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昭和一ケタから20年代までに生まれた栃木在住の猟師十数名への聞き書きから構成された本書は、狩猟という行為を中心とした内容でありながら、里山に生きる人々の現代史としても興味深い内容である。まだすべてを読んだわけではなく、既読部分でも気になる点は多々あるのだが、今回はその中でも特にイノシシについて気になった点を箇条書きに抜き出してみたい。シカの姿は自分も山行中にわりとよく見かけるのだが、不思議とイノシシの姿を目にしたことはなく(イノシシなんて本当にいるのか?)とさえ思ってしまうくらいなのだが、猟師の皆さんの話によると本当にいるらしい(当たり前だ)。複数人の証言をまとめると、栃木のイノシシは次のような状況にあるようだ。
・栃木にはむかし(大正から昭和頃の話だと思われる)はイノシシはほとんどいなかった
・明治に流行した豚コレラでほとんど死んでしまったらしい
・例外は県東部で、茨城県境の八溝山地や那珂川流域には生息していた
・栃木の山でイノシシを見かけるようになったのは平成に入ってから
・とりわけこの十数年で頻繁に人里に出没するようになった
山歩きに行った先で電気柵のある田畑や口の開いた箱罠を目にすることは多いし、出没情報がニュースになることもあるので、知識としてはイノシシが増えているらしいということは分かっているつもりであったが、逆に昭和期にはほとんどいなかったという話はまったく知らなかった。知る機会がなかっただけと言ってしまえばそれまでだが、山ですれ違うハイカーの皆さんは知っているのだろうか。ハイカーとハンターは活動領域が隣接していながら、交流それ自体は少ない。山に入る目的が違えば、自ずと見えてくるものも違ってくるのだろう。ハイカーの知らない山の姿を、ハンターの皆さんはいろいろと知っているんだろうなぁ。
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