【薮山レコ】室谷川〜駒形山北峰 (熊が接近!)
- GPS
- --:--
- 距離
- 10.2km
- 登り
- 1,080m
- 下り
- 1,080m
コースタイム
- 山行
- 11:40
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 12:20
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2017年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
【熊との遭遇記】 それは気温の上昇した昼過ぎのこと、暑さと長時間の藪こぎで疲れた体を休めるのに良さそうな場所を探しながら踏み跡を歩いていた。ちょうど風通しの良い広葉樹の日陰を見つけて腰を下ろした。暑さでかなりバテ気味だったのでウチワで仰ぎながら靴も脱いで体温を下げた。食欲はあまりなく粉末を溶かしたスポーツドリンクを一口飲んだ時だった。 たった今、自分が辿ってきた踏み跡の奥の方からサッサッサッ...と大型の動物が近づく音が聞こえてきた。直感で熊だと思った。これはまずい。大きな唸り声をあげてこちらの存在をアピールした。近づく音は一旦は止まったが再び近づき始めた。マジでヤバイ!さらに威嚇のために唸り声をあげ続けた。こちらの存在に気付いて逃げてくれるのを期待して。しかし、とうとう薮の中から黒い熊の顔が現れた。距離は10mほど。もう靴を履いている時間などない。さすがに怖くなり立ち上がり、いつでも逃げられる体制で威嚇の声を出し続けた。すると熊はさらに2〜3mほど近づいて立ち止まった。やっと気づいてくれたようだ。(熊は視力が弱い、また低い音に鈍感のようで唸り声よりも高い熊鈴の音や薮のカサカサ音が効果あるようだ) 体長は1.5mほどの大人の熊だ。あの雪堤上に糞を落とした主に違いない。ほんの1秒にも満たない時間見つめあったかと思う次の瞬間、熊は早足でこちらに向かってきた。内心、熊の方から逃げていくと勝手に思っていた。逃げ遅れたことに後悔している時間はない。熊との距離は既に5mに縮まっていた。逃げてもすぐに追いつかれる、ダメかもしれない!と思いつつ、とっさに後ろの薮の中に飛び込んだ。靴も履かず、ザックも置きっぱなしで。 次の瞬間、薮の中から振り向いてみると、そこには、もう熊の姿はなかった。周囲は元のように静まり返っていた。キツネにつままれた様な出来事だった。おそらく熊も相当人間を怖がっていて、身を守るため、ギリギリの状況で駆け引きをしたのかもしれない。逃げるためにわざと襲うフリをしたのかもしれない。人間が薮に飛び込んだ大きな音に驚いたのもあったかもしれない。結果的に大した被害はなく、薮に飛び込んだ際の足の軽い打撲程度だけ。ザックも靴も無事だった。 普段から静かな薮山を歩く際は騒々しいので熊鈴は付けてはいない。熊の雰囲気を感じた時に声を出しながら歩くようにしている。しかし状況によっては、熊は大きな音を出しても向かってくることがあり一筋縄にはいかない。駆け引きも大事だと思う。今回歩いた858mから1005m峰にかけての稜線は遅くまで残雪が残り広葉樹が広がるなだらかな地形で、餌が豊富な熊の巣窟のような場所だ。過去2回、この稜線を通っているが、GW頃と晩秋であったため熊との遭遇はなかった。止むを得ず、熊の巣窟を通過する場合は熊の活動していない時期に限る。 |
写真
感想
残雪期が終わり新緑の時期に、下田山塊最深部に近い会越の山、駒形山を目ざした。たどり着くのが困難な遠い薮山、裏の山へ続く尾根の偵察もかねて。
常浪川第一砂防ダムは昔はスリットがなく容易に渡れたらしいが今は深いスリットが入り渡るのが困難となっている。板を利用して自己責任で渡る。対岸のコンクリート斜面には古い鉄筋の梯子とロープが架かっており段丘に上がれるようになっている。段丘上には下流の杉林へ向かう踏み跡がうっすらと続いている。杉林から倉谷山の北鞍部へ突き上げる沢沿いを進む。沢は下部が険しいので出来るだけ右岸段丘を進んでから入渓。滝はそれなりに出てくるが困難なものはなく全て直登か巻きで進める。意外にも沢の中に何カ所にわたって太いワイヤーの残骸が残されていた。倉谷山方面へ入るのにこの沢が使われていたことは明らかなようだ。最後まで詰めると倉谷山の北側鞍部(700m)に出る。
