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一般的な旅の案内などには記載されておらず、もっぱら鉄道マニアやら廃墟マニアしか寄りつかないような場所だが、施設の詳細はネットで検索すればいくらでも出てくるのでここでは省く。この廃駅は急斜面の上にあるホームへ、昼間でも真っ暗な連絡通路の階段を登っていく形になっていた。通路の途中で二、三の角をまがり、外部に通じるドアの前まできたとき、そこを塞ぐようにうずくまる、何か小さな小動物の存在に気がついた。
最初はネコかと思ったが、近づいてみても鈍くさい動きでジタバタするだけで、ネコ特有のあの俊敏さは微塵も感じられなかった。暗くて正体はよくわからないが、ともかくドアの前からどいてくれたので、自分は旧湯檜曽駅のホームに出ることができた。
一通り見学を終え、通路を引き返していくと、角の先に先程の小動物がいるらしいことがわかった。別段、追い立てるようなつもりはなかったのだが、一本道の通路で途中に抜け穴などもないため、こちらが進むと自然に向こうが退くような形になった。そして外の光りが届く場所まで出たとき、そこにいたのは1匹の小さなタヌキだった。連絡通路の入り口の扉が開いていたため、塒(ねぐら)代わりに潜り込んでしまっていたらしい。
野生のタヌキを見かけたのはこれが2回目だったが、前回同様、今回のタヌキからも野生動物らしい緊張感は感じられなかった。いや、後ずさりするだけ今回の個体の方が警戒心があるというべきか。こんな調子でよく自然の中で生きていけるものだと思ったりもしたが、そんな気持ちを察したのか、タヌキは斜面の下へと姿を消していった。
通路の入り口で少々思案したあと、自分は入り口の扉を閉め、スライド式のカンヌキを掛けた状態にして宿へ戻ることにした。朝食前の散歩の最中に起こった不思議な出会いだった。
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