣化)を引き戻し活性化してくれた。そんな本。
(2014年7月14日初版)
白井さんの引用、同感です。「あのひと」をテレビで見るたびそう思っていました。
対米関係を軸に戦後史を見直すというのは、あのひとのおかげで、いまマイブームです。
景観の話では、少し前韓国のヤンパン村を訪れたとき、町並みはもちろん、遠く遠景の小高い山並みまで、送電線も林道も見当たらなかったのには驚きました。なんでも日本に似ていて、ちょっとイマイチな国だと思っていましたが、完全に見直しました。
甲府の甲斐善光寺の背景の山は、最近ソーラーパネルが流行っているようで、台無しです。
yoneyamaさん、おはようございます。
3.11が大きな転換点になったような気がします。畏怖すべきものがなくなったのですから。タガがはずれましたね。この老人たちの、無残な精神の堕落を見るのはなかなか辛いものがあります。小さな場所で地に足のついた活動をなさっている若い方々の足を引っ張ってほしくないと、せめてそれだけを願います。
本当に日本の景観や風土を取り戻すような事業が起こらないものでしょうか。バランスのとれた、大きなデザイナーがいてほしいですね。
コメントありがとうございました。
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