駒形山へ続く北東稜線には比較的明瞭な踏み跡が存在しており意外とスムーズに歩くことが出来る。稜線上の小ピークである倉谷山周辺は濃い薮に覆われ潅木薮の隙間にひっそりと佇む三角点を確認する。倉谷山から先はだらだらとしたアップダウンを繰り返しながら徐々に標高を上げていく。800mを越えると右から雪渓の残る沢が近づく。所々薮が濃くなり踏み跡を辿るのが厳しくなるが左右に逃げながら進む。858m小ピークを過ぎると稜線左側に雪堤が途切れ途切れに現れ拾いながら進める。
倉谷山を過ぎてから踏み跡沿脇に熊の糞をよく見かけているので気になっていた。雪渓を歩いていると突然、鼻息荒くガサガサと音を立てて雪渓から稜線の向こうの薮へ逃げる熊と遭遇した。一瞬だったので姿ははっきり見えなかった。稜線は10058mへの登りになると左に大きくカーブし、薮が濃くなっていく。稜線を右に外れ薮と雪渓の残る急斜面をトラバースしながら登る。予想以上に雪渓が少なくショートカットの効果少なく1005m峰と駒形山北峰の間の鞍部に出る。
ここから駒形山北峰まで低潅木の密集した薮が続き不明瞭となり、もはや踏み跡を辿ることは不可能となる。駒形山との分岐を過ぎると傾斜は緩やかになるがさらに薮はきつくなる。駒形山北峰付近は周露岩と低潅木の混ざる小ピークとなっている。周囲に遮るものはなく360度の展望が広がる。川内山塊の盟主、矢筈岳から魚止山へ至る稜線、駒形山北峰から裏の山へ連なる稜線、そして浅草岳、中ノ又山から連なる会越国境稜線が望まれる。
無雪期の裏の山方面へのルート状況を偵察するため、駒形山北峰から西尾根を少し下ってみた。背丈を越えるような潅木の密集する尾根。潅木にはジャングルと化したシャクナゲやヤマグルマが混ざり地に足が着かない状況が続く。こぐことが出来ないタイプの薮は不安定ながらも枝の上を渡り歩くようにして進むしかない。下りでも時間と労力の割には全然進まない。途中であっさり諦めて駒形山北峰へ引き返す。小休憩後、下山開始とした。
下山は稜線を素直に進み1005m峰経由で降りた。1008m峰もなかなか見晴らしが良かった。駒形山北峰の北東山麓に広がる雪渓の緩斜面に点在する新緑のブナ林と駒形沢源頭部に広がるツルツルのスラブ斜面は特に印象的だった。山頂部は狭い広場になっており、地形図にはない三角点があった。1005m峰からやや急な薮の斜面を下っていくと薮の中に再び熊の糞が目立つようになる。稜線の方向が北東に変わると雪堤が現れ始め拾いながら進む。そして次の雪堤上で新しい熊の糞を目にする。気温の上昇で熊の活動がかなり活発になっているようだ。蒸し暑さで既にバテバテになっていたので858m小ピークの手前の樹林帯の日陰で小休憩した。そこで事件は起こった。⇒(コース状況の項目を参照)
倉谷山手前まで頻繁に数の熊の糞を見たが、もう熊に遭遇することはなかった。倉谷山を通過し目印の赤布を付けていた鞍部から沢の源頭部へ入り沢下りした。そして杉林の段丘に上がり常浪川沿いの踏み跡をたどり堰堤へ降りた。最後の難関、堤防のスリットを渡り無事に対岸の林道へ戻った。
コメント
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生々しい描写に、読んだこちらの心拍数も上昇しましたですよ。
対処のしかたに正解などないですよね。個体差もあるわけですし。
いずれにせよ、ご無事でなによりです。
倉谷山から南西に延びる緩やかな尾根に存在する踏み跡は完全に熊のテリトリーになっている感じでした。芽吹いたばかりの木の芽、山菜が豊富に存在しています。そこへ部外者が熊の持っている結界を破って入り込んだわけで、熊は「早くどけ!」と怒ったのかもしれません。気温高めの熊が活動しやすい時期は近づかない方が無難です。熊鈴をつけたり大声を出せば大丈夫とか後ろを向いて逃げるなとか言われますが、一筋縄に行かないと思いました。動物界における駆け引きも存在しているように思います。
